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鯨の夢

小さな小さなその島国には自然と伝統を守りながらの暮らしがあった。
とても良い環境なので、皆こぞってその国に遊びに来た。
ある日の夕方、海外から来た男が浜で休んでいると、周りが騒がしくなる。何があったかと見渡せば、海には見たこともないような巨大な鯨の背がいくつも見えていた。中でも一際大きな鯨は浜に顎を乗せ、のんびりと休んでいるかのようだった。
凄いものを見たと宿に帰った男だったが、夜になり島国の人から呼び出され、懇願される。
「貴方の国以外の国の人達が、鯨を殺そうとしている。なんとか止められないか。私達の人数ではどうにも止まらなかった。」
その浜には男の国以外にも「自国の民以外の全ての生き物は利用される為に存在してる」と考える大国と、「全ての人は教えを厳格に守り神の意思の元に生きていかねばならない」と考える宗教国家の人々が滞在していた。
島国の人々にとっては良き隣人であり、危害を加える事など到底認められない鯨達も、彼らからすれば巨大な肉であり、油であり、利益を産み、殺すのを禁じられていないただの獣であった。
男の国にも鯨を食べる習慣はあった。
しかし男は自国の人々を集め、今起こっている事を伝えると、迷いを押し開いて言った。
「島国の人達を助ける。協力して欲しい。」
自分たちの人数なら止められる。できるのならば、やるべきだ。ここは島国なのだから。


と言う夢を見ました。夢で見た鯨の姿がとても美しく、夢にしては珍しくストーリーが成立していたので、お話にしてみました。
宗教国家は夢の中では槍を持ってサイヤ人みたいな鎧を着た蛮族でした。そりゃあ止めにいくのも勇気が要ります。

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