バングラデシュビジネスの種 ~衣料品産業の今~

 バングラデシュは世界第2位の衣料品輸出国。2018-19会計年度、202カ国に405・3億ドル(4兆4983億円)の商品を輸出しましたが、そのうち衣料品が84%、341.3億ドル(3兆7880億円)を占めます。主に現地新聞報道から、バングラデシュの衣料品産業の今を、歴史を交えて追ってみました。

【バングラデシュの衣料品産業】

1独立戦争

 1971年12月16日、9カ月に渡った独立戦争に勝利した東パキスタンは、バングラデシュ人民共和国として独立を果たした。1971年の独立戦争直後の1972-73会計年度、バングラデシュは世界68カ国に25製品、3.48億ドル(386.2億円)を輸出した。主要輸出製品はジュート、皮革、茶の3品目。そのうちジュートが総額の90%を占めていた。
 1970年代後半、教育を受けた若者グループが衣料品産業に進出した。彼らは自宅敷地内や共有ビルに工場を設置し、バイヤーを束ね、衣料品事業を世界展開するようになった。状況は次第に好転し始めた。
 ところが、2013年4月24日、ダッカ郊外のシャバール(Savar)で5つの衣料品工場が入ったラナ・プラザビルが崩壊。1138人が死亡、2500人以上が負傷するバングラデシュ史上最悪の産業事故が発生した。その後、『火災や建物の安全にかかわる協定(アコード)』や『労働者の安全のための提携(アライアンス)』が世界中のアパレル企業や小売業者と結ばれ、衣料品労働者の労働環境の改善を目指した。

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