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振られ台本(ヤンデレ)


「あのさ…君に伝えたい事があるんだ」
「3年前の今日、そうここで、私達は出会った訳だけど、今まで良く飽きもせず私と一緒に居てくれたと思うよ」
「いや、まさか3年も続くなんて思っていなかったというのが本音だった」
「どうせまた直ぐに飽きられる、どうせまたすぐ居なくなる、一人になる」
「みんな最初はね興味本位で近づいて来るんだ、そうしてこっちが近づいたり心を開くとね…みんな怯えて居なくなってしまう」
「まあ、そんな私の予想を君はことごとく裏切ってくれた訳だけどね」 
「まさか出会って直ぐに家出した私を追いかけ、あまつさえ探し出して夜が明けるまで傍に居てくれたり」
「去年突然体調を崩して入院した私に会う為に入院先を聞いていなかったからって市内の病院を虱潰しに調べあげられたり、この時はさすがに笑ってしまったが」

「ちょっと話がそれてしまったね」
「思い出話というのはなんとも楽しく何物にも代えがたいものだ」
「さて今日、君に伝えたかった事というのはね」

「私たち別れよう」

「と、いうことなんだ」
「すまないね、いや君に不満がある訳でもなんでもないんだ」
「君には感謝しているし今でも好きだと思っている、なんなら誰よりも君の事を知っている自負もある」
「人はね、簡単に離れ離れになってしまうんだよ」
「病気や怪我だけならまだしも、この世の中にはあまりにも面倒な事が多い」
「君は気にしないと言ってくれたが、私の両親も私達の行く末の障害になるだろう」
「私には敵も多いし、そんな私と一緒に居てこの3年間で君は何度も辛い目にあってきた」
「これからもきっとそれは続く、今まではもったがこれからも君が我慢できるとは限らない」
「私は君が辛そうにしている顔を見ているのも好きだが、それで君が私から離れられてしまっては元も子もない」
「なにより人は老いる、今は好いてくれていてもいつか君の目に余る醜さになってしまうかもしれない」

「これはステップアップなんだよ、私と君は更なる高みへ行く」
「この3年間で君の体に私を刻み込んだ、これから君の記憶と精神に私を刻みつける」
「もうこれくらいしか思い浮かばなかったんだ」
「あまりにも幸せで、あまりにも暖かくて」
一歩前に出る
「私には有り余るほどキラキラと輝いていた」
一歩前に出る
「だからね。今を、この瞬間を永遠にするんだ」
一歩前に出る
「大丈夫、明日の朝には助けが来るから。そのまま椅子に縛られたまま何日も見つからないなんて事はおこらない。安心してくれ」
いっぽまえにでる
「ではそろそろ行くね」
「さようなら、バイバイ」

そうして私は彼のほうを振り向き、飛びっきりの笑顔のまま空中に身を投げだした

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