解析入門I - 連続性の公理1


この記事は解析入門I (杉浦光夫 著)の読書ノートです。


この記事では実数の連続性の公理について説明する。この公理について議論するためにはまず上界と下界について説明する。

実数集合$${\mathbb{R}}$$の元$${b}$$が、ある部分集合$${A \subset \mathbb{R}}$$において、すべての$${A}$$の元$${a}$$に対し$${b \ge a}$$を満たすとき、$${b}$$を部分集合$${A}$$の上界という。同様に$${b \le a}$$が成り立つとき、$${b}$$を部分集合$${A}$$の下界という。

部分集合$${A}$$の上界の集合を$${U(A)}$$、下界の集合を$${L(A)}$$と表すことにする。$${U(A) \neq \phi}$$であるとき、部分集合$${A}$$は上に有界であるといい、$${L(A) \neq \phi}$$であるとき、部分集合$${A}$$は下に有界であるという。

なお、定義より明らかに次が成り立つ。

  • $${b \in U(A), c \ge b}$$ならば、$${c \in U(A)}$$

  • $${b \in L(A), c \le b}$$ならば、$${c \in L(A)}$$

上界、下界に存在する最小限、最大元には特別な名前がついている。$${\min U(A)}$$が存在するとき、これを$${A}$$の上限といい、$${\sup A}$$とかく。また、$${\max L(A)}$$が存在するとき、これを$${A}$$の下限といい、$${\inf A}$$とかく。

上限、下限の必要十分条件には次のようなものがある。

$${x}$$が部分集合$${A \subset \mathbb{R}}$$の上限であることは次の二つが成り立つことと等しい。

  • すべての$${a \in A}$$に対して、$${x \ge a}$$

  • $${b \lt x}$$であるすべての$${b}$$に対して、$${b \lt a}$$なる$${a \in A}$$が存在する

同様に$${x}$$が部分集合$${A \subset \mathbb{R}}$$の下限であることは次の二つが成り立つことと等しい。

  • すべての$${a \in A}$$に対して、$${x \le a}$$

  • $${b \gt x}$$であるすべての$${b}$$に対して、$${b \gt a}$$なる$${a \in A}$$が存在する

これらの第一条件はそれぞれ$${x}$$が上界に属するための必要十分条件だ。また第二条件は$${x}$$よりも小さい、もしくは大きい元をとってくるとそれはもはや上界や下界に属さないということを意味している。

また、これも直感的に明らかであるが、$${A \subset \mathbb{R}}$$に対し、$${\max A}$$が存在していれば、$${\sup A = \max A}$$であり、同様に$${\min A}$$が存在していれば、$${\inf A = \min A}$$となる。

さて、ここまで来てはじめて連続の公理について議論することができる。連続の公理とは次のようなものだ。

実数集合$${\mathbb{R}}$$において、上に有界なすべての部分集合$${A \neq \phi}$$に対し、$${A}$$の上限$${s = \sup A}$$が$${\mathbb{R}}$$に存在する

連続性の公理

次回の記事ではこの連続の公理から導かれる事柄について議論していこう。

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