田舎者、バーに行く

日帰り出張が終わる。会社に連絡をし、直帰する旨を伝える。
しかしそのまま帰るのも味気ない。
少し散策をしようと、駐車場を素通りしたところで見つける。
KANAYAMA80’s
地下へ続く階段でひっそりと佇んでいるそこに、入る。
思えば物怖じもしなくなったモノだ。

ドアを開くと、何とも色気を含んだ女性が申し訳なさそうに
「すみませんね、今日は貸し切りの予約が…」と言われた。
それは申し訳ないことをした。踵を返そうとすると、
「なので19時半まででお願いします」とのことだった。
時刻は18時。車で来ているので長居をする気はない。
ぼくはコーヒーを頼み、席に座る。


店内。沢山の銘柄が並ぶ。

コンセプトは80年代のバー、だそうだ。
お客様は世代が違いますよね。と店主らしき女性は小さくふふっと含むように笑った。
世代は違うが、しかし空気が良かった。
カウンターに座ったが、テーブル席は少し妖しく、しかし楽しそうだった。
客はぼく一人、しかし居心地も良い。

少しして、コーヒーが来た。
お菓子が付いており、尋ねると「お客様からの頂き物です、お裾分けですよ」と言ってくれた。

東京ばな奈。嬉しいおまけだ。運ばれたコーヒーに口を付ける。
おいしい。素朴においしい。なんの小手先もない、純粋なおいしさだった。

女性は思いのほか饒舌だった。

やはりコロナ禍は苦境だったらしく、今日がコロナ後初めての団体貸し切りなのだと嬉しそうだった。

その後に交わしたのは酒の話がメインだったが、ぼくがバドワイザーの話をしたら、バドワイザーは80年代の代表ビールで、バドガールのイベントも過去にやったんですよ、とやはりふふっと笑う。
バドガール?と聞くと、ボディラインが出たボディコンみたいな衣装を着た女性がバドワイザーを注ぐイベントらしい。
ああなるほど、水希みりのAVで見たな。と納得し、心の中にしまい込んだ。

結局三十分ほど滞在し、次は酒を飲みに来ます、と伝えて料金を支払い外に出た。
とてもとても、良い店だった。

本当に、酒を飲みに行こう。

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