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大谷翔平選手の7億ドル契約について、贅沢税への影響を考えてみた

大谷翔平選手がLos Angeles Dodgersと新しい契約を締結したと自身のInstagramに投稿し、全世界に衝撃が走った。

驚くべきはその金額でMLB史上最高額の契約であり、一部の報道によると全世界のスポーツ選手の中でも契約総額としては最高額とのことである。

出典:FOX sports

この契約を初めに見たときに率直に思うのが、
「え、Dodgersって贅沢税大丈夫?」
「大谷選手の年俸ネックで、他の選手の補強ができないんじゃないの?」

といったところでしょうか。

今回はややこしい贅沢税の定義を確認した上で、今判明している情報からDodgersがどのようにして、このような巨額契約を結べたのかを考えていきます。


1.贅沢税基準の年俸とは?

まずは贅沢税基準の年俸を理解するところから始めていきたいと思います。
ESPNのJeff Passan記者は今朝下記のようにPostしています。

注目すべきは下記部分で、

The deferrals also affect the net present value of the deal. There’s a rule of thumb across all walks of life: Money today is more valuable than money tomorrow, inflation being what it is. When you defer money, you’re taking less. The Dodgers are operating in an environment in which the prime rate is 8.5%.

Xより

まとめると、下記になりますでしょうか。

  • 契約金が繰延されると、贅沢税が割引される。

  • 大谷選手の契約金額の大部分は繰延されており、現在価値に直すと大幅な値引きとなる可能性がある。

  • 贅沢税基準年俸は最終的に年間4,000万〜5,000万ドルの範囲になる可能性が高い。

つまり、贅沢税基準の年俸とは総年俸の単純割り算ではなく、繰延分は現在価値に割り引いて計算されるようです。

2.割引後の現在価値とは?

このことを正しく理解するためには、Cashの将来価値(≒現在価値)について正しく理解する必要があります。
例えば、年利8%の世界においては、今日の100万円と1年後の100万円の価値は違います。

  • 今日の100万円→1年後の108万円(100万*1.08)※将来価値の算出

  • 1年後の100万円→今日の92.6万円(100万円/1.08)※現在価値に割引

これが10年のスパンで複利計算すると、価値の差は更に大きくなります。

  • 今日の1億ドル→10年後の約2億ドル(1億ドル*1.08の10乗)

  • 10年後の1億ドル→今日の約0.46億ドル(1億ドル/1.08の10乗)

現在価値への割引にあたっては、現価係数表を使用します。
詳しくは下記サイトの現価係数表を参考にしてみてください。
現在価値に割引くためにいくら掛算すべきかまとまっています。

まあ感覚的に理解するのであれば、
年利8%の世界で10年複利は現在価値の倍のキャッシュになり得るので、
「10年後に7億ドル受け取る」=「今日3.5億ドル受け取る」
と大体理解して頂けたらと思います。

3.大谷翔平選手の7億ドル契約はLA DodgersのPayrollにどのような影響をもたらすか

さて、贅沢税基準の年俸額は現在価値に割り引いて計算されるという情報と大谷選手は7億ドルの大部分を10年後以降に受け取るという報道が現地記者からされています。
※この辺りは今後正確な情報が出てくると思いますので、現時点では仮説で計算を進めていくしかありません。

仮に、

  • 2億ドルを10年で分割して毎年0.2億ドルずつ受け取る(2024-2033)

  • 5億ドルをその後、5年で分割して毎年1億ドル受け取る(2034-2038)

という契約の場合、大谷選手の贅沢税基準の年俸額は下記になると予想されます。

※ベースsalaryは割り引かれないと仮定

つまり契約全体の現在価値3.82億ドルを10年で割った値である3,820万ドルほどが大谷選手の贅沢税基準年俸となり、Dodgersの贅沢税基準年俸に加算されるのではないかと考えます。

4.まとめ

今回は現在判明している情報を基に、仮数値をおいて計算しましたが、これから契約詳細がわかってくると思います。
それによって、実際にはどの程度Dodgersが単年あたりの贅沢税を負担するかが判明してくるので続報を待ちたいと思います。

以上、わかりにくい部分もあるかと思いますが、取り急ぎの筆者の解釈を基にした契約解説でした。




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