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SUPER BOWL 2024 CM解説!

NFL(ナショナルフットボールリーグ)の優勝決定戦であり、アメリカ最大級のスポーツイベントのスーパーボウル
アメリカだけでなく、世界中で数億人が視聴し、毎年スーパーボウルで放映されるCMやハーフタイムショーのパフォーマンスが注目されています。
特に今年はスーパーボウルにカンザスシティ・チーフス所属のトラビス・ケルシー選手と交際中のテイラー・スウィフトが応援に駆けつけたことで、フットボールファンでない方も優勝の瞬間をSNSで見かけることが多かったのではないでしょうか。
そんなテイラー・スウィフト効果もあり、今年の視聴率は昨年より7.4%上昇の43.5%に達しました。

昨年と比較した性別、年代別の視聴者数(引用元:Sportico)

また、昨年のスーパーボウルに比べると女性とZ世代の視聴者数が増えており、今年のスーパーボウルではビューティーブランドの4社がTVCMに登場しました(Dove / CeraVe / NYC / e.l.f)。
Doveは20年ぶりに登場し、Doveを除いた3社はスーパーボウルでの広告は初。

ということで、今回のブログでは女性やZ世代をターゲットにした今年らしい広告と、BEST & WORST広告をご紹介いたします!


20年ぶりにスーパーボウルに登場したDove

女の子の自己肯定感を高めるためのサポートをしているDoveのSelf Esteem Projectのスポーツ編。
今回Nikeとコラボレーションをしており、Nikeと共に「Body Confident Sport」プログラムを立ち上げてスポーツをする少女たちを応援しています。CMでは、スポーツをする女の子達の45%が見た目を理由に14才でスポーツを続けることを諦めてしまうという統計に基づいて制作されています。
ブロードウェイのアニーの代表曲「It’s the Hard-Knock Life(厳しい人生)」が流れ、最後にコピーで「Knock(失敗すること)ではなく、見た目への自信の低さがスポーツを続けさせなくしているのです。」と伝えています。

Z世代をターゲットにした炭酸飲料のPoppi

砂糖や化学調味料が入っていない健康的なソーダのpoppi。
The Future of Soda is Now(未来のソーダは今ここに)というCMタイトルの通り、ナレーションでもソーダの概念や考え方を変えようとしています。
また、ポップなデザインのパッケージと同様、明るくポップなこのCMは食の健康に対する関心が高いZ世代を対象にしています。
音楽やフォントのデザイン、アニメーションやスクリーンを分割して見せる演出とナレーションは、眩しくフレッシュさ満載で見ていて甘酸っぱい気持ちにさせます。
ソーダの売り上げはアメリカのアマゾンで1位な他、従来の炭酸飲料に比べて健康的な成分で作られていることで、大手飲料企業がpoppiの買収を狙っていると噂もされている現在注目の飲料ブランドです。

ベスト広告(食品):捻りが満載のDUNKIN'

CMに登場した音楽ユニット「The DunKings」
(DUNKIN' 公式サイトより)

スーパーボウルでは有名人が起用したCMが多いですが、特に話題を集め、有名人の起用で成功したのがダンキン・ドーナツ。
昨年は俳優ベン・アフレックと歌手ジェニファー・ロペス夫妻を起用し、話題になりましたが、今年は俳優マット・ディモン、元NFLスター選手、トム・ブレイディの他、Z世代に人気の歌手ジャック・ハーロウが登場しました。
出演者が豪華な事でも話題ですが、ダンキンのCMは随所に細かいネタが含まれている点が面白さの鍵となっています。

2023年 DUNKIN'広告:ベン・アフレック起用の背景とCM解説

2023年 DUNKIN'広告

パパラッチに撮影された写真で、ダンキンのコーヒーを持っていることが多く、時には大量に買っていたり、派手に落としたりなど、その姿が面白く、SNSで話題になったことがきっかけで、ベン・アフレックは2023年にダンキンの公式ブランドアンバサダーに任命されました。
2023年のダンキンのCMでは子供の頃に住んでいたメッドフォードで強いボストン訛りの英語でダンキンの店員として働き、ドライブスルーで訪れた人たちを驚かせるドッキリCMになっています(最後には妻のジェニファーロペスが登場)。

2024年 DUNKIN'広告:CM解説

2023年はジェニファー・ロペスがベン・アフレックの職場に遭遇するストーリーでしたが、2024年は同じくボストン出身で親友の俳優マット・ディモンと元NFLスター選手トム・ブレイディと「The DunKings(ダンキングス)」というユニットを組み、ジェニファー・ロペスの現場(レコーディングスタジオ)に一緒に乱入し、ボストン訛りのラップを披露します。
ダンキンのCMで面白い点は、実際にベン・アフレックがSNSでイジられたことをネタとしてCMに取り入れていることです。
今回は昨年のグラミー賞で妻ジェニファー・ロペスと一緒に出席した際、退屈にしている表情がカメラに映り、SNSで話題になった事をネタにしています。

その他仕掛け

YouTubeやインスタグラムで公開されている約4分20秒のエクステンデッドバージョンでは、TikTokで1.5 億人以上フォロワーを持つTikTokスターチャーリー・ダミリオが登場したり、セリフの中で妻ジェニファー・ロペスの新しいアルバムのタイトル名が引用されるなど、アメリカのカルチャーや芸能情報に詳しい人にとっては楽しめる要素が盛り込まれています。
また、CMで登場したThe DunKings(ダンキングス)にちなんだ期間限定メニューやThe DunKingsのグッズがShopDunkin.comにて限定販売されるなど、さまざまな仕掛けが施されています。

オフィシャルサイトより
オフィシャルサイトより

ベスト広告(テック):アクセシビリティにフォーカスしたGoogle

CMの内容

今年のGoogleのCMでは視覚障害者の写真撮影を支援するグーグルのAI技術「Guided Frame」に焦点を当てています。
視覚障害を持つハビエルの生活をGoogleのAIの音声ガイドを使って撮影し、監督のアダム・モース氏もまた盲目であり、このCMでは視聴者に視覚障害者の視点や生活を伝えています。
CMの前半では恋人との日常が描かれ、Google Pixelで撮影する際、音声ガイドが「Two faces in frame 」と言い、カメラのフレームに収まっている人数が二人でしたが、最後は子供が生まれ「Three faces in frame」で終わり、心温まるCMになっています。
このCMは、テクノロジーで人々の生活を良くするというGoogleのミッションを効果的に伝えていて様々なメディアでベスト広告に選ばれていました。

ベスト広告(ビューティー):CeraVe

皮膚科医と共同開発された低価格帯で肌への刺激も少ないことからZ世代に人気のスキンケアブランドのCeraVe。
スーパーボウルに初めて広告を出し、俳優のマイケル・セラを起用し、名字のセラとブランド名のCeraVeとかけていることで、視聴者に印象付けさせブランド認知度に繋げています。
CeraVeは薬局で販売しているブランドですが、あえてプレステージブランドの広告風にしていることでユーモアなCMに仕上げています。
CM以外にSNSでマイケル・セラが薬局で勝手にCeraVeの商品に手書きでMichaelと書いたり、街角でCeraveを配ったり、インフルエンサーにMichaelと書いたCeraveをPRグッズで送っている様子をTikTokインスタグラムで紹介され、話題にもなりました。

ワースト広告:色々もったいなかったSquarespace

Squarespace*はマーティン・スコセッシ監督を起用。

※ニューヨークに拠点を置くウェブサイト構築とホスティングサービスとしてソフトウェアを提供している会社。ウェブサイトやECサイト作成ではデザイン性に優れたテンプレートが多く人気があります。

Squarespace CM内容

UFOが出現するが、スマホ、パソコン、タブレットなどに囲まれた現代社会ではUFOの存在に誰も気づいていない。そこで宇宙人たちはHello Down There(下界にいるみんなこんにちは)というウェブサイトを作り、人間たちのスクリーンをジャックし、スクリーンにばかり目線がいっていた人たちが空を見上げ、雲の上にいる宇宙人の存在をようやく気づく・・・。

このCMでは、監督にマーティン・スコセッシを起用し、本人も登場することで話題を集めました。
しかし、AdAgeやCBCなどのBEST& WORST広告ランキングでは、「商品の説明や紹介がなく、何の広告かわかりにくい」という理由で低いランクインに終わりました。
スーパーボウルのCMでは有名人の起用が話題を呼びますが、有名人を起用する際、企業またはブランドとの関連性や接点が重要になります。
Squarespaceの場合は、ニューヨークに本社を置き、ニューヨークのアイコン的な存在でもあるスコセッシ監督を起用し、ニューヨークをメイン舞台にしています。映像は綺麗で素敵に感じましたが、少し難易度が高いCMになってしまったようです。。。。

Squarespace

他に、SquarespaceのウェブサイトではCMで登場するHello Down Thereの特設サイトがあります。
特設サイトには特別映像もあり、スコセッシ監督がCMの企画やWebサイト作成に関して、Z世代の娘に相談していて私は個人的には面白いと感じました。
CM自体の内容は少し分かりづらかったですが、深掘りすればするほど、面白さがわかり、もっと上手にアピールできたら良かったかなと感じます。

紹介は以上になります!
いかがでしたでしょうか。
スーパーボウルは世界一高いTV広告枠と言われていますが、放映されたCMだけでなく、特典映像、TV CMと関連付けさせたSNS投稿やキャンペーンなども展開しているブランドも多く、CMをご覧になられた方も今回のブログで発見があったら嬉しいです。

執筆:高嶋