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ブロックチェーン業界に身を置いて感じたこと

記事の内容

今年に入りブロックチェーンエンジニアになるため転職し、現在はR&D部門でブロックチェーンを扱っています。
現状、コントラクトを実装したりというエンジニアらしいことはしておらず、ブロックチェーンを使ってどういったことが出来るか?などを検討しています。

この数か月の間に感じたことをメモしておこうと思います。
なお、私はBtoB型のサービスを提供している会社に勤めており、toC向けのサービスには携わっていません。
また、10年間業務基幹システムの開発に携わっており、ビジネスモデルを考えたり、サービスを一から作ったりすることについてはド素人です。
これらを踏まえて読んでいただければ幸いです。

感じたこと


ブロックチェーンは実現手段

ブロックチェーンの学習を始めた頃はブロックチェーンを使ったら何が出来るのか?という考えをしていました。
それは現職に就いた当初もそうでしたが、この考え方だと"Why? Blockchain."と聞かれると答えに窮することが多々あります。

その為、ブロックチェーンを使って何を出来るのか?という考え方から、今の会社のリソースを使ったらどんな面白いことを実現出来るだろう?という考え方に変えました。
そして、その実現手段としてブロックチェーンを使うことは可能だろうか?使うメリットはあるだろうか?を考えるようにしました。

そうすると、割と考え方がシンプルになった上に、ブロックチェーンを使う必要がないアイデアについては出来る会社と協力してさっさと実現すればいいという考えになってきました。
分かりやすい例で言うと決済分野などがそうですね。

独自トークンを発行して売掛、買掛などを発生させずに決済を即時に完了させる。
ブロックチェーンで出来ることを考えると出てきそうなアイデアだと思います。

ただ、現在の法制度などを考えると独自トークンと日本円との交換はハードルが高いですし、即時決済を本当に実現したいなら決済代行業者と協業すればいい。

ブロックチェーンはやりたいことを実現するための手段という好例が欧州サッカーのチケット発券の例だと思います。
ブロックチェーンの事業導入は「トークン」を考えるべし

この記事の中に「UEFAの事例でブロックチェーンは必須ではなかった。しかし、ブロックチェーンの特性とよくマッチする事例だった」とあります。
まさにやりたいことを実現するための手段としてブロックチェーンが最適だったという例だと思います。

ブロックチェーンはどうでもいい

誤解を生みそうなタイトルですが、業務で使用するサービスのユーザーから見れば裏でブロックチェーンが使われているなんてことはどうでもいいと実感

ユーザーが気にしているのは
・使いやすい
・早い
・止まらない
このあたりで、導入を検討する部門だと上記に加え
・費用対効果
・セキュリティ
などです。

そのため、ブロックチェーンを使用していることを前面にアピールしたとしても響く人は少ないのではないかと思います。

さらに、カスタマーサポートがエンジニアと切り離されて独立しているような企業の場合、ブロックチェーンに関する技術的な問い合わせなどが発生してしまい、カスタマーサポートで対応出来ない可能性もあります。

その為、不特定多数向けに技術や取り組みをアピールしたい場合はブロックチェーンを使用していることをアピールし、サービスを使用するユーザーにはサービスの利点のみをアピールするなど相手に合わせてセールストークを分ける必要があると感じました。


マネタイズについて

企業で新たなサービスを立ち上げようと考えると必ずマネタイズはどうするのか?という話になります。

自分がサービスの立ち上げに関わることが初めてということもあり、一番難しいです。

ブロックチェーンを使ったサービスは多種多様な企業に使ってもらって価値が出やすいと考えています。
分かりやすい例だとIBM社のFood Trustがあります。
このサービスは食品のトレーサビリティを実現し、消費者に食の安全を届けるというものです。

食の安全だけを切り取ると、サプライチェーンに関わる業者には何を提供出来るのか?となってしまいます。

この動画を見ると問題が発生した時に対処を早く出来るという点でメリットがあるようですね。
https://youtu.be/bUXE2qHGElI

IBM社はFood Trustを利用してもらい、利用料金をもらっています。分かりやすいモデルです。

私が難しいと感じる点としては、多種多様な業界・業種の方にメリットを提供出来る仕組みを作ること。
これを考えるために複数社でPoCをやるのでしょうけど、ある程度考えることが出来ないとPoCまで辿り着くことすら難しいなと感じました。

スケーラビリティ問題

スケーラビリティ問題はやはり出てくる
私はこの問題を解決するためのレイヤー2技術開発などには取り組んでいないので、スケーラビリティ問題が発生しない部分でブロックチェーンの利用を検討するか、技術の進歩を待つかの2択といった状況です。

スケーラビリティ問題については秒間トランザクションの処理件数も考慮する必要がありますが、ある程度データが載った状態でトランザクションをブロックに積む時に処理に時間がかかるようになったりするのだなという発見がありました。


ビジネスの共創

ある業界のセミナーに参加した際に登壇した方のほぼ全ての方から"共創"というキーワードが出てきました。
これは複数の企業が力を合わせてユーザーに提供出来る価値を高めていこうという動きです。

この動きはエンタープライズ向けのブロックチェーンを扱っている企業にとっては追い風だと感じています。
ビジネスを共創する仕組みを作っていく中で、企業間の情報共有の仕組みなどにブロックチェーンを活用する機会が増えそうだと感じてます。

SDGs×ブロックチェーン

ブロックチェーンの概念はSDGs(Sustainable Developement Goals:持続可能な開発目標)の達成に貢献できる技術だと考えています。
特に国連が掲げる"地球上の誰一人として取り残さない"という方針にブロックチェーンはマッチする技術だと考えています。

マネタイズの話にも関わってきますが、企業で新しいことを始めるとなった場合はやはり利益をどうやって確保するのか?という話になりますが、『SDGs×ブロックチェーン』というキーワードでサービス開発に取り組んでいる会社のCEOがこの様なことを仰っていました。

SDGs×ブロックチェーンは相性が良い
SDGs×ブロックチェーン×金儲けは相性が悪い

現時点では私も同じ印象を受けています。
当然、サービスを提供する仕組みを作ってボランティア的に使ってもらうというのは、そのサービスを継続出来なくなってしまうので売り上げは出さないといけません。
ただ、収益の柱になるようなものを作るというのは難しいなと感じています。


最後に

長々とこの数か月で感じたことを書いてきましたが、あくまでもBtoB向けのサービス検討、ビジネスモデルの検討についてはド素人が感じたことになります。コンサルの方がブロックチェーンに取り組んだりすると、また違った意見が出るのではないかと思います。

ブロックチェーンはガートナーのハイプサイクルから名前が出なくなったりと、これから本当に期待していいのか?と感じる人も少なくないと思います。
私ははあまり悲観的な捉え方はしていません。

国内の導入事例などでは独自トークンを発行して小規模な経済圏を活性化させるというような事例が多かった印象ですが、最近のセミナーに参加するとトークンの活用の仕方が多様化していたり、複数社でコンソーシアムを組んだ導入事例が増えてきており、まだまだこれからに期待が出来るなと感じています。

なんにせよブロックチェーン業界は今が頑張り時だなと日々感じています。

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