怪物パスカルと仇討ち狂騒曲

怪物鯨・パスカルに母を飲み込まれた一家の復讐劇。

シリアスとギャグの塩梅が絶妙でした。
初めは「笑っていいのか…?」と思いながら観ていたけど、ならず者たちのラップバトルで「これ笑っていいんだ!」と一気にほぐれた。

お父さんによる母の仇討ちシーンで目に浮かぶ涙が見えるようで、不覚にもぐっときてしまった。

最初に食われたのがお母さんじゃなかったら、こうも家族は狂わなかったんじゃないのかな。
家事や会話、「家」の機能をお母さんに担わせすぎていたからこそ、あっさり軸を失ってしまったように見えた。

母亡き後は姉がその位置に収まって、家族をつなぎとめていたようだけど、結果承認欲求が満たされず。
まりなさんのよく回る口と狂気的な笑みが印象的。

弟はどうしてそこまで破滅願望を抱いたんだろう。
荒木さんの少年っぷりが好きだった。あと青サバの飄々としたへたれっぷりも。

能村さんの前回作、『女王陛下の666』も父と娘の話だった。何か好みのパターンなのかな。

怪物鯨は、結局討ち取れなかった。またあの一家を襲う可能性もある。そのときが再び訪れたら、彼らはどうするんだろう。戦うのか、いなすのか、受け入れるのか、諦めるのか。幸せに見えたラストシーンは、つかの間の幻想なのかもしれない。

アフタートークで、ポスターの写真を担当したニシヤマが「人生って『よく覚えてたな、そんなこと』の連続だと思うんですよ」と言っていたのが心に残った。
「それがいい思い出だったっていうのは、救いだと思う」

プロフェッショナルファウルprsents ヤングファウルシアター

「怪物パスカルと仇討ち狂想曲」
作・演出 能村圭太

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?