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出典解説S 「限りない宇宙─ピエール・バルーからのおくりもの」2017年5月 コアポート

出典解説のSです。

S 「限りない宇宙─ピエール・バルーからのおくりもの」2017年5月 コアポート

ピエール・バルーのコンピレーションCDのライナーノーツ(原稿用紙およそ10枚分)
から採りました。
タイトルは「時空を超えた散歩と、出逢いのドキュメント」、この全3ページからどの部分を採用するかという判断には、やや悩みました。

これまでの著作にも出てくる、芸術家を尊重するレストランのくだり──ちょうど編集作業中にトークイベント「サロン・タンデム(SALON TANDEM)」というシリーズがあり、そこでもお話されていたエピソード──を入れるべきか否かです。

考え方A:いわば牧村さんの持ちネタなので、ここで「発言集成」に収録してしまうと、その後の講演会などで話しにくくなってしまうのではないか。だから却下する。

考え方B:すでに、何回も繰り返されているお話でもあるので、きっちり収録してけりをつけた方が良いのではないか。だから収録する。


結果としてAを選びました。上記の理由もありますが、このエピソードをあえて外すことで、それ以外の部分を多めに収録してしまいたかったからです。
冒頭はFG好きにとっては「カメラ・トーク」のロンドン録音の外伝のような話です(もちろん、ピエール・バルーや牧村氏にとってはこちらが主筋です)し、それ以降も少し時間や場所が飛んだり、珍しくドタバタした雰囲気があったりして、たいへん面白い文章です。

音楽のために右往左往し、飛行機に乗って世界中をジタバタ、ドタバタする、というコミカルな姿(S04)は、公的なイメージとはやや異なる、めったに書かれる機会のない、興味深い牧村憲一像ではないかと私には思えました。
しかも、それをご自身の筆によって、追悼色の強い企画CDで書かれているという点も含めて、感慨深いものがあります。

この項Sの関連項目として挙げておきたいのは、L06の「二十年前にパリに行った時に」以下のくだりです。ここはS02の「廃校に不法侵入して公演中」と明らかにリンクしています。本書を読んでいてこの二ヶ所の関連に気づいた人は、ささやかな満足感を得られるのではないでしょうか。二十年前のパリと、現在の東京(台東区と港区)が牧村氏の記憶を介して繋がっている、それを追体験するように「!」が頭上に浮かぶのでは……。

編者として、この二つの発言の繋がりを発見できたこと、そして、はっきりと形に残せたことには満足しています。

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