ピタゴラス勝率から今年のNPB環境を考える

何かがおかしい

おそらく、多くの野球ファンが今年のシーズンについてそう感じているのではないか。ただ、その「何か」が何なのか分からない。今回から複数回にわたって、その「何か」に向き合います。この記事はベイズターズエールの理屈をこねくり回す方、在野がお送りします。

ピタゴラス勝率からのアプローチ

ピタゴラス勝率から、今期の特殊性を探ってみます。先にお断りしますと、今回は話題の提供までしかできません。

ピタゴラス勝率

ピタゴラス勝率をご存じでしょうか。簡単に言うと、シーズンを通した得失点差からチームの勝率を予想できる、というものです。式を見てみましょう。

勝率=得点の2乗÷(得点の2乗+失点の2乗)

このように簡単な式で大まかなシーズンの勝率が分かるとされています。それでは、実際の勝利数とどの程度異なるのでしょうか。 蛭川浩平さんが2024年に出されたレポートによると、年換算で実際の勝利数と4勝程度誤差があるとされています(蛭川皓平「勝率推定式を読み解く」『デルタ・ベースボール・リポート7』、2024年、水曜社)。大まかに妥当な水準と言って良いでしょう。

2024NPBへの当てはまり

それでは、今年のNPBにとってピタゴラス勝率はどの程度当てはまるのでしょうか。6月23日時点での当てはまりを見てみます。データはいずれもNPBの公式が出典です。得点と失点はそれぞれチーム打撃成績チーム投手成績にあります。

セ・リーグの得失点とピタゴラス勝率

セ・リーグの得失点とピタゴラス勝率

パ・リーグの得失点とピタゴラス勝率

パ・リーグの得失点とピタゴラス勝率

上記蛭川さんのレポートで、誤差は0.03程度とされていることを考慮すると、絶対値の平均で0.06程度の2024年シーズンは当てはまりが少し悪いと言えそうです。

当てはまりの良い指数を探して

ここで指数と言っているのは

勝率=得点の2乗÷(得点の2乗+失点の2乗)

というピタゴラス勝率計算式の「2乗」の部分です。このn乗する際に利用する数値を指数と呼びます。通常の式では指数は2なので、計算では2乗しています。

この指数は経験的に導き出されているものですので、変わり得ます。ピタゴラス勝率を生み出したJamesさん自身、後に指数を1.83の方が適切であるとしています(蛭川、2024)。それでは、2024年シーズンに当てはまる指数はいくつなのでしょうか。

指数を1から2.5まで0.1ごとに動かしながら、もっとも当てはまるものを探します。具体的には、実際の勝率とピタゴラス勝率の差を取り、その2乗を全チーム分合計して計算しています。

指数とピタゴラス勝率の当てはまり

この結果、指数として当てはまりが一番良いのは1.3でした。ピタゴラス勝率で利用している2(もしくは、1.83)と比較するとだいぶ低い数値です。

念のため、2023年シーズンについて同様に計算してみると、一番当てはまるのは1.9でした。これと比較すると1.3というのは特殊な状況を表していると言えそうです。

結果の解釈

結果が出たからにはその意味を解釈しないといけません。ですが、それは次回の課題とさせてください。

基本的には、指数が大きくなるのは、小さな得点差が大きな勝率の違いに繋がっている環境、指数が小さくなるのは大きな得点差がないと勝率の違いが生まれない環境とは言えるかもしれません。

また、サンプル数が一定以上にならないと指数が2周辺に収束しない可能性もあります。

これぞ、という仮説を思い付いた方がいらっしゃいましたらぜひお知らせください。

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