マイルCS・考察

前回の結果
◎マリアエレーナ
〇サリエラ
▲ジェラルディーナ
→はずれ


マイルCS・前提

菊花賞、エリザベス女王杯に続いて秋GⅠ3回目の京都外回り。ポイントはやはり3コーナー前後の起伏で、マイル重賞としては珍しく中緩み・後半戦勝負のラップ構成になることが多い。一定のペースで速い時計で走り切ることが武器のスプリンター寄りのマイラーは苦戦しやすく、溜めて末脚を伸ばせる中距離寄りの馬が好走しやすい舞台。

前者の代表例はアエロリットで、得意のワンペース型を作れた19年の安田記念ではあのアーモンドアイを抑えて2着に来れる強い馬だったが、マイルCSでは12秒台に中緩みしたラップからの後半勝負で伸び負け馬券外に敗れている。
後者の代表例はペルシアンナイト。皐月賞2着の中距離馬で、3歳でマイルCS優勝。その後安田記念では3年連続凡走、対してマイルCSでは3年連続馬券内と極端な適性を見せた。
ゴリゴリのスプリント寄りマイラーでマイルCSを勝ったミッキーアイルもいるが、こちらは逃げて自分から11秒台のワンペース型ラップを作っていった。マイラーとしての能力の高さもあるが、ワンペース型の馬は自分で得意なペースを作る形に持ち込みたい。

京都外回りだが、菊花賞やエリザベス女王杯ほど上り最速馬が馬券に絡まない点は注意が必要。中緩み、かつ直線平坦で前目からそこそこの上りを使われると後ろから物理的に届かないケースも出てくるため、絶対的な上りの速さだけでなくポジション取りの能力も含めて考えたい。

各馬考察

セリフォス

昨年のマイルCS覇者で、今年の安田記念2着馬。新馬戦以外全て重賞を走り未だに掲示板を一度も外していない強い馬。
安田記念ではウインカーネリアンが引っ張るタイト目なペースを番手集団で先行し、ソングラインには差されたもののシュネルマイスターを凌いで2着。ソダシの7着を筆頭に前が崩れる展開と当時の外差し馬場を加味するとかなり強い競馬をしていて、外差し馬場で追い込んできたシュネルマイスターより高い評価をつけたい内容。
また、昨年のマイルCSでは内の馬がややごちゃつく所があったものの外から一頭違う脚を使って差し切り。中間11.9sの区間が出るほど緩んだ中でしっかり足を溜め末脚を伸ばし切った。

前提で書いた通り、ワンペース型で流れる安田記念と中緩みで脚が溜まるマイルCSでは求められるベクトルが違い両方に適用できる馬は相当能力の高い馬。昨年のマイルCSは阪神開催だったが、中が緩む流れだったため京都開催とベクトルは近く、セリフォスも両対応の馬として高く評価したい。

マイルCSにおいてはタメを利かす競馬の方がいいので、休み明けだと前進気勢が立って掛かり気味に行ってしまう面があるところだけが心配点ではあるものの、能力は文句のつけようなく1着候補。

シュネルマイスター

現役マイラー屈指の末脚を持ちながら取りこぼしが多くなかなかGⅠを勝ちきれない馬。
ソングラインと僅差のレースを何度も繰り広げている通り能力はマイルGⅠレベルなのだが、エンジンのかかりが遅くスパッと切れない上ポジションも取れないのでできる競馬が限定的になってしまい取りこぼしが発生している。
毎日王冠で一頭抜けた脚を使った(これもこぼして3着なのだが)ように中緩み型の方が良く、追走が楽になる京都1600mもプラス。ただし改装後の京都外回りは大外をぶん回して頭まで突き抜けられるコースではなく…
能力自体は当然メンバー最上位も、頭までイメージしにくい(のにいつも単勝はちゃんと売れる)ので、買っても2着まで。
(頭の馬券がよっぽど甘かったら考えなおします)

ソウルラッシュ

GⅡ、GⅢでは馬券になるものの、過去3度マイルGⅠに挑戦し3回とも馬券外に敗れている。馬券内に最も近づいたのは去年のマイルCSだが、セリフォスやダノンザキッドには純粋に力負けといえる内容。

前走京成杯AHでグラニットが引っ張る前がかりのレースを先行し、59kg背負って勝ち切ったのは好内容。速い流れで位置を取れるようになったのは収穫で、末脚強力なセリフォス・シュネルマイスターとやりあうには前で粘りこむ形か。
力はあるものの最上位相手に逆転できる根拠はあまり見出せず、3着候補まで。

ナミュール

GIに出走すると悉く不利を受ける可哀そうな馬。古馬マイルでまともに出し切ったレースが東京新聞杯と富士Sしかないのでこの2つから古馬との力関係を紐解くと

東京新聞杯:単騎・ワンペースラップ逃げの形に持ち込めたウインカーネリアンは絶好で、勝ちこそできなかったもののタイム差なし2着は立派。ただ、ウインカーネリアンはGⅠで壁がある馬なので、安田記念やマイルCSを狙うのであれば勝ち切りたかった(VMなら通用する水準)
富士S:異次元のペースで引っ張ったダノンタッチダウンのおかげで前がつぶれ、差し馬台頭。スプリント寄りの流れになって浮上したレッドモンレーヴに着差をつけて快勝。

レッドモンレーヴ(安田記念7着)を目安にすると、得意なレース展開で不利なく走れれば掲示板より上に来れるだけの力はある、くらいのイメージだろうか。勝ちまで考えるとやや足りない。

東京新聞杯、富士Sがどちらも前傾ラップだったように、基本的にはワンペースでこそのマイラーで、中緩みする京都がいいイメージはあまり。だいぶマシになってきたとはいえゲートの出に難もあるので、今回無事好走できる確率は高くないように思える。いつも人気するタイプということもあり、入れても3着候補まで。

エルトンバローズ

恵まれたか実力か論争で盛り上がりそうな馬。
ラジオNIKKEI賞はコース形態的にもTB的にもイン前の残しやすい条件で、グラニットからやや離れて3番手を先行し最後にチョイ差しした形で、ほぼ同じ位置で競馬をしたシルトホルンと大きな差はないレースだった。
シルトホルンやバルサムノートのその後の戦績から見ても、ラジオNIKKEI賞の内容だけでは古馬マイルGⅠで通用するとは言いにくい。

続く毎日王冠で最大出力値を更新。ペースはウインカーネリアンがワンペースで引っ張り極端に前有利のスローではないペース。これを番手集団で追走して直線抜け出し、ソングライン・シュネルマイスターをしのいで勝ち切った。
このレースの評価ポイントとしては以下3点。
・東京新聞杯、安田記念と逃げれば一定のパフォーマンスを叩くウインカーネリアンを着差を付けて完封→東京新聞杯勝ち、安田記念掲示板以上が見えるパフォーマンス
・ソングライン相手に勝ち→57kg(牡馬換算59kg)を背負ったとはいえレース自体は大きなロスなく(直線やや追い出しを待たされるくらい)力は発揮している。順当に評価できる
・シュネルマイスター相手に勝ち→シュネルマイスターが進路を大外に持ち出すロスあり。ただし、加速に時間のかかるシュネルの特性上切り替えたのはまだTSに移る前であり、減速する動作もなし。致命的な不利ではなく、こちらも順当に評価できる。

対シュネルマイスター比で斤量差が3kgから1kgに縮まるものの、ソングライン・シュネルマイスター相手に勝ち切った力は最大限評価すべき。2走連続1800mからの短縮臨戦なのも良い。1着候補に。

レッドモンレーヴ

1400mの京王杯SC勝ちがあり、ハイペーススプリント質のレースとなった富士Sで2着と、ワンペース型で力を発揮するタイプのマイラー。
前提で書いた通り中緩み質のマイルCSに向くタイプではないし、仮に凄く引っ張る馬がいてタイトなレースになったとしても、そのレース質だとナミュール相手に完敗しているので、どうやっても勝つイメージがつかめず。現状無印。

ソーヴァリアント

元々中距離路線を走っていた馬が富士Sからマイルへ路線変更。
前即崩れの中前目で粘ったセントライト記念は好内容だったし、2連覇したチャレンジカップではヒートオンビート(1回目)、エヒト・ルビーカサブランカ(2回目)らハンデ重賞クラスの馬に着差をつけて完勝しており、別定GⅡより上でも通用しそうな勝ちっぷりだった。
一方で中山記念、鳴尾記念の負け方が不可解で、チャレンジCよりメンバーレベルは上がっているもののあまりにも無抵抗に敗れているため、力負けか不発か判断がつかない。
札幌記念も重たい馬場への適性差が大きく出たレースで、ダノンベルーガやジャックドールに先着できたことはプラスも評価材料にはしにくい。
出力にムラがあるものの、最大では中距離の別定GⅡより上でも通用しそうな馬、と(やや強引に)位置付けておく。

中距離馬ながら、前走富士Sのスプリント寄りの流れに一発対応したことは高評価。さすがに位置取りこそ中距離時代より後ろになったものの、最後はきちんと差し脚を使っておりマイルへ対応する下地は十分。

ペースが緩みがちな京都マイルCSで追走も楽になり、富士Sより一も取れる。最大出力の「中距離の別定GⅡより上でも通用しそうな馬」レベルでトップマイラーに勝ち切れるかは未知だが、1着候補に置いておきたい。

ジャスティンカフェ

マイル重賞のペースだと毎回位置取りが最後方になるので、上り能力は高いものの上り上位届かずのレースを繰り返している。
これまでのレースの中で、ウインカーネリアン(マイル路線の物差し)を2度捉え損ねていて、安田記念上位組やエルトンバローズとは1枚壁がありそう。
昨年の毎日王冠2着、今年のエプソムC1着がある通り、マイルは短く1800mベストの馬。中緩み質の京都マイルCS自体は安田記念などより向く舞台ではあるが、大外をぶん回して届くコースではないしこの馬も使える脚は短いので持って来るには相当工夫が必要そう。今までやったことない競馬をしないと浮上できなさそうで、GⅠの舞台で買えるかと言われると微妙。現状無印

エエヤン

3歳春までに古馬重賞級のパフォーマンスは見せておらず、秋になって毎日王冠でも特段のパフォーマンスはなし。流石にこのメンバーだと出番はなさそう。無印。

イルーシヴパンサー

1年前の東京新聞杯ではファインルージュに着差をつけて完勝、高いパフォーマンスを見せたものの、そこから打点の更新がない。
東京新聞杯以後の唯一の勝ち鞍は京都金杯だが、コース形態的にインの強い中京でのインベタで、内容的にもそこまで。
東京新聞杯のパフォーマンスだとあってもソダシ(=VM級、混合マイルでは3着まで)級で、以後目立ったレースもなくさすがに買えない。無印。

マテンロウオリオン

NHKマイル2着も、前にきつい流れで粘ったセリフォスが強く、追い込んできたマテンロウオリオン(およびダノンスコーピオン)はごっちゃんゴールだった。その後の活躍を見ても、GⅠで戦いながら一度も掲示板を外していないセリフォスと、馬券外が続く本馬とでは差が大きく…さすがに買えない。

ダノンザキッド

やや捉えどころのない馬だが、自分の持てる精一杯のパフォをほぼ毎回ちゃんと叩いている偉い馬。中山でだけ不可解な惨敗をする。

個別のレースを振り返っていくと、
宝塚記念:13着も、そもそものレースレベルが超高で、内を通ったボッケリーニ、プラダリア、ライラックなどは次走巻き返している。2200も少し長い。
大阪杯:イン前有利の流れを上手く先行しジャックドールとタイム差なし3着。自分のペースを刻めた2000mのジャックドールとほぼ同等のパフォーマンス。
中山記念:不可解な惨敗。手応えが悪すぎる
マイルCS(22年):混雑する馬群の中を割ってきて2着。セリフォスとは着差をつけられたが、外差し馬場に乗ってスムーズに運べた分の差が大きく、着差ほどは負けていない。
といった感じで、常にマイルGⅠ勝ち負けないし中距離重賞で戦えるだけの力は発揮し続けている。今回のメンバーでも力は最上位に位置付けるべき一頭。

高速上りの決着よりも上りのかかるパワー勝負向き、小回りより大箱向き、中距離好走実績あり、と京都マイルCSに向く要素も揃っており、1着候補で考えたい。
(余談)人気がない時にとりあえず押さえておけばいい馬であることは知られてしまっているので、連系の紐だとあまりおいしくないかもしれない。

ビーアストニッシド

流石に買えない。

セルバーグ

中京記念では後続突き放す強そうな勝ちっぷりだったが、もともと逃げ馬(というか内ラチ沿いの馬)がとても残りやすい中京で、番手以下に絡まれず単騎で気持ちよく行けた内容。2~4着に入ったディヴィーナ、ウイングレイテスト、ルージュスティリアはいずれも外を大きめに回してきており、着差がつくのも納得のレース。

続く関屋記念ではなかなかハナを奪えないまま3コーナーの入り口までもつれてしまい脚が溜められなかった。言い訳のきくレースではあったが抜けて速いテンスピのない逃げ馬の脆さも見せたレース。

中京記念の一戦だけでトップマイラーに匹敵しうるパフォーマンスを見せたとは思えず…現状無印。

ダノンスコーピオン

概ねマテンロウオリオンに同じ。買えない。

バスラットレオン

JBCから驚異の中1週参戦。頑張って欲しいが流石に買えない。

暫定印・枠順前

◎セリフォス、エルトンバローズ、ソーヴァリアント、ダノンザキッド
〇シュネルマイスター
△ソウルラッシュ、ナミュール

前日馬場・京都芝

金曜から土曜の朝にかけて雨が降り、12Rの段階で稍重の開催になったが、勝ち時計は内回り・外回りともにクラス水準レベル。ただし日曜日は終日晴れ予報のため、先週とは異なり良馬場まで回復しそう。時計もやや速いくらいの出方になるか。

今週からCコース替わりで見た目上は内ラチ沿いの傷みは概ねカバーされていそうだが、レースで見ると直線の伸びはやや外伸び寄り。マイルCSと同じコースだった12Rでは2番手につけて直線先頭に抜けたテンノメッセージ・坂井騎手が選択的に外目に持ち出しており、騎手の意識も外だろう。

ただし、メインのアンドロメダSでは(内回りではあるが)外を回したディープモンスター・ヤマニンサンパと内ラチ沿いを突いたマイネルクリソーラが揃って馬券内に来ており、そこまで顕著なバイアスではないかもしれない。
明日、馬場が乾いてより速い上りが使えるようになると、外伸び傾向が顕著になる可能性があり直前まで確認は必要。

展開

逃げ候補一番手はセルバーグだが、テンスピが抜けて速いわけではないため逃げ予想は難しめ。
想定逃げ馬は以下。
セルバーグ:中京記念を逃げて勝っており、控えて良さの出るタイプでもないので逃げ必須。テンスピはそこそこで、逃げ型はワンペース逃げ。
バスラットレオン:ダ1200からの臨戦で、ひさびさの芝さえこなせればテンスピ恐らく一番手。こちらも逃げてこそなのでスタート決まればハナ取りに行くはず。逃げ型はワンペース逃げ。
イルーシヴパンサー:逃げたことはないが、前走テンスピはそこそこ。セルバーグ、バスラットレオンより外なので様子を見ながらの位置取りになると思うが、両馬がもしいかなければ。逃げ型は不明。
ビーアストニッシド:逃げ候補大穴。他逃げ候補が外枠のため、内からガンガン主張すれば京都1600mの長い向こう正面を生かして逃げること自体は不可能ではない。前へ行ってしぶとさで勝負する馬なので一発やってくれても。逃げ型は恐らく溜め逃げだが、緩めると外枠の逃げ候補に捲られるか。上り坂で上手く緩めたい。

以上から、最も確率が高そうな想定逃げ馬はバスラットレオン。ただし、セルバーグが逃げた場合もタイプは近いのでペース自体は変わら無さそう。
逃げ候補が3頭外枠かつ隣枠に並び、さらに内枠に抵抗しそうな馬が一頭いるため、ペースはそれなりに上がりそうで、隊列は縦長を想定。
逃げはしないが素のテンスピで前目につけそうな馬も多く、京都1600mの長い3角までの直線も相まって隊列はすんなり決まらない可能性が高い。

想定隊列:S直後
       ⑯
   ⑫ ⑧ ⑦ ⑪ ⑮
 ⑤  ⑨  ⑥ ⑩ ⑬
  ③   ① ④ ②  ⑭

想定隊列:3角入り
   ⑧ ⑦ ⑯ ⑪ ⑮
⑫ ⑨     ⑥ ⑩  ⑬
⑤③      ①④ ②   ⑭

外差しの傾向に振れつつある京都だが、外回りは先週のエリ女でも見せつけられた通り大外分回しは届かない。
外目の前目~中団前あたりにつけ、そこそこの上りでまとめるタイプが恵まれそう。

暫定印:前日

◎セリフォス
〇エルトンバローズ
▲ダノンザキッド
△ソーヴァリアント

本命はセリフォス。能力最上位と評価した馬だが、隊列を想定してみると外目の好位グループと一番いいところに収まりそうで、縦のポジション意識の高い川田騎手がそこを逃すはずもなし。
夏負けで予定していた前哨戦をパスしたとの情報からか、前年王者にも関わらず2番人気にとどまっており順当にここから。

対抗はエルトンバローズ。
本命まで考えた馬だが、短縮臨戦の上GⅠマイラーに入るとテンスピはそこまでで、内目の枠が逆に災いして本当に取りたい所を取れない可能性がある。一段下げ対抗評価。

▲ダノンザキッドは、単純に勝ち切るタイプではないので相手候補として。
△ソーヴァリアントはもう少しタフ寄りの馬場の方が良かった。

どこまで拾うか含め買い目は検討中。

枠順確定後、前日に追記します。
最終的な買い目はTwitterにて。

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