「7」魔法のエリクサー

ローゼット嬢はラーラ夫人に付き添い、開けた廊下を歩いていた。すると向かい側からロハンが通り過ぎ、二人は礼儀正しく頭を下げた。

「新しい侍女のことは誰も教えてくれなかったな?」

ロハンは疑問の声を上げた。ラーラ夫人は頭を下げ、丁寧に答えた。

「殿下がこのような些細なことで、お忙しい殿下のお仕事を妨げることを望まれなかったのです、殿下。」

ロハンは不満げに呟いた。

「妨げる、だと?」

彼はローゼット嬢に目を向けると、彼女は緊張して硬直した。ロハンは彼女に尋ねた。

「このお嬢さんは誰だ?」

ローゼットは慌てて言葉を詰まらせながらも、礼をして自己紹介を思い出した。

「ローゼットと申します、殿下。」

「なるほど。」

ラーラ夫人が口を挟んだ。

「彼女は薬草医でして、これから殿下の薬のスケジュールを管理し、同じ過ちが繰り返されないようにします。」

「つまり、彼女は『蜂の巣』から来たのか?」

「その通りです。」

ラーラ夫人は唇を引き締め、ローゼット嬢はそのやり取りを無知のまま見つめていた。その後、ロハンは話を切り上げた。

「まあ、二人ともご苦労だった。」

二人は再び頭を下げ、ロハンはそのまま去っていった。ローゼット嬢は尋ねた。

「宮廷の働き手は温室を『蜂の巣』と呼んでいるのですか?」

ラーラ夫人は楽しげに答えた。

「そうよ!温室がまるで蜂の巣のようだから。」

彼女はにっこりと微笑みながら続けた。

「そう思わない?」

しかし、ローゼット嬢の悲しそうな表情を見たラーラ夫人は驚き、ローゼットが小声で呟くのを聞いた。

「でも、その名前は好きじゃないです。」

「おやおや、そんなに気にしないで。それは悪意があるわけじゃないわ。」

「それに、殿下は私がここにいることを不快に思っているようです。どうやら、私たちはここで良い印象を持たれていないようですね。」

ローゼット嬢の言葉にラーラ夫人は少し困ったような顔をしたが、笑い出し、ローゼットは驚いて彼女を見つめた。ラーラ夫人は涙を拭いながら答えた。

「あなた、面白いわね!」

笑いが落ち着いた後、ラーラ夫人は最後の涙を拭いながら優しく言った。

「でも、あなたの考えは間違っていると思うわよ。」

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王女の部屋は、憂鬱な香りに包まれていた。
窓辺の席に座って、物思いにふける王女の姿を、ロゼットは静かに薬を調合しながら見つめていた。彼女は緊張し、落ち着かない様子で、時折、王女の方に視線を向けていた。

「お前!」

突然、王女の声が響き、ロゼットは驚いて跳ね上がった。王女は続けて言った。

「お前の名前は何だったか?」

「ロ…ロゼットでございます、殿下。」

「そうか。」

王女はため息をつき、再び思考の中に沈んだ。そして、ぽつりとつぶやいた。

「ロゼット、お前はどう思う?もし自分の息子が、自分を侮辱する者に自らの地位を譲ってしまったら…母親が権力を手にしようとしているその時に。」

ロゼットは何も言えず、頭を下げた。王女の胸中には深い悲しみが隠されているようだった。ロゼットは薬の入ったカップを手に取り、王女の元へと歩み寄り、微笑んで差し出した。

「殿下、息子様にも何か理由があるのではないでしょうか。今回は運が悪かっただけで、きっと支えが必要なのです。」

王女は驚いたようにロゼットを見つめ、その言葉が心に響いたようだ。ロゼットは自分が言ったことに不安を感じたが、王女は穏やかな笑みを浮かべ、顔が再び明るくなった。そして、カップを受け取り、優しくささやいた。

「ロゼット、お前の言う通りだ。」

王女は薬を一気に飲み干し、カップをロゼットに返して微笑んだ。

「ありがとう。」

ロゼットは突然の展開に戸惑い、何も言えず、ただ微笑み返すことしかできなかった。そして、礼をしてカップを受け取り、部屋を後にした。

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使用人たちの休憩室に入ったララ夫人は、部屋中に広がるおしゃべりの騒音に驚いていた。

普段なら何か噂話が広まった時にしか見られないような光景だった。

「ララ夫人!」

若い侍女のレイが彼女に駆け寄ってきた。ララは不思議そうに尋ねた。

「何があったの?どうしてこんなに騒がしいの?」

「ご存知ないのですか?みんな、王女様とルーカス王子の決闘の話をしています!」

「なんですって?」

ララは驚いて叫んだ。すると、部屋全体が静まり返り、全員が彼女に視線を向けた。ララは額に指をあて、目を閉じた。

「気にしないで。ただちょっと驚いただけよ。」

一人の侍女が口を挟んだ。

「それは珍しいですね。ララ夫人が噂を知らないなんて。」

「たまたま聞き逃しただけよ。」

皆が驚いた様子を見せた。ララは急いでレイに向かって言った。

「とにかく、彼女の体調が良くないはずだから、止めさせなければ。」

「誰がそんなことを言ったんです?」

別の侍女が言うと、ララはその声の方を見つめた。その侍女は続けた。

「蜂の巣から来たあの娘が現れてから、王女様の体調はずっと良好ですよ。」

「ああ、そうなの。」

ララは少し寂しそうに微笑み、再びレイに向き直った。

「でも、事態が悪化しないように、私たちも見守っていないと。」

そう言いながら、ララは急いで中庭へ向かった。しかし、彼女がさらに驚いたのは、すでにロハンが宮殿の中庭に立っており、王女が騎士の鎧をまとい、汗をかいているルーカスと対峙している光景だった。

「殿下!」

ララは驚いてロハンに駆け寄った。ロハンは無邪気に彼女を見つめ、囁いた。

「心配しないで、僕の時も同じだったよ。」

彼は優しく微笑んだが、ララは不安そうな表情を崩さなかった。その瞬間、剣がぶつかり合う音が響き渡り、ララは恐怖で口を手で覆った。剣戟は一瞬止まり、ルーカスは疲れ切っているようだった。ララが叫んだ。

「ルーカス!」

彼は視線を上げ、怒りと決意を宿した目で彼女を見た。次の瞬間、王女が彼に向かって剣を振り下ろし、激しい打ち合いが再開された。ルーカスは懸命に抵抗したが、ついに王女の剣が彼の肩をかすめ、血が流れ出た。ララは息を呑んだが、ロハンはじっと動かずに見守っていた。

ルーカスは地面に倒れ込み、息を荒げていた。王女は彼のそばに近づき、剣を放り投げた。ララはその音に驚いた。王女は冷たい声で言い放った。

「自分の地位を取り戻すまで、この家の子だとは思わないで。」

そして叫んだ。

「わかったか!」

ルーカスの目には涙が浮かび、彼は驚愕の表情で王女を見つめた。王女はロハンに向かい、小さな声で囁いた。

「彼をお前に任せるわ。」

そして、王女はその場を去った。ララは驚きと困惑で立ち尽くしていたが、ロハンはいたずらっぽく笑いながら彼女に言った。

「落ち着いて、ララ夫人。彼女が怒るといつもこんな感じさ。」

ロハンは地面に倒れているルーカスに近づき、彼の震える手から剣を取り上げ、優しく囁いた。

「さあ、この騒ぎを片付けよう。」
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つつき

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