中林稜

詩をかいたりしている

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短詩 100篇「みそぎ的な、うみ的な、そうやって死ぬ的な」

短詩 100篇「みそぎ的な、うみ的な、そうやって死ぬ的な」 アイデンティティクライシス 海を見たら死ぬ病気 少女には名前がなくて俺たちはない頭を捻る ブルース 名刺から滴る雨の残骸をエネルギーとする性教育ビデオ 災いはかねてから手の内にある参勤交代シュークリーム 口うるさい鏡の悲鳴 汚水には2種類あって片方が絵画 最近の流行りみたいなビート 俺が炎天下の中で作った恋心 バファリンを腹から吸う アイス御霊アイス 救いなんていらねえと言いながら産まれてきたのにな

    • 短歌二十首「段々と崩壊していく夢の中でみつかりたいよ」

      おれだって天国みたいになりたいよまつげが燃えるごみ処理場で 咲き誇るマグマみたいだあなたから釣り銭を受け取るサイゼリヤ サウナでは全てのことが許される例えば五限を切ったりだとか まち針が落ちていく過程 ありのままで愛されるわけないじゃん、ね ポメラニアンばっかだこの街 雪と服どっちに恋すれば良いか分からん 頭おかしいよ俺たち服のまま真冬のプールに飛び込んだった 新しい朝を届ける夜ばかり続くあなたに宅急便で まだ雨を知らない産声が響く未来で踏んだ水面のように 卓

      • 詩「ふち」

        ふち   中林稜 見栄えの悪い窓枠の下に 手に入らなかった氷がある 残響は 祝詞のせいだと君は言って いや、と否定しかける 頭の上から白い羽が降り 瞬きをしている間に 冬は通り過ぎてしまった わたしは大陸だった 或いは わたしは感受性の海岸で でもそれは 大言壮語だと君は言う 本当はあの水道から 流れてくるものでしかないと それは同じじゃないのかと言えば 何もわかっちゃいないね、と君は言う 他者の肉体を背負えたら 空に近く 軽くなった薄氷になれたのに、とぼやいてみる

        • 詩「裏紙」

           裏紙       中林稜 風は肌をひろげる 怒りの部分で 永遠の瓶を転がし 爛れた小鳥たち、 天で輪をなして その羽が わたしのものだったらいいのに 瞬きの間に 明滅は通り過ぎる かつて 明滅していたことだけ 知っている 許すべからず、と書かれた 柔らかな裏紙の 親になって 敷衍する大地、 見つめている 手はあおい いつだったか香りのついた塹壕に 彼はいらして 他人の股の 内側を這う魂魄 その 名残の音を聴けば 人知れず、人を知らない発音でなされた 彼というものは い

          詩「後ろ足」

           後ろ足     中林稜 霊柩車と 同じにおいの人が 好きだった 舗装されたアスファルトを滑る胸の 中には小さなあざがある 分離し、集合をする鴉の 性別を知らないでいる 内側から流れ出てくるものが いつだって正しいとは限らなくて 一瞬 地面を忘れた蔦のように 酸素が満ちている つぶやくことは 浮遊した世界と 認識の齟齬を 少しずつ埋めてくれる 例えば れ、い、き、ゅ、う と唱えれば 自然と しゃ が出てくるように 身体ができていて 沈殿したはずの感情が 縫い目のように

          詩「後ろ足」

          ルックバックにおける不条理と加害性についての疑問

          ルックバックにおける不条理と加害性  まず、僕はルックバックを批判したいわけではないし、そこまで詳しくない。漫画を読んで、アマプラで映画を観た程度で、元ネタとか知らない。Don't Look Back in Anger のネタとかはちょっと見た。そして世間の評価がかなりマズいと思っていたりする。  理性と感性の乖離の問題がある。僕はルックバックを見て普通に泣いたが、それは「泣く」という機能のもので、だからこそ間違いなくある一定のベクトルには素晴らしいと言える、と思う。けれ

          ルックバックにおける不条理と加害性についての疑問

          ひかりのこえがきこえる(エッセイ)

          「ひかりのこえがきこえる」って中学生くらいの少女がマンションの前で歌っていて、一乗寺の駅に向かう途中だったんだけど、なんか惹かれて見てみたら男女でハモってて、あ、ひかりのこえがきこえたかもって思わせるほどエモい光景だったなあ、多分中三くらいだろうなって考えてたら、踏切についちゃって、そこで鹿が見えた気がして振り向いたら、というか大体のことって振り返ったら初恋みたいだよなあって考えたら、そういえば初恋の人は高学歴で僕の偏差値の2倍だあってちょっと悔しがるんだけど、僕は「へんさち

          ひかりのこえがきこえる(エッセイ)

          詩「ニートでした」

          汚染された下線部の縄張りを引き剥がしたところで 踏切がやって来て 滑稽だ、滑稽だ、と言いながら 僕の前を通って行った と君に話した時に 器にはでかい刃みたいなのが落ちていて 熱くなったばかりのコーヒーみたいに いや、お湯になった後コーヒーの粉を入れたんだからそれはおかしいかと考えながら、君の返事を待っていると 雪でできた 火 或いは 雪みたいな光、いや光みたいな雪、みたいな 藻が落ちて来て、そこで監督は場面をちょんぎって次の場面に行くのだけれど、遠くから見たらそれは何か、重要

          詩「ニートでした」

          せっくす、どらっぐ、じさつ、えも

           自分が何か意見を述べようとする、例えばエッセイを書こうとすると、どうしても文章が出てこないし、自分が考えていることは大したことないし、大体要約すると三行に収まるので、エッセイが書けない。てか、私小説と何が違うんって思う。意見を述べるのだったら、レポートとか、論文の方が良いし、って思っちゃう。  だからエッセイが書けない、から、独自の方法で文章を書くことにした。文章を超スピードで書く。思考より早く。僕は考えながら文章を書く事が苦手なので、何かに導かれるようにして、書くことに

          せっくす、どらっぐ、じさつ、えも

          俺たちは20歳で死ぬつもりだった

          「わたし、二十歳で死ぬ予定だった」と彼女が言った。彼女は洗濯物を畳んでいた。丁寧な手つきだった。俺は思い出した。かつて俺も同じだった。俺も二十歳で死ぬつもりだった。  二十歳になった後色々あったし、なる前はもっと色々あった。俺は大人になったし、俺は死にたかった。  死にたいのは時間の不可逆性のせいだとも言えた。転校とかいじめとか受験とか、後悔とか色々。ずっと死にたい日々が続いた。明確な理由は過去のせいだと言えた。過去、色々あったからで大体のことは片付けられる。今でも傷は疼い

          俺たちは20歳で死ぬつもりだった

          知らない人が自殺した原因はお前らであり、俺でもある。(最近の飛び降り自殺について)

           横浜駅で飛び降り巻き込み事故が起きた。飛び降りた人は10代から20代で、巻き込まれた人は30代くらいだったらしい。両方亡くなった。  15歳から39歳までの死因の一位は自殺だ。その理由を大学の教授に尋ねたことがあるのだが、どうやら単純に他の死因が少ないかららしい。若者は病死や事故死が少ないから、相対的に自殺が一位になるのだと聞いた。  自殺の巻き込み事故について、世間の反応は割と二分化している気がする。巻き込まれた人が可哀想、死ぬなら一人で死ねという反応が大多数。自殺を

          知らない人が自殺した原因はお前らであり、俺でもある。(最近の飛び降り自殺について)

          「今時、リスカなんてデフォだよ」と君が言った

           入院した時、検査で大量の血液を抜き取られて、リスカくらいの血の量じゃ人間は死なないだろうと思った。左手から血を抜かれる時、僕のリスカ跡を見て看護師が言った、「私も首吊り自殺したことある。未遂で終わったけど」っていうセリフが忘れられない。 僕の日常は少しずつ変わり始めていて、周りの友達でリスカしている人は多いし、僕だってしたことがある。痛くてもうやりたくないけど。 ODやっている人もいる。そういう人が周りに増えるたびに、自分が正常だったのだと知る。 「今時、リスカなんてデフォ

          「今時、リスカなんてデフォだよ」と君が言った