何描いたら売れるかわからないからとりあえず「病んでいる絵」というテーマで描き始めた話

 最初に言おう。私には画才が無い。あったとしても、全くと言っていいほど伸びしろや伸ばす方法が無い。いつも描く絵は手癖だし、普段何枚も描いていたりとか、これが描きたいってなったりとか、こうしたら良くなるとか、全く考えてない。りんごの絵を梨にしてしまうくらい、AからBではなくDにしてしまうくらいの認識のズレが自分にはあって、どうしても世の中に出ている「絵」というものの正解があっても無くても「うまく描けない」と感じるのだ。

 ことの始まりは去年10月。父方から離れて一人暮らし、メンタルヘルスに通いながらパートを続けていたが、行きたくなくて下痢をするようになり、退職した頃だ。私はパートの人には「次の場所で頑張る」とは言ったものの、次など考えずただただ逃げていた。お腹は痛いし吐いたり夜中にハッと目覚めるし、睡眠導入剤は貰えたけれど、それも最初のうちだけで眠れないこともあった。私に出来るのは落書きをしながら生放送したり、ごろごろしながらゲームしたりして過ごすことだけだった。

 そんな時、母が言うのだ「この絵の女の子は可哀想だ」「何で手足が無いのか」「何故髪が青いのか」「バランスが悪い」と。
 母は近所に住んでおり、たまに来てはスーパーの惣菜を一緒に食べながら、Twitterのタイムラインに載る動物の写真を見せるような仲なのだが、少し気難しくて、たまに言い争うことがある。
 母は生きている鳥が苦手で鶏の唐揚げは好きという不思議な人なので、生きている鳩やカラスが大嫌いだ。だけど、その感性はカラスのようで、カラスよけの目玉の飾りみたいなものがとても苦手だ。なんというか派手でびっくりするものみたいなのが苦手だ。肌を赤や緑で塗ろうものなら「何故肌色ではないのか」と言ってくるような人だ。自分の中の正しさみたいなのがある。一応その娘なので、母の言動は許容範囲ということにしている。

でもムカつくものはムカつくので、その日はわざと普段描かない画風で絵を描こうと思った。

そして生まれたのがこの絵。

タイトルは「ピエロ」だけど何も考えてなかった。

母さんが怖がるように「いろんな色で不自然で不格好で正しさから外れた怪しい絵」にするために「赤を使ったら青を使う、ハイライトは白以外にする」「色選びはよそ見をして決める」などルールは決まっていたが、テーマ性みたいなものはほとんど無かった。

それがすごく描きやすかった。

 それからずっと1ヶ月毎日絵を描き始め、上手い下手ではなく「母親が心配して怖がってくれるような絵を描こう」と描き続けた。だけど、それでは怖がらせるという目的だけではモチーフがだんだん不足したりして、そこからどんどん迷走した。

迷走したけどある程度お絵かき放送でインパクトが残せたのと、こういうのって売れるのかな、引きこもっててもお金が入ってきたら良いな、面白いだろうなと思って、売り物という意識を全くしていないようなよくわからない絵をBOOTHでグッズにして展示するなどした。

この1年で売上はあったが、生活できるような額ではない。

だがファンはいる。

『病んでいる絵』を描き始めて1年。私は描くことですっきりしてしまい、ぐちゃぐちゃと何も考えずに描くことが出来なくなっていた。

落書き9の2

母も絵に慣れてしまって何も言わなくなってきた。
うるさいから始めたから目的としては達成している。
では次はどうする。趣味の絵とか描くか。

いや、こっちに逃げたのは、病んでいる絵を描き始めたのは自分の絵が無個性だからだ。戻っても二次創作描いてのんびりしてても何のお金も入ってこないし、引きこもりライフは常に氷の上だ。

落書き2の29

何らかの職業、商売、お金を安定的に得なければ。
そういう焦りがある。だが現在はハローワークにも行かずに引きこもるような状態だ。収入になるようなものはぼぼ無いと言っていい。

だから絵を描いてごまかしているけれど、それもいつまで続くかわからない。
画家になりたいわけでもない。

 「今まで描いてきた病んでいる絵のシリーズをファン向けに描いたらどうか」という考えに至ったけれど、それが出来れば苦労しない。っていうか怖い方向で絵を描こうと決めて以来出来たファンは1人くらいで、生放送のリスナーには「もっと可愛い(まとも)なものを描いたら?」って言われる。

いやー……まともなの描いても売れないんだよー。プロみたいなのじゃないとこういうの売れないよー。

じゃあ絵以外でって言うと正論を言われて逃げ場のなくなった自分がグッと息を呑む。そして明後日の方向を向く。

じゃあ、じゃあ、つぎは……次は……。

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