薬局BCPとは ーその6ー

BCP策定はゴールではない

BCPの策定は決してゴールではありません。始まりです。BCP活動を定着させるためには、業務改善の手法であるPDCAサイクルを回すことをお勧めします。このサイクルを繰り返すことで自薬局にあったBCPになっていきます。BCPにおけるPDCAサイクルは、下記のようになります。

【策定(Plan)】今までお話しした「初動対応計画」「災害対策本部計画」「応急救護所支援計画」「事業継続計画」の策定と、訓練計画の立案も入ります。

【教育・訓練(Do)】策定したBCPを全社員へ周知させるために教育と訓練を実施します。教育・訓練後には必ずアンケートを取り、課題、問題点、要望等を洗い出します。

【課題の検証(Check)】教育・訓練で発見された課題、問題点、要望等の一覧表を作成し、対応方針まで検討します。

【改善・見直し(Action)】作成した一覧と対応方針をもとに対策の検討を実施し、BCPに反映(変更・修正・追加)します。

訓練と演習の重要性

訓練はPDCAサイクルのDoに該当します。訓練後にアンケートを取って一覧に集約するCheckも同時に実施します。先ずは訓練と演習の違いをお話します。

【訓練】身体が覚えるまで繰り返し練習をすることを訓練と言います。例えば、揺れを感じたら身の安全確保をすると説明していますが、実際に体が覚えるまで練習をするということになります。

【演習】被害想定の前提をし、行動計画が実際に機能するかの確認を行うことを演習と言います。例えば、今回の地震を想定したBCPでは、地震発災後、策定した行動計画に沿って確認することになります。

次に、4つの計画における実施すべき訓練・演習のポイントをお話しします。訓練で繰り返し身体に覚え込ました後に、様々な訓練・演習は段階を踏んでいくことが重要です。

【初動対応計画】初動対応計画は、訓練が主になります。震度6強の地震発生を想定し、身の安全確保、ケガ人対応、安否確認、被害状況確認等のそれぞれで訓練をします。1回目は項目事に実施し、2回目以降は身の安全確保後に安否確認をするなどの組み合わせで実施すると良いでしょう。

【災害対策本部計画】災害対策本部の設営、役割の確認と実行、そしてその記録を演習で実施します。演習では、震度6強の地震、経営者の不在で電気等の社会インフラは最悪の被害状況を前提に設定します。災害対策本部の設営が完了し、本部長代行・本部メンバーが参集した時点で、本部長からの指示で情報収集の報告、重要関係先との連携を開始します。記録は全てを時系列で記録するようにします。

【応急救護所支援計画】こちらも演習として、地震発生を想定し、派遣薬剤師が持参する物品を持って救護所までのルートを地図上でなぞってみます。あらかじめ検討していたルート上に通行禁止の場所を設定し、別ルートの検討をするような演習でも良いでしょう。

【事業継続計画】受付、調剤、監査、投薬・服薬指導、会計、薬歴作成の流れで演習を実施します。想定患者数分の処方箋を準備します。演習開始の合図で、調剤に必要な物品を準備し、患者さんが来局して処方箋を受付けてその後の業務が流れるか確認します。この時、実際に照明を消して災害用に準備したランタンで調剤するのも良いと思います。

訓練・演習の実施後は参加者全員にアンケートを取ります。アンケートを取ることで課題や問題点、要望が把握できます。アンケート項目は、設問に対して自由記載ではなく、「はい、いいえ、わからない」の解答欄を作成し、「その理由」も記載できるようにします。「特になし」という回答は書かないようにアナウンスします。また、訓練・演習の運営についても設問に入れるようして、次回の訓練・演習に活かすようにしてください。アンケートの記入は可能な限り訓練・演習終了後に記入してもらいます。アンケート回収後は、集計結果を作成します。今後の具体的な対応について検討できるでしょう。

年間計画立案の必要性

災害時に機能するBCPを策定するには、年間計画を立ててPDCAサイクルを意識した取り組みを実施する必要があります。すでに社内で年間行事が記載されている表等あればそこに追記します。計画に記載する主な項目は、PDCAサイクルの項目になります。

教育は全社員に対して実施するようにしますので、新入社員の入社時、中途採用や人事異動があったときに実施します。特に安否確認に使用する携帯電話番号、メールアドレスに関しては各人の変更が多いため、訓練については3ヶ月ごとの実施をお勧めします。

災害対策本部計画、応急救護所支援計画、事業継続計画については、年1回、防災の日等に合わせて実施すると良いと思います。世の中が防災に関して意識が高まっていますので。その後、課題や問題点を検証して、改善・見直しについては、期間を決めて年間行事へ追記します。あと、通常実施している朝礼や定期的に開催している経営会議等があれば、それぞれの冒頭10分程度でBCPの進捗状況を発表するのも良いと思います。そうすることでBCPは薬局に必要な計画であり、重要なものだという認識が社員に定着していきます。

既に何度も触れたように、経営者の考え方、薬局の立地、近隣医療機関の診療科等でBCPの内容は変わってきます。BCPに正解はありません。先ずはBCPを作ってみましょう。その後、繰り返し訓練を実施し課題や問題点を洗い出して、対策を講じていけば、自薬局に適したBCPになっていきます。

BCPは地域で

薬局BCPは、自薬局の事業継続は重要ですが、近隣医療機関、薬剤師会、医薬品卸会社、行政等との「連携」も必須の項目となってきます。地域全体で取り組む事で多くの患者さんを助けることが可能になります。BCPの最終形態は地域BCPだと考えております。まず「個」が強くなり、そして「全体」が強くなると思っています。

以上、薬局におけるBCP策定のポイントとして、少しでもご参考にしていただければ幸いです。最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

あとがき

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パッケージ版はガイドラインではありません。今までBCP策定のお手伝いをした経験を活かし、事前対策・行動計画を具体的に記載してます。
自薬局に合った内容を選択することで薬局BCPは完成です。


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