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5/22 : かなしいベンチ

こんな文章を読んだ。

公園などにある2〜3人用のベンチはホームレスの寝場所になりうる。
だからホームレス対策として、身体を横たえることができなくなるように肘掛けつきベンチの設置が推進された。

詳細には思い出せない、もう何年も前に読んだ評論で、1950年代のアメリカについて言及していたような気がする。

以来、私は肘掛けのあるベンチに座ると ときどき胸が騒ぐ。
だからといって、何をするわけでもないのだけれど。

5月22日、しばらく前から興味があった駅前の公園に行った。
喧騒を潜るように緑の中の坂道を降りて、肘掛けのあるベンチに座った。

帰りがけに公園を囲む幅広の縁石に目をやった。
ひいやりと冷たそうな長いベンチにも見えるその上に、何の役にも立たなそうな立方体が雑にセメント付けされてある。縁石とは材質が微妙にちがっていて、明らかに後から設置されたものだった。

翌日会社の先輩たちと、遅くまで働いて帰路についた。
すでに灯りが消えた隣のビルの玄関前、歩道とわずかに隔てられた階段にうずくまって、薄汚れた毛布に包まれしきりに揺れる人影があった。
私たちは口をつぐんでその横を通り過ぎていった。

都会は徹底しているな、とひとごとのように思う、だから私は善人になれない。

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