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おひとりさま主義の彼と青春がしたい。

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私達の高校生活をおおきく変えたその日は、ごくありふれた平日だった

1時間ほど電車に揺られ、友達と駅で待ち合わせて学校に向かう

?)にゃんおはよ〜!

和)にゃん言うな

そう言ってさっちゃんの額を軽く小突く



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?)2人とも朝から元気やなぁ…

欠伸をしながらこちらへと歩み寄ってきた

和)茉央は眠そうだね笑

茉)うん…めっちゃ…眠い

咲)いろはは?

茉)部活の朝練やってさ…

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和)うわっ…大変だね

咲)だね…絶対起きられないなぁ…私だったら

茉)そうやなぁ…

立ち話もほどほどに私たちは学校までの道を歩き始める

咲)それでさぁ…ケーキ屋さんなんだけど!

私はこういうなんの変哲もない会話が好き

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すごくキラキラとしたものに見えてなんだか嬉しい気持ちになる

そんなことを考えていると私たちの横を男の子が通り過ぎて行く

その男の子はクラスメイトの1人である小川○○くん

教室でいつも1人であり…なんというか暗くて近寄り難い

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1人で寂しくないのだろうか…

彼の腹の中なんて分からないし…と考えるのをやめた

咲)おーいにゃん?聞いてる?

和)えっ?何?ごめん…聞いてなかった

咲)もぅ…しっかりしてよ‪〜笑

茉)和最近ボッーとしてること多いよね…疲れとるん?

和)へっ?全然大丈夫だよ!

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茉)そう?ならいいんやけど

咲)なんかあったら絶対言ってね

和)そんな心配しないでよ笑

笑って話を流す
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

○)…(邪魔だなぁ…)

前を歩く女子3人組を眺める

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学生が通る道にしては狭く

横から通り過ぎるタイミングを見計らっていた

横を通り過ぎる際に後ろをちら見する

何故かその3人のうちの1人と目が合った気がした

気のせいかと思いそのまま歩を進める

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ああいうのを薔薇色の高校生活というのだろうな

軽く見ただけでも分かる顔の良さ、喋り方も愛想がよく、人に好かれるタイプだろう

おひとりさま主義を掲げる俺とは真反対である

人間関係という無駄にリソースを割くものにどうしてそこまでこだわるのだろうか



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そもそもとして学生の本分は勉強であり

友達を作る行為自体に大した意味なんてない

恋人なんてもってのほかだ

そんなことを心中で呟きながら教室へと入る

ぼっちには嬉しい

窓側の端っこの席

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HRまでの時間を適当に過ごす

数分後…

ガラガラ🚪

咲)もうにゃんかわいいぃ〜笑

和)…やめてよ///

茉)あっ!いろはおはよう

軽く巻かれた黒髪に、大きな瞳…艶やかで少しぷっくりとした唇

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クラスの男子がヒソヒソと"井上さん超かわいいよな"と話しているのを耳にする

所作の一つ一つが丁寧であり、教師の話も真剣に聞いている

真面目で勤勉

クラスの奴らが可愛いと言うのも頷ける

まぁ…俺には関係の無いことだ

教科書へと目を向ける

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咲)にゃん!食堂行こ!

和)はーい

私は弁当箱を持って食堂へと向かう

食堂のメニューは学生向けと言っても差し支えないような金額と量

茉)さっちゃん…いつも通り沢山食べるね

咲)…だって…お腹すいちゃうんだもん///

い)照れてる可愛い〜笑

咲)にゃー!やめろー!‪💢



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和)そんなに食べたら太るよ〜笑

いつもの仕返しでそんな意地悪を言う

咲)ふんっ!食べても太らないからいいもん!

い)その油断が命取りになるんだぞ〜笑

確かにさっちゃんは全然太っていないむしろかなり細い

あの量のご飯が体のどこに行っているのだろう…羨ましい限りである

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その後はファッションの話とか恋バナだとか話していると

昼休みの終わりを告げるチャイムがなった

咲)…次はおやすみタイムか

茉)やなぁ…

和)おやすみタイムって…笑

お昼休みの後の5時間目

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この学校の最高齢の教師が教壇に立って話始める

声は小さくボソボソとしている

ただでさえ眠い5時間目の時間にこの授業…大抵の生徒は眠ってしまっている

かく言う私は、授業内容が好きなため真剣に聞いている

辺りを見渡すと、私と同じ起きている生徒が1人だけいた

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この古典の時間は先生が話して板書を軽くするだけになっていて

ほぼ、話を聞いているだけ

それなのに真面目だなと少し好感を持った

和)…(最近私…よく見てるなぁ)

なんて答えの出ない問いを自問自答していた

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「レポートの課題の出すのでしっかりやってくるように」

6時間目の授業終わりに教師がそういうと教室中から不満の声が溢れた

○)…(今日中に図書室で終わらせるか)

面倒ごとは早く処理するに限る

何やら"図書室に行く"というワードが教室のどこかから聞こえた気がするが無視して

図書室へと向かう

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図書室には司書の先生しかいなかった

ゆっくりと課題ができると思っていると

ガラガラとドアが開いた

○)…(誰か入ってきたか…)

お構い無しに課題に必要な資料を集める

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?)うぐっ…届かない

俺と同じ棚で本を探していたらしく

160cmないくらいの身長の女の子は1番上の段をの本を取ろうとしていた

?)…ハシゴもないし…どうしよ

背伸びをしても届かないようだった

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無視をしても良かったのだが…

○)…

さすがに良心が痛むため

本を取って彼女に渡す

?)えっ、あっ!ありがとう!

聞いたことのある声だったため顔を上げると…

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井上さんだった

和)小川くんも課題しに来たの?

○)…あぁ、うん

和)そうなんだ!偉いね

○)…じゃあ…これで

和)あっ、ちょっと💦



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井上さんはなにか言いたげだったがそれを無視して机へと向かう

○)…

集中して資料を見ていると

俺の目の前の椅子が引かれて、その席に座った

和)失礼します

○)…

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和)…露骨に嫌な顔しないでよ傷つく

○)傷つくんなら別の場所に座ったら?沢山ある訳だし

和)むぅ…

頬をふくらませてこちらを睨む

○)何?

和)ふんっ…

そっぽを向いてそのまま作業をはじめてしまった

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○)…

何もしてこないのならいいかと思い

俺も作業を進めていった

それなりに集中をして、半分ほど終わらせた

目の前を見ると背筋がピンッと伸びており

字もすごく綺麗だった



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和)何見てるの〜笑

こちらの視線に気がついたようで

○)別に

和)うわっ…めっちゃびっしり書いてある

○)…課題なんだから当たり前だろ

和)ほえぇ…すご…

○)そっちだってめっちゃ書いてるじゃん

和)そう?普通じゃないかな?

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レポート用紙いっぱいに書かれた文字を見て

○)…(普通ではないだろ)

和)というか小川くんって意外と話しやすいね

○)…はぁ

和)愛想悪いけどねぇ

○)…そう思うなら話しかけないでくれ

和)えぇ〜やだ 笑

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悪戯に笑う

和)もっと愛想良くすればいいのに

○)…余計なお世話だ

なんでおひとりさま主義を掲げている俺がそんなことをしなきゃいけないんだと内心で思う

和)1人で寂しくないの?

○)…別に

和)ふーん…そっか

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和)…

そのまま無言のまま作業を進めていった

時間も経って

課題を終わらせた俺は資料を戻して図書室を出た

井上さんの方を見てみると集中をしていたため

声を掛けずに出ていった

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○)…?

なんで声をかけるなんて発想に至ったんだ…?

なんて自問自答をする

○)…まぁ、いいか

下駄箱で靴に履き替えて校門へと向かう

すると後ろから足音が聞こえて振り返る

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和)はぁ…はぁ…なんで置いてく訳?

とこちらを睨む

○)課題終わったし

和)なら、一声くらいかけてよ

○)…一緒に帰るなんて約束してないし…良くない?

和)…そんなんだから友達出来ないんだよ!

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プンプンという擬音でも出てるかのような怒り方をされる

○)いらないから大丈夫

和)…拗らせてる

○)…うるさいなぁ

和)まぁ、いいや一緒に帰ろ

○)嫌です

和)なら、勝手に着いてくね

○)…

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無視を続けているのに関わらず話しかけてくる

○)…

和)ねぇ〜?おーい!

和)見えてないのかなぁ?

そう言って俺のわき腹を小突く

○)ビクッ!!?

和)あっ、こっち向いた

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○)いい加減にしてくれ…

和)なんで?

○)迷惑なんだ…俺はひとりがいいんだよ…

和)…

○)誰もが仲良くしたいとか友達が欲しいなんて思わないでくれ…本当に迷惑だ

和)やだ…もう、私は君と友達になるって決めたから

和)君がなんて言おうと関係ないから!

○)…めちゃくちゃだ

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そんな押し問答をしていると駅に着く

どうやら駅は反対方向のようでほっとした

和)じゃあ…またね!

と大きな瞳を見開いて笑顔でこちらに手を振った

その姿になんだか既視感を覚えた

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今までの人生であんな顔の整った人とは関わったことはないなと自己完結をして

階段を上がった

○)…またね…か

と言われたものの、もう関わることはないだろう

俺はおひとりさま主義を貫くと決めたのだから


To Be Continued?
(好評ならってやつ…。)

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