#弓道013 弓道人の日常の心掛け
鴨川乃武幸(範士十段 全日本弓道連盟会長などを歴任)が弓道誌の2000年9・10月号に寄稿した「弓道人の日常の心掛け」。
私も初段審査の前に先輩に印刷したものを頂きました。ただでさえハイコンテクストな弓道界隈においては、常識では割り切れない細かなマナーが沢山あるように思うので、そういったものを野暮と言わずに明文化したのは、とてもありがたいことだと思います。
なお、多数のwebサイトで同様の情報が掲載されているが、いずれも内容が若干異なり、私の手元にあるものも原書の写しではなく、結局原書を当たることが出来なかったので、以下のサイトからの引用となります。
https://www.i-kyudo.com/kyudojyo2.html
1.道場外で
混雑するところでの移動は、弓を立てて持ち、肩に担いでは歩かない。
弓弦を持ち弓をブラ下げた格好で歩かない。
弓具は直射日光に晒さない。
暑いとき、ビニール製などの弓袋は使用しない。
弓は、中袋を使用して保護し、大切に扱う。
乗用車に弓を乗せる時は、本弭を運転席の方にいれる。
車の中に弓は放置しない。
電車・車などには、弦を張ったまま持ち込まない。
2.道場の出入りで
道場で履物を脱ぐときは、入船に脱ぎ、式台で出船にするか、下足棚がある場合は必ず棚に収納する。
道場に入る時は、オーバー・コートなどを脱いでから入る。防寒具を身に着けたまま神拝などしない。
3.道場内で
神棚に神拝を行い、また国旗があれば拝礼し、何もない場合でも床の間(上座)に向かい一礼した後に先生や先輩に挨拶をする。
学校の体育系クラブのように人の名を呼び捨てにせず、同僚といえども道場内では人の名には敬称をつけて呼ぶ。
一段高くなっている審判席(畳)に腰かけることは避ける。
道場内で喫煙は絶対にしない。
弓を引く時は、指輪・ピアスなどの装身具はつけない。
道場内でみだりに声高に談笑せず、規律を守るように心掛ける。
道場内で立て膝はしない。体操座りもしない方がよい。
部屋の出入りの際、敷居には乗らない。また、畳の縁(へり)を歩いたり、縁に座ったりしない方がよい。
的に載せた賞品を貰う時は、軽く的に触れ、感謝の意を表し、賞品をいただく。
4.弓具の取り扱い
(1) 弓・弦
挨拶が終わったら、先ず弓に弦を張り、弓の姿を整えた後、胴着を装着する。
弓に弦を張る手助けをする場合は、足を踏ん張り、肩に両手で末弭を持ち、姫反りに手をかけて力で弓を押さえつけることがないようにする。
弦かけ板などの無いところでは、弓袋などを重ねてその上に弭をあて、壁などに傷をつけないように注意する。
弦の伸び・掛かり具合・入木弓・出木弓などに注意する。
弓に弦を張って弦の掛かりを修正する時、足で下成りの辺りを押えて矯正することをよくするが、大切な弓なので、足をかけたところはすぐぬぐうように心掛けたい。
弦が毛羽立っているのは、手入れが不十分の証拠である。マグスネをかける。
弓は、矢摺り籐・握り皮・弦以外のところは握らない。
弦巻は、弦を張った弓に差し込んではいけない。また、弓と弦の間に「弓掛け(かけ)」を挟んだりしない。
他人の弓にはみだりに触らず、弓の肩入れなど決してしない。
審査・試合で弦切れなどにより進行係が替弦を張り替えた時、決して肩入れはしない。
弓具店で弓の買入れをする場合は、店主の許しを得るのは勿論、自分の矢束までは引かず、右肩先(耳を越えるあたり)までとする。
弓に弦を張ったまま長期間置く時は、張り弦を二本かける。
弓を床に寝かせて置いたり、置いてある弓をまたいだりは、決してしない。
(2)矢
矢は、行射の時に使う順序を決めておくと、矢の癖がわかり、修理・手直しに便利である。
矢をあげる時は、外れた矢から先に、中り矢も的心より遠い矢からあげる。
的枠に矢が射立ち、または射抜き、あるいは的の合わせ目に入った時は、両膝で的枠を押え、両手で矢の根元の方を握り、手で引かず、腰を伸ばすようにして抜く。
的から抜いた矢は、矢羽がわを上にして上座に向け、矢の根を下にして手のひらで受けて、道場に持ち帰る。
矢取りはなるべく、師範の先生以外の下位の人が交替で行ったほうがよい。
(3)弓掛け(カケ)
他人のカケを差したり、弦受け(弦枕)などをみだりに触ったりしない。
道場内でのカケの着脱は(上座の方向を避け)下座に向かい、正座または跪坐して行う。
(4)的
的の懸かり具合を道場から指示する時は、跪坐して行った方がよい。
(5)その他
カケ・襷・弦すべり(胸当て)をしたまま矢取りをしたり、その他いろいろなことをしない。
5.行射
公設の道場で、催物前(ものまえ)などの四つ矢を持って、また団体で射込み練習をしている人達を見かけるが、稽古をする他の人達に失礼になるので遠慮すべきであろう。
自分の所属する以外の道場に遠征した時は、決して四つ矢を引かず、一手(2本)とすること。
射込みは、決してしない。特に、師と同じ的には立たない。
「何本うった」などの表現は使わない。「何本引いた」「何射した」などと言う。
6.指導を受ける
講習会などで指導を受ける時に、反論・言い訳は慎む。
7.指導する
人に教えたがる者が多いが、みだりに人の教えたがらないこと。特に、上位者がおられるときは慎み、上位者の指示に従う。
8.見取り稽古
上位者の矢乗りを見ることはしない。但し、依頼された場合は別である。
師範(自分の師や範士クラス)の行射を拝見する時は、必ず坐して拝見する。この時、正面からは拝見しない。但し、特に許しがあれば、立ってでも正面からでもよい。
9.心掛けとして、特に・・・
「稽古を晴れにするぞとたしなみて 晴れを常の心なるべし」
弓は心で引くものである。会で心にゆとりがもてるようになりたいものである。
稽古は基本を重視し、的中のみを考えた手技(てわざ)に偏らず、心技を一体として修練することを忘却しないように心掛けたい。
以上、先師からや先輩の方々から教わってきたことなど、後輩の皆さんにお伝えしたいと思って記録 しました。聞き捨てにしないで、こころに留め置いて下さい。また、次の世代へも伝えていって欲しいもの と思います。
全日本弓道連盟会長 範士十段 鴨川乃武幸(2009年)
最後まで読んでくれてありがとうございます。
今後も弓道に関することを記事にしていきたいと思います。
リアクションしていただけると嬉しいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?