解析入門I - 連続性の公理3


この記事は解析入門I (杉浦光夫 著)の読書ノートです。


今回も連続性の公理から導かれる種々の命題を見ていくことにする。

下に有界な$${\mathbb{R}}$$の部分集合$${B \neq \phi}$$に対して、$${t \equiv \inf B \in \mathbb{R}}$$が存在する。このとき、$${-B = \{-b: b \in B\}}$$と定義すると$${\inf B = - \sup(-B)}$$が成り立つ。

下限の存在

$${l \in L(B)}$$をとる。下界の定義より、任意の$${b \in B}$$に対し$${l \le b}$$だから、$${-l \ge -b \in -B}$$が成り立つ。したがって$${-l}$$は$${-B}$$の上界となり、$${-B}$$は上に有界であることがわかる。$${-B \neq \phi}$$も成立するので連続性の公理より$${s \equiv \sup(-B)}$$が存在する。

さて、次が成り立つ。

  • 任意の$${b \in B}$$に対し、$${-b \le s}$$

  • 任意の$${c \lt s}$$に対し、$${-b \gt c}$$なる$${b \in B}$$が存在

これは読み替えると次のようになる。

  • 任意の$${b \in B}$$に対し、$${b \ge -s}$$

  • 任意の$${d \gt -s}$$に対し、$${b \lt d}$$なる$${b \in B}$$が存在

これは$${-s = \inf B}$$であることの必要十分条件である。したがって$${\inf B}$$は存在して、$${\inf B = -\sup (-B)}$$であることが示された。

空でない$${A, B \sub \mathbb{R}}$$に対し$${A \sub B}$$が成立しているとする。$${B}$$が上に有界ならば$${A}$$もそうであり、$${\sup A \le \sup B}$$となる。同様に$${B}$$が下に有界ならば$${A}$$もそうであり、$${\inf A \ge \inf B}$$となる

集合の包含関係と上限・下限の関係

$${x}$$が$${B}$$の上界であるとき、$${x}$$は$${A}$$の上界でもあることは明らかである。つまり、$${A \sub B \Rightarrow U(B) \sub U(A)}$$が成立する。そして定義により$${s = \sup A = \min U(A)}$$であるから、$${U(A)}$$のいかなる元$${u}$$に対しても$${s \le u}$$が成り立つ。$${U(A)}$$は$${U(B)}$$を含むから、当然$${U(B)}$$のいかなる元$${u'}$$に対しても$${s \le u'}$$が成立する。つまり$${\sup A \le \sup B}$$である。

下界に対しても同様の議論ができる。つまり$${A \sub B \Rightarrow L(B) \sub L(A)}$$が成立するから$${\inf A = \max L(A) \ge \max L(B) = \inf B}$$である。

空でない$${A, B \sub \mathbb{R}}$$に対し、$${A + B = \{a+b: a \in A, b \in B\}}$$とおく。$${A, B}$$が共に上に有界のとき、$${\sup(A+B)=\sup A + \sup B}$$であり、共に下に有界の時、$${\inf(A+B)=\inf A + \inf B}$$が成り立つ。
また、$${AB=\{ab: a \in A, b \in B\}}$$とおく。$${A, B}$$が共に$${[0, \infty) \equiv \{x \in \mathbb{R}: x \ge 0\}}$$の部分集合であるとき、$${\sup(AB)=\sup A\sup B, \inf(AB)=\inf A\inf B}$$が成り立つ。

演算された集合と上限・下限の関係

$${A, B}$$が共に上に有界であるとする。したがって$${\sup A, \sup B}$$が存在する。任意の$${a \in A, b \in B}$$に対し$${a \le \sup A, b \le \sup B}$$だから、$${a + b \le \sup A + \sup B}$$が成り立つ。したがって、$${A+B}$$は上に有界であり、少なくとも$${\sup A + \sup B}$$は$${U(A+B)}$$の元であることがわかる。

ここで任意の$${\varepsilon \gt 0}$$に対し、$${t \equiv \sup A - \varepsilon}$$と置くと、これはもはや$${A}$$の上界ではないから、ある$${a \in A}$$が存在し$${t \lt a}$$となる。同様に$${t' \equiv \sup B - \varepsilon}$$と置くと、ある$${b \in B}$$が存在し$${t' \lt b}$$となる。よって$${t + t' \lt a + b}$$だから、整理すると

$$
\sup A + \sup B < a + b + 2\varepsilon
$$

が成立する。$${\sup(A+B) \ge a + b}$$から$${-\sup(A+B) \le -a - b}$$がわかるので、上記の不等式と合わせると

$$
(\sup A + \sup B) - \sup(A+B) < 2\varepsilon
$$

となる。したがって$${(\sup A + \sup B) - \sup(A+B) = 0}$$から、求式を得る。下限や積についても同様の議論ができる。

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