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#181_【読書】大学図書館司書が教える AI時代の調べ方の教科書/中崎倫子 (BOW BOOKS)

今年度に入ってから、軍事史跡に行くたびにレファレンス能力の必要性を痛感していましたが、目の前の雑事に追われてしまい、現地調査どころか読書すらままならない日々が続いておりました。

そんなある日、たまたま干場弓子さん(ディスカヴァー・トゥエンティワンの社長をされていた方)が、レファレンスをテーマにした本を刊行することを、SNSで書き込んでいたのが目に留まりました。

実は少し前に、別の方が書かれたレファレンスの本にチャレンジしたことがあったのですが、マニア気質の小ネタは面白いと思いつつも(我ながら、マニアの研究をしているだけのことはあるf^_^;))、いま読む本ではないなと感じるところがあり、途中で挫折しました。

干場さんと面識はありませんので、なぜ表示されていたのかナゾですがf^_^;)、再チャレンジの思し召しなのかと感じ、手に取ってみました。


手段と目的

この本を読んでいた頃、ちょうど安斎勇樹さんのvoicyで「ワークショップ中級者が陥るファシリテーションの落とし穴」という話が配信されました。

安斎さんは、モヤモヤする話題に対し解像度の高いメタファーを提起したり、視点や発想がユニークだったり、時には際どい問題提起されたりするので、安斎さんがファシリテーターをするワークショップは、どんだけ面白い場の回し方がされているのだろうかと気になっていましたが、ご本人曰く、まわりの方から「普通ですね」と言われるとのこと。

場にいたことがないので実際のところは分かりませんが、よく「そもそも論」に立ち返る方ですので、「普通」に見えるのは、ワークショップが目的ではなくその先を見据えてのことではないだろうか、ワークショップは目的を達成するための手段にすぎないのだから、そこに力をかけすぎて本質を見失わないようにということなのだろうか、という私なりの結論に着地しました。

前置きが長くなりましたが、この本では、レファレンスでも同様の落とし穴があることを「第1章 情報収集をする前に」で指摘されています。

司書さんからしますと、次から次へと舞い込む調べ物の依頼に時間をかけてはいけない、というのは当たり前の心得なのだろうと思いますが、日頃から大量の資料に接していないと(そんな人、滅多にいないかもしれませんが)、色々な資料を集めてくるだけで大仕事をした気になってしまうのだろうと思います。

少なくとも、私はまったくそのような感覚でしたので、読みながら恥ずかしくなってきましたが、アウトプットを意識しながら計画を立てる、このことに気付いただけでも、手に取った意味があったと感じます。

いい裏取り

いいレファレンスとは、いかに調べたい内容の書かれている資料を探し出せるか、くらいしか想像していませんでした。

しかし、本書の中では、帰納と演繹や因果関係と相関関係などといったロジック、統計や数字の読み方など、一見つながりのなさそうなことにも触れられています。

書かれている内容もごく基本的なことですので、なんでここまで紙幅を割くのだろうかと思いましたが、このような考え方が身についていないと、良い資料が見つかってもアウトプットに信憑性が伴わない、つまりはいい裏取りにはならない、ということなのだろうと思いました。

たまに他人の文章を読みながら、なんでこんな数字の読み方になるかねとか、「答えありき」で逆算して書いたのか引用資料と中身が噛み合っておらんよね、という文章にツッコミを入れたくなることがありますが、そうならないようにするところまでをレファレンスの仕事として捉えねばならないということに気付かされました。
私も物書きの端くれですので、このことは肝に銘じておくようにします。

全体を通して

本書に書かれている内容は、素人の私の目から見ても初歩の初歩だと思いますので、これ一冊読めば全て解決ということはないでしょう。
ただ、この本に書かれている内容が身についていない状態では、他の本を読んだところで、書かれている内容が使いこなせないどころか、頭に入ってくることすらない気がします。
本書を基礎に、複数の著者の本を参照しながら、自分に合った方法を探していくのが良いのだろうと感じました。

これで、挫折した本が読めるようになりますかねぇ…f^_^;)。

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