とうちこ奇談 池

 千葉県市原市に「とうちこ池」と呼ばれる池がある。県道をそれ、長らく整備されていないであろうボロボロの道路を歩いて行くと、昔は竹でできていたであろうみすぼらしい囲が現れる。
 その囲の内側に岩で縁どられた小さな池が鎮座している。
 これが今回の話の種、とうちこ池である。
 この池にまつわる言い伝えは何の捻りもないが恐ろしいものである。
 1. 池について問うと死ぬ。
 2.池の内に入ると死ぬ。
 3.池のそばで乞うと死ぬ。
 この3つの言い伝えで「とうちこ」である。
 ただただ無為に人が死ぬのである。
 ただし、この池で人が亡くなったという記録はない。

 明治〜昭和初期あたりではとうちこ池の周辺は子供の修道場だったそうだ。
 先祖が管理していたという方から見せていただいた当時の記録によると、早朝に清掃を行い、坐禅をし、朝食。それから座学と武道を習い、夕方にまた座禅をし夕食、そして就寝。そういうルーティンで日々を過ごしていたようである。
 また修練成果記録という冊子には5日ごとの所感や学童の成績が記されている。
 明治十一年の記録から記載の最後に「池転落者無し」と記されるようになり、最後の昭和八年七月の「池転落者有」の記録以降が白紙となっていた。


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