バングラデシュビジネスの種 ~ダッカ都市高速鉄道~
【JICAとMRT】
2013年2月20日、国際協力機構(JICA)は、バングラデシュ政府との間で、3件、総額706億9300万円を限度とする円借款貸付契約を調印した。
3件のうちの1つが『ダッカ都市交通整備事業(I):Dhaka Mass Rapid Transit Development Project(I)』。「渋滞都市」ダッカを変えるバングラデシュ初の都市高速鉄道(MRT)の建設だ。
どのくらいの渋滞都市なのか。2016年11月のBDDNEWSのコラム『ダッカの人口圧力』(原典:Prothom Alo紙)では、
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バングラデシシュの首都ダッカやその周辺地域の人口は1700万人に達した。バングラデシュ統計局(BBS)や国連人口基金(UNFPA)のデータによれば、ダッカは世界で11番目に人口の多い都市だという。だが都市サイズを考えれば、バングラデシュは世界で最も人口密度が高い都市だ。ダッカでは1平方キロメートル当たりに合計4万3500人が住んでいる。これは驚くべき数字である。そのうえ、毎日、平均1700人がダッカに入ってきている。
急成長するこの都市の需要を充足するため必要となるインフラや病院、下水システム、廃棄物処理に関する適切な計画や予測が全くないことはさらに驚くべきことだ。すでに恐ろしいまでの交通渋滞に束縛されているこの都市へ、1日1700人の流入を食い止める動きは一切ない。
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東京23区の人口密度はおよそ1.5万人/平方キロメートル。その約3倍(さらに毎日1700人ずつ増えている)と言えば実感が湧くだろうか。
2017年7月のBDDNEWS『ダッカにはもっと空間が必要』(原典:The Daily Star紙)では、
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交通渋滞により毎日320万労働時間が浪費され、毎年数十億ドルの損失を経済に与えている。ダッカにおける車の平均運転速度は10年前には毎時21キロメートルだったが、今ではその3分の1の毎時7キロメートルに低下した。現在の傾向が続けば平均運転速度はさらに遅くなり、歩行より遅い毎時4キロメートルになると、世界銀行は予測する。世界銀行は、ダッカの人口は2035年には現在の1800万から2倍近くの3500万人になると見込んでいる。
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慢性化する交通渋滞を解消するため、バングラデシュ政府は2005 年、世界銀行の協力を得て、ダッカ都市交通戦略計画(Strategic Transport Plan for Dhaka: STP)を策定した。
JICA は、2009 年から 2011 年にかけてダッカ交通調整局(DTCA)をカウンターパートに、「ダッカ都市交通網整備事業準備調査(DHUTS)」を実施し、STP や交通需要の見直しを行った。その結果、MRT6 号線が優先プロジェクトとして選ばれ、同線の事業実施妥当性の技術的、経済的な検証を経て、 2013 年 2 月、円借款契約を調印した。
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