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【映画鑑賞】今月のベストムービーは「すばらしき世界」(2024年4月:6本)

5月も半ばになって先月の映画noteを書いております。先月って何やったっけ?と思い出しているのですが個人的には恐らく7年振りに沖縄に行った事でしょう。

その目的も「感性ワークショップ」という怪しいワークショップを受けて来ました。色々な出会いあり、感性が揺さぶられるようなことがあり、学びもありました。自分の中でこのワークショップで感じた事は「目に見えないもの」を感じる力に尽きるように思えます。

沖縄のそよ風、海に触れた時の一体感や結び、本当に一つ一つの全てのものにエネルギーは存在し影響を与えられ、そして影響を与え続けているというもう純然たる事実を感じました。アインシュタインはエネルギーは質量に比例する(E=mc^2)という法則を発見したがそれを身体で体感した感じ。その感動は身体を通したもので言語化は出来ない。

何というかスピリチュアルなものって否定したらいけんのよ、全てのものを効率化、数値化することは破滅の道へ誘う事になる。それは恐らく自分の病気とも関連している。

沖縄から帰った後、恐らく客観的に見ると何も変わってないのに全ての事が何処か変化したように感じた。そして今もどこかでそれを感じている。目に見えないものと見えるものの媒介として人間の身体はあり、これからもそれをずっと追求していこうと思う。全ては身体が導いてくれる、それに対しては圧倒的な確信が自分にある。

【第1位】すばらしき世界(2021年)

本当に素晴らしき映画だった。役所広司さんの演技が素晴らし過ぎて。最近思うのは日本映画も捨てたもんじゃないなって思う。
Perfect daysを撮ったヴィムヴェンダースはきっとこの映画を絶対見たのだろう。それほどこの映画はPerfect daysと類似点が多い。大ヒットしたPerfect daysはこの映画のオマージュと言える。

この映画の主人公の三上はPerfect daysの平山と真逆の性格の持ち主だ。平山が4種ならこの三上は7種だ。義理人情に厚く、かっと頭に上りやすく馬鹿正直にしか生きられない。7種って自分にかけられる施しを拒否する傾向にある。

13年ぶりに出所した三上は10犯。その三上を温かく迎えてくれる身元引受人はいるものの世間の風当たりはきつい。この映画を観ながら朝倉未来の「ブレイキングダウン」を思い出していた。こんなにも前科がつく事が生きづらいなら確かにブレイキングダウンも価値があるのかも、と思えてきた。敗者復活戦が少ない世界は落ちぶれると一発逆転を考えがちだ。

女性キャストの存在感が凄い。
まず身元引受人の妻の梶芽衣子。
「三上さんは真っ直ぐ真面目過ぎるんよ。うちらみたいに適当に生きんと」
そうなんよねー。一意専心、万事徹底など日本はtoo controlな言葉が多い。けど確かに人生は適当な方が功を奏する事が多い。力を抜いて力を出すというのもあるしね。
そして長澤まさみ。
ちょっとしか出てないけど三上の喧嘩の場面でカメラを持って逃げ出した津乃田に「撮って伝えるか、止めるかどっちかにしろ」と怒鳴るシーンとか「レールの上に乗っている私達もちっとも幸せじゃない、だからレールを外れた人達を許さない」という言葉は芯を食いすぎていてグサッと来た。

世の中を0か100かで見れないというのは彼の純粋性とも言える。これは小さな子供なら誰もが持っている純真性だ。だが0か100かでしか観れないというのは未成熟とも言える。最後のシーンは辛かったが救いはある。死ぬ時は誰もが1人ぼっちだけどそれでも誰がが思ってくれる人生の方が良い。どんなに生き辛くともこの世は素晴らしき世界なのだから。

【第2位】Past lives(2024年)

後からジワジワと来る映画。監督のインタビューを読んだりDizさんの書評を読んでちょっとこの映画に対する映画の評価が変わった。

Xをやっていると「過去の事なんてゴミ。前向きに生きなきゃ」という5種体癖よりの考えがこの世の中多いように思える。そういった意味ではこの映画はひたすら「後ろ向き」な映画だ。

小学生高学年だった頃に両思いだった初恋の人。成人してお互いの思いがある事が分かりつつも韓国とアメリカの遠距離により離れ離れに。30を超えて落ち着いた頃にようやく束の間の再会をはたすというだけのお話。

身体の関係もなし、キスもなし、付き合ってもいない。そんな良い大人が旦那そっちのけで「私達前世でどうだったのかな」と話す様は人によってはキモく移るはずだ。

「過去は変えられない。変えられるのは未来だけ」と人は言う。だが本当にそうだろうか。
ノラとアーサーの出会いもノラとヘソンの出会いも変えられない。ノラはヘソンと再会する事で自分は韓国人でその精神をベースに持ちながらヘソンの持つ韓国人感性とは違う事を感じる。これももはや変えられない事だ。

彼らが変えたのは過去だった。

子供の頃別れたままであったなら変わらなかった過去の意味合いが再会によって変わった。あの時こうしていたらという後悔はくだらないという人もいるかもしれない。けれどその後悔はこんなにも切なく美しい。

これは紛れもなく愛の物語だ。ヘソンとノラとヘソンとアーサーのイニョン(縁)だ。何年付き合ったかや何回身体を求め合ったかは関係なくどれだけ自分の感情が揺さぶられたかどれだけ他人の心に残るかがその人の人生が決まる。束の間の再会の時間は過ぎ去った数十年とは違い永遠に感じられる時間だろう。

【第3位】カラオケ行こ!(2024年)

ヤクザと中学生の交流という設定がぶっ飛んでる。

綾野剛てガーシーに晒されてたけどなんだかんだ良い役者だなと思った。こういう映画を評価する言葉を持たないがずっと笑って観てられる良い映画だと思う。好き。

【第4位】レッド・ロケット(2021年)

ポルノ俳優でヤリチンの中年男が落ちぶれて金が無くなってテキサスに舞い戻ってくる。

邦画「すばらしき世界」の三上と同様一発逆転を夢見ている男だがマイキーは三上のような真面目さは無く徹頭徹尾口八丁手八丁で軽薄である。それも笑っちゃうくらい。

だが妙に憎めないし「お前はそれでいいわ」という気分になってくる。現実世界で相手したり深入りはしたくないが距離を置いて付き合うとまあまあ楽しい相手ではある。映画の中でマイキーはJKの可愛いストロベリーとヤっちゃう訳だし自分が知っているナンパ師さんでも20歳の可愛い子とかとヤリまくっている人はざらにいる。いわゆる5種体癖が多い。女、金、筋肉が全ての人。

テンポが良い、軽い、明るい、楽しい。この辺りがポイントである種得をする。んでもってストロベリーに恋をしたのかと思いきやポルノ女優としてデビューをさせる所謂女衒みたいな事を企んでるし、自分を慕ってくれるロニーを散々使いっ走りさせた挙句事故ったら自分の世間体を気にして自分は関わってない事にしたり、ロニーが全ての罪を被った事を知り裏でガッツポーズしたクズっぷりはもはや爆笑してしまった。

でも「素晴らしき世界」の三上よりこの男の方が救いがあるように思えてしまうんよ。悲しいね、それが現実。その差は「ユーモア」だと思う。真面目過ぎるってやっぱりタチが悪いんよ。この映画の登場人物のロニーのように。そしてこの監督はこのテキサスの田舎の工場地帯を汚く描いていない。マイキーとストロベリーがデートする工場地帯の景色や芝生は綺麗なんだよな。

【第5位】戦雲(2024年)

今月沖縄にワークショップに参加した。だからこそ今月中に観ておきたかった映画だった。

描き方は雑いかな?と思えるし、沖縄の人達の生の声をそのまま届ける事に余りにも忠実になり過ぎているなとも感じた。

この映画監督の三上智恵さんの国防に対する怒りがあちらこちらに蔓延しており観終わった後かなり疲弊した。podcastで彼女の考えや撮影時の彼女の思考の混乱、疲弊も理解出来たしこの映画はこれで良かったのではないかとも思う。

最初は自衛隊の駐在や基地をつくるだけの筈がなし崩し的にミサイル、弾薬庫の導入。反対の署名を集めれば法律が変わる。大きな組織というのはそれが一見民主主義であったように見えてもそういう風に機能しない。

この令和のSNSの透明性が謳われている時代ですら昔の軍国主義のようなやり方が横行していく。次々と状況が悪化していく中で三上監督もどうまとめていくか迷った筈だ。

三上監督は言う。もし与那国島や宮古島などが奪われて何を失うかを描くのがわかってもらう必要があるので楽しいシーンや沖縄の文化的なシーンも入れたと仰っていた。その意見は大賛成なのだがその沖縄の文化、今日本本土が失いつつある文化を描いているシーンが少なく余りにも自衛隊と地域住民の衝突を描く事に終始しすぎている気がした。

だがそれもこれも三上監督の危機感の表れだったとも思うし焦燥だとも言える。ただ情報としてでも知れただけでも良かったと思う。

日本でそして世界において何故このような事が起こるのか、もうちょっと考察していきたいと思う。

【第6位】マリウポリの21日間(2023年)

2022年2月ロシアはウクライナに侵攻する。侵攻して70日で東部の都市マウリポリは陥落したがその内の20日間を撮ったドキュメンタリーである。

空撃、戦車で民間人どころか産まれたての子供、女性も数万人単位で殺されていく。通信などのライフラインが封鎖されこの世のものとは思えない惨劇が続いていく。それが控えめなナレーションとともに90分惨劇が続く。

ロシアという国の闇は想像以上に大きい。それを今国際情勢ですら制御出来ていない。命からがら撮った映像をロシア側はフェイクだと堂々と主張する。

「何故こんな事に?」その疑問が90分続くのだ。

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