量子計算学習ノート - 固有空間と対角化


この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。


固有値、固有ベクトルの概念が定義されると固有空間と線形オペレータの対角化について議論することができるようになる。

いつものように$${V}$$をヒルベルト空間とし、$${A}$$を線形オペレータとする。$${\lambda}$$を$${A}$$の固有値とすると、固有ベクトルは実際無数のベクトルを取りうる。

このように$${A}$$の固有値$${\lambda}$$に対する固有ベクトル全体を固有空間という。当然ながらこれは$${V}$$の部分空間となる。

$${A}$$の各固有値を$${\lambda_i}$$とし、$${V}$$のCONS$${\{|e_i\rangle\}}$$を用いて$${A}$$が

$$
A=\sum_i \lambda_i |e_i\rangle \langle e_i|
$$

とかけるとき、$${A}$$は対角化可能であるといい、これを対角表現という。実際、これは$${A}$$のCONS$${\{|e_i\rangle\}}$$における表現行列$${M_A}$$が対角行列であることを意味している。線形オペレータが対角化可能である必要十分条件は、線形オペレータが正規オペレータと呼ばれる条件を満たすときであるが、これについては後の議論に回すことにする。

線形オペレータ$${A}$$の固有空間$${S_i}$$の内、次元が1でないもの、つまり2以上のものは、縮退しているという。固有空間が縮退していると固有空間内のCONSの取り方が一意ではなくなる。これは線形オペレータ$${A}$$が対角化可能であるときにおいて、その対角表現が一意ではないことを意味する。この性質は量子計算に現れる線形オペレータの議論をする上で非常に重要な性質となる。

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