量子計算学習ノート - 量子力学の公理3
この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。
前回はシュレディンガー方程式による連続的な時間発展の記述が、ユニタリオペレータによる離散的な時間発展の記述に書き直せることを説明した。この記事では逆にユニタリオペレータによる時間発展の記述がシュレディンガー方程式の時間発展の記述を再構成することを示す。これによりユニタリオペレータによる記述は本質的にシュレディンガー方程式による記述と1:1に対応することが示される。
ある適当なユニタリオペレータ$${U(t_1, t_2)}$$が与えられ、これが次のようにスペクトル分解されていたとする(このようなユニタリオペレータの表記は、$${t_1, t_2}$$が固定されていた時、任意性を保存する)。
$$
U(t_1, t_2) = \sum_k e^{\frac{-i\theta_k(t_2 - t_1)}{\hbar}} |b_k\rang \lang b_k|
$$
ここで$${\theta_k \in \mathbb{R}}$$であるからエルミートオペレータ$${K}$$を次のように定義できる。
$$
K = \sum_k \theta_k |b_k\rang \lang b_k |
$$
このエルミートオペレータ$${K}$$をハミルトニアンとするシュレディンガー方程式を解くことができ、解は次のようになる。
$$
|\psi(t_2)\rang = \exp\left(\frac{-i K (t_2 - t_1)}{\hbar}\right)|\psi(t_1)\rang = U(t_1, t_2)|\psi(t_1)\rang
$$
よって、ユニタリオペレータによる時間発展の記述からシュレディンガー方程式による時間発展の記述を再構成できることが分かる。
次回は量子システムの観測(測定)に対する公理を見ていく。
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