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「その先にある未来を提示するデザインを、BranCo!で学んだ」 デザインユニットgoyemon(ごゑもん)」共同代表・武内賢太さん【After BranCo! #1】

BranCo!卒業生に、BranCo!でどんな学びを得てどう今のキャリアに繋がっているのかをインタビューする連載企画・「After BranCo!」。
今回は第1回ということで、BranCo!2015(テーマ:「嘘」)に参加し、現在は大西藍さんとともにプロダクトデザインユニット「goyemon(ごゑもん)」の共同代表を務める武内賢太さんにインタビューさせていただきました。BranCo!での経験や学びが、現在のプロダクトデザインのお仕事や思想にどう影響しているかについて伺いました。

図2

過去のストーリー性を現代にもってきて、その先の未来を提示することまで含めてのデザイン

――まずはじめに、経歴について教えてください。

高校生時代からものづくりが好きだったので、東京工芸大学に進学しプロダクトデザインを専攻しました。そして3年生のときにテーマ「嘘」のときのBranCo!に参加しました。
大学卒業後は照明メーカーに就職し、商品企画を行っていましたが、メーカー在籍中に高校時代の友人である大西藍とデザインユニット「goyemon(ごゑもん)」を立ち上げ、雪駄×スニーカー「unda-雲駄-」をリリース。2020年にメーカーを辞めて「goyemon(ごゑもん)」を法人化し、第二弾の切子×ダブルウォールグラス「Fuwan-浮碗-」を販売したり、直営店をオープンさせたりしました。
現在はデザイナーとしてデザイン制作の依頼を受けるほか、「unda-雲駄-」などの自社ブランドを開発・販売しています。また、大学でプロダクトデザインの授業を受け持って、学生にデザインを教えたりしています。

――デザイン制作のお仕事と、自社ブランドの展開を行っているということですが、まずはデザイン制作について教えてください。

主にパッケージデザインを請け負っています。代表的な仕事でいうと、4Natureというベンチャー企業の、サトウキビストローのパッケージデザインを行いました。これは生分解性で、回収して堆肥化するシステムを目指す、サスティナブルな商品です。「商品は紙だけどパッケージはプラスチック」というような「なんちゃってサスティナブル」な商品が多いため、やるなら徹底させることを意識しました。パッケージ素材はオール紙で、ナチュラルさが伝わるようにクラフト紙を使用。これは購入後保存用のケースとしても使えます。

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さらに、できる限り単価を落とすために、紙にデザインを印刷するのではなく、シールを採用しました。どこに置いても陳列に困らないように、表面は横向きなのですが、裏面は縦向きになるようにデザインしました。またこのシールも90度曲がったものを使うことで、1種類のシールで済み、コストを削減できます。コストや陳列のことなど、先まで見据えたデザインで、ブランドの要望に応えています

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――「unda-雲駄-」などの自社ブランドについて教えてください。

「unda-雲駄-」だけでなく「goyemon(ごゑもん)」自体のコンセプトが「日本の伝統×最新技術」なのですが、ただ昔の製品を現代風にアレンジするのではなく、昔からあるものの所作やストーリーを現代に持ってくる、ということを意識しています。
例えば、雪駄って左右対称なんですね。これは、定期的に左右を入れ替えて履くことで、底のすり減る部分を均等にさせ、長く使うことができるという「もったいない」文化の現れなんです。最近の雪駄風サンダルは前つぼが左右に寄っているものが多いですが、日本のもったいない文化が失わせないために、左右対称のデザインを採用しました。

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そのプロダクトがあることによってどんな未来が待っているか、過去と未来をストーリーでつなげることは意識しています。ものだけつくっても意味はなく、過去のストーリー性を現代に持ちこみ、その先の未来を提示することまで含めてデザインだと僕は考えています。それをプロダクトデザイナーが行うことで、受け入れられやすいプロダクトが作れるのかなと思います。

自分の好きなデザインに気づけたのは、BranCo!がきっかけ。

――ストーリー性やコンセプトを大事にすることの原点はどこにありますか?

たぶんもともと無意識で背景やストーリーを未来に届けるようなデザインが好きではあったのですが、それが好きだと気付けたきっかけはBranCo!です。リボン思考も結局そういうことで、ものだけが存在していてもだめで、コンセプトに一貫性があることが重要。
BranCo!の説明会のレクチャーでそれを聞いたときに、やっぱり大事だよなと再確認しました。いままでぼんやり考えてたことが言語化されて、背景と未来の間に手段としてのプロダクトがある、という考え方に結び付きました。

――BranCo!に出場した背景には、どのようなきっかけがあったのですか?

出場のきっかけは、高校の同級生に誘われたことです。当時はBranCo!に出ている美大生は多くはなく、美大生チームを結成して自分たちの土俵で優秀な大学の人と戦っていこうと決めました。そのため、調査の際も美大生らしさを意識しましたね。まわりに絵を描く人が多かったので、アンケートは文章で答えてもらうのではなく、絵を描いてもらいました。

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――そこからどのようなアイデアになったのですか?

嘘をついている人ってネガティブなイメージがあるじゃないですか。でも嘘をついている人の絵を描いてもらったら、多く人は笑っている人の絵を描いたんですね。たしかに騙してる人って笑ってそうですよね。そこから意外とマイナスのイメージじゃないかもしれないと発見しました。
最終的には、映画などのフィクションという「嘘」に着目し、「フィクションという嘘」が存在することによって、それを実現させたいという人が現れ、「嘘」が技術の起爆剤になっている、と考えました。そこで提案したのが、アーティストと日本の技術者をマッチングできる学校・プロジェクトです。

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――BranCo!での学びを教えてください。

BranCo!での学びは2つあります。1つは、「なんとなくいいものは、なんとなくつくられていない」ということです。これは説明会のレクチャーで言われました。細かいディテールやストーリーなど、最終的な詰めが相まって「なんとなく良いもの」がつくられる。それまでは「何かすごいものを作らなきゃ」と思っていたのですが、この言葉を聞いてその重荷が消えました。むしろ、みんなにとって心地が良かったり、なんとなく良いものを目指そう、と考えるようになりました。誰のための「なんとなく良い」なんだろうという視点は、いまでも続いています。

もう1つの学びは、「らしさ」のつくりかたです。リボン思考でいうところの、コンセプトが真ん中にあって、アウトプットのどこをとってもコンセプトの筋が通っている状態。いまも「goyemon(ごゑもん)」の商品を第二弾、第三弾と進めているのですが、このときに「goyemonらしさ」がはっきりしていないと、ブランディングがぶれてしまいます。違うプロダクトや違う媒体にしても、「らしさ」を受け継がせていくことの大切さは、BranCo!で学びました。

僕はプロダクトデザイナーという肩書ですが、ものだけつくるのはダメだと考えています。そのものがなぜ必要か、その先にどんな世の中があるのかを消費者に提示することを意識しています。それはサトウキビストローのパッケージもそうですし、「unda-雲駄-」のコンセプトもそうです。そうしないとつくったものに失礼ですし、売れるためにはストーリー性を考えなければいけません。僕はそこを大事にしています。

――BranCo!で学んだコンセプトやストーリー性の大切さが現在のクリエイティブに活きていて、まさにリボン思考ですね。本日はお時間いただきありがとうございました。

図1

武内賢太
東京工芸大学卒業後、インハウスデザイナーを経て大西藍と「goyemon(ごゑもん)」を設立。「unda-雲駄-」や「Fuwan-浮碗-」などのプロダクトを開発・販売するほか、デザイナーとしても活躍。


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