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臨月妊婦、コロナワクチンを打つことにした。

 コロナウイルスが猛威を奮っている。特に8月に入ってからは、ほとんど外出もしていない。
 8月下旬、とても悲しい事例が起こった。コロナウイルスに感染し自宅療養中だった妊婦さんが早産となり、その赤ちゃんが亡くなってしまった。他人事とは思えない出来事だった。その出来事が起こった時、私はちょうど臨月に入るところであった。
「あと少し、頑張ろうね」
自分のお腹の中にいる人に声を掛けた。

 8月に入り、ようやく私たちもワクチン接種の予約をすることができるようになった。しかし、私にとっては、何といっても難しい時期であった。いつ産気づくかもわからない時期に副反応などのリスクもあるワクチンを接種することにどうしても前向きになれなかったのだ。
ーお腹の子が無事に産まれて、私の体力も戻ってくる頃に予約をとって、接種をしよう。
 しかし、先に述べた悲しい事例を受けて、グラグラした気持ちになった。
ー副反応も怖いは怖いけど、本当に怖いのは感染して重症化することだ。どうにか今からワクチンを打てないだろうか…。
 ちょうどそう考えていた時、産院の先生から、ワクチン接種の案内を受けた。先生は、ワクチンの成分自体は胎盤を通らないので胎児に影響はないということ、母体でつくられた抗体は胎児にも移行するということ、さらに抗体は母乳にも移行するということを教えてくれた。産前に2回目接種が終わらなくても特に問題はないことも教えてくれた。
 私はコロナワクチン接種を受けることにした。本当は、もっと早く受けられていれば、赤ちゃんにもっとしっかり抗体をプレゼントしてあげることができたかもしれないが、少しでもできることをしようと思った。産院の事務さんも1回目接種は臨月、2回目接種は産後すぐということで、副反応などできつくなるのでは、とても心配だと話してくれたが、接種を受けるリスクと受けないリスクを比べてみると、私の場合はやはり受けないリスクの方が大きいのではないかと考えた。

 そして先日、1回目接種を終えた。幸いにも、腕が少し痛くなっただけで、その痛みも2日かからず消えていった。産後すぐに待ち受けている2回目接種に少し不安は残るが、まずは赤ちゃんがお腹の中にいるこの奇跡のような時間をゆっくりと十分に味わい尽くしたい。そして、赤ちゃんが出てくるまでの残された時間で、出来るだけたくさんの抗体をつくって赤ちゃんにプレゼントできるといいな…などと、考えている。

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