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バングラデシュビジネスの種~医薬品産業~

【はじめに】
1971年の独立戦争直後、9カ月の戦いで疲弊した経済を立ち直らせるため、バングラデシュは世界に向けて新たな戦いを繰り広げる必要があった。

1972-73会計年度のバングラデシュの主要輸出製品は『ジュート』『皮革』『茶』の3品目で、世界68カ国に25製品を輸出し、3.48億ドル(386.2億円)を売り上げた。そのうち90%をジュートが占めた。

だが、1970年代後半、高学歴の若者グループが衣料品産業に運命を託したことで、状況は変わり始めた。彼らは自宅の敷地や共有ビルに工場を設置し、バイヤーを束ね、衣料品ビジネスを世界展開するようになった。

それから40年、バングラデシュ製品は世界の衣料品市場の6.4%を占め、440万人の雇用、とりわけ女性の雇用を支える世界第2位の衣料品輸出国となった。

2019会計年度、バングラデシュの商品輸出は、前年比10.55%増の405.3億ドル(4兆4983億円)となり、年間目標の390億ドルを3.94%上回った。全輸出の84%以上を占める衣料品は341.3億ドル(3兆7880億円)で、前年比11.49%の成長だった。

一方、2019年7月開始の2020会計年度の当初8カ月間(~20年2月)の輸出は、前年より減少したものが多かった。衣料品部門は前年同期の231.2億ドル(2兆5660億円)から218.4億ドル(2兆4240億円)に減少した。輸出促進局(EPB)のデータによると、織物衣料品5.88%減の109.4億ドル(1兆2142億円)、ニットウェアは5.17%減の108.9億ドル(1兆2086億円)だった。

バングラデシュ衣料品製造輸出業者協会(BGMEA)は4月29日、新型コロナウィルス流行による悪影響により、31.8億ドル(3529億円)の輸出キャンセルを受け、228万人の労働者が影響を受けているとした。

コロナウィルス流行の悪影響は他産業にも及んでいると思われるが、衣料品輸出が減少した2月までの8カ月間、前年より輸出が増加した産業がいくつかある。
  
その中で、7.23%増と堅調な伸びを見せたのが医薬品産業だ。輸出収益は9672万ドル(107.3億円)と、衣料品産業の足元にも及ばないが、国内外でのバングラデシュ医薬品の需要増加、ジェネリック医薬品の市場規模拡大など、有望産業に発展すると見られている。

これらを踏まえ、バングラデシュの医薬品産業についてレポートしてみたい。

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