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だけど、あれはどう見たってホルスタイン柄でしょ?「お茶漬けの味」

小津安二郎監督作品なんですけれど、いつもとちょっと違っているのは、原節子の不在、それから庶民的なホームドラマを得意とする小津がプチブル的な上昇志向を持つ妻を持った夫婦を描いたところでしょう。

気が強くて田舎育ちの夫を小バカにしている妻の役を演じるのは木暮実千代。
純朴で仕事一徹の夫を演じるのは佐分利信。
この方は北海道の岩見沢市出身らしいです。
うちの母親の実家が岩見沢市の隣町の栗沢町にあったので、岩見沢には子どもの頃によく行きました。
当時は出デパートなんかもあったりして、空知地方一番の都会でした。
ま、そんなわけで佐分利信には一方的にシンパシーを感じています。

妻は夫を完全に小バカにしているので、そこそこの高給取りらしい夫のお給料にも感謝せず、家のことはお手伝いさん任せで吞気に女学校時代のお友だちと遊んでばかりいるんです。
夫は気が弱いと言うか、口の重いタイプなのでそんな妻を咎めることもできないでいます。

そんな夫が海外出張に出ることになりました。
1952年の映画ですから、海外に行くと言うことは会社的に相当な重要ポジションであったことを想定させます。
「主人がいなくてせいせいするわ」くらいに思っていた妻の元に、深夜ひょっこり夫が帰ってくるんです。
なんでも悪天候だかで、飛行機が欠航したんだとか。
「腹が減ったな、なにか食べるものはないか?」夫に言われて妻は渋々台所に立ち、「お茶漬けくらいしかできませんけど」と言うと、夫が手伝ってくれて、ふたり向き合ってお茶漬けを食べつつ、夫婦とはお茶漬けの味みたいなものなんだって、ようやく気の強い妻がちょっと改心するハッピーエンドです。

いや、お話そのものは良くまとまっているんですよ。
だけど私が気になって仕方なかったのは、夫そっちのけで遊び歩く妻が、お友だちを引き連れて温泉旅行に出かけたときの宿の浴衣の柄です。

あれはどう見たってホルスタイン柄でしょう?
あんなの女優さんたちが良く着たな、って思うんです。
一説には戦前と戦後に小津がセルフカバーした「浮草」と言う映画があるんですけれど、戦後バージョンでひょうたん柄ののれんを若尾文子がくぐるシーンがあって、このホルスタイン柄も小津好みのひょうたん柄ではないかとの説もあります。

両方見較べたんですけれど、ひょうたんはひょうたん。
ホルスタインはホルスタインにしか見えない私は見る目がないんでしょうんね、きっと。

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