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海賊版DL違法化だけではない、改正著作権法で知っておくと得するかもしれない話

2020年6月5日、改正著作権法が成立しましたが、メディア等ではいわゆる”海賊版ダウンロードの違法化”ばかり注目されており、まあ実際これが目玉ではありますが、実は「海賊版なんてダウンロードしないよ!」という健全な方々にも影響のある改正も含まれていることはご存知ですか?

海賊版DL違法化以外の改正点というのはいくつかありますが、ここでは特に関係のありそうな2つを簡単にご紹介します。

写り込み制限規定の適用範囲が広がった!\(^o^)/

例えば街なかで自撮りしていたときに、未来から来た猫型ロボット舞浜で出迎えてくれるネズミ系キャラクターのイラスト、そのほか街頭ビジョンの映像や求人サイトの宣伝トラックが流す音楽などが偶然に写り込んでしまうことがあると思います。

こういったキャラクターなどは著作物ですので、それを撮影(著作権法でいう「複製」)するためには著作権者の許諾が必要となるのが原則です。

しかし、ちょっと写り込んでしまっただけでもいちいち権利者から許諾をもらうというのも手間ですし、仮に許可が出なかったらその映像は使えない(使ったら著作権法違反)ことになってしまい、とても困りますよね。

そこで、平成25年から施行された著作権法に、偶然写り込んでしまった著作物は権利者の許諾不要で適法に使えますよ、という規定(30条の2)が追加され、上記のようなケースは権利者の許諾が不要となっています。

だがしかし。

この規定は

・写真撮影、録画、録音の場合
・本来の撮影物(上記例では自撮り画像)から取り除くことが困難
・著作物を創作する場合

上記すべてを満たす場合に限られていて、例えば未来から来た猫型ロボットのぬいぐるみを抱えながら動画生配信する場合には、この規定を適用できず、つまり権利者からの許諾がない限り違法である、ということになってしまいます。

そこで、今回の改正です。

著作権法30条の2が大きく変更され、

・写真撮影・録画・録音以外の複製(模写やCG化など)や伝達行為全般(生配信など)が対象になった!
・取り除くことが容易であっても、正当な範囲であれば取り除かなくてOK!
・スクリーンショットなど、著作物の創作ではなくてもOK!

これにより権利者の許諾が無くても猫型ロボットを抱きながら動画生配信することが合法となります。よかった!

(※この改正の施行日は今年2020年10月1日ですので、それ以前に上記生配信を行った場合は違法と判断されるおそれがありますのでご注意ください。)

利用権を対抗できることが明確になった!\(^o^)/

利用権を対抗?なにそれ??

・・・と思うかもしれません。

例えばフリーランスのウェブ制作者であるAさんが、クライアント(C社)のウェブサイト制作のために、写真家Bさんが撮影した写真数枚をBさんに利用料を支払って(許諾を得て)利用していたとします。

その後、写真家Bさんは、自身のすべての写真の著作権を、ストックフォト会社D社に売却しましたが、この事実をAさんもC社も知りません。

それからしばらくして、C社のもとにD社から警告状が届きました。「弊社の写真を無断使用している。損害賠償しろ。」、、、と。
びっくりしたC社さん、Aさんを問い詰めます。「どうなっているんだ!!??」

・・・はい、C社はもちろん、Aさんも困りますよね。

AさんもC社も、新しい権利者D社との間では利用許諾契約が存在しませんので、D社の主張にも一理あります。
でも、AさんもC社も到底納得できないと思います。

もちろん、協議や和解、判決によってD社の主張が否定される可能性も十分ありますが、その対応に費やす手間や費用は決して無視できません。

ということで、今回の改正です。

63条の2が新設され、Aさん(+C社)が著作権者(例では写真家Bさん)から許諾を得て(=利用する権利を得て)利用していた場合は、著作権がBさんからストックフォト会社D社に移った(譲渡された)としても、Aさんたちはその利用する権利をD社に対して主張することが可能となります。
これを「利用権を対抗できる」といいます。
これにより、引き続き合法的にBさんの写真を利用することができます。

なお、利用権を対抗するために、著作権登録など特別な手続きは不要です。

※譲渡や相続など、著作権の移転を第三者に対抗するためには著作権の登録が必要です。私の別ブログ記事(下記)もご参照ください。
https://copyright-topics.jp/topics/copyright_registration_by_inheritance/

10月1日から施行されます

以上、海賊版ダウンロード違法化以外の、今回の改正で知っておくと得する内容をご紹介しました。

頭の片隅に入れておけば、困ったときに活用できるかもしれませんね。

なお、海賊版ダウンロード違法化は来年2021年1月1日から施行されますが、この記事で取り上げた2つの改正は今年2020年10月1日から施行されます

今回の改正に限らず、弊所では著作権の相談やライセンス契約書の作成、著作権セミナーなど承っていますので、気になった方はぜひお問い合わせくださいませ。


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