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湖氷乗切

湖氷乗切

赤鼻の
八十氏川に結渡す
義の柵は越えかねて
くれと頼める子らのため

命も名をもトナカイの
蹄の垢と蹴り捨てし
聖夜の夜こそ哀れなれ

ここに
明智佐太助黒太秦は
サンタの代わりせんものと
数多の玩具引具して
住宅地へと打たせ行く

サンタ信じる人々は
我に続けと大音に
味方の勇気励まして
飛電の如く突きかかる
一萬余騎の警官も
この勢いに堪ええず 
算を乱して崩れけり

氷りつきたる湖を
明智佐太助黒太秦が
乗切る様を見おいてぞ
童話の語りに遺せかし、
いざやと手綱かいぐりて
一鞭あつれば忽ちに
トナカイさながら飛ぶ如く
凍てつ湖面に
打ち入ったり

さしもに広き湖を
真一文字に乗切る様
さすがの敵も茫然と
鳴りを静めて見送りけり

黒太秦やがて煙突の
そびえる屋根に乗りつけて

愛鹿の額撫でながら
かかる広場を神妙に
よく照らしたり赤鼻よ

火にも水にもに駆け入りて
ソリに数多の玩具らを
積ませし汝が忠義をば

この黒太秦は忘れぬぞ
我今ここに主従の
絆を断ちて別るとも
汝は真の主の元へ

戻りて名鹿の誉をば
後の世までも残せよと
鬼を欺く益良男が
こぼす涙の一雫

令和4年12月24日
明智佐太助黒太秦
トナカイに乗りて
湖水を渡るものなりと

いと筆太に認めて
なくなく手綱繋ぎおき
星の数さえ数えつつ

子らの寝床へ
急ぎける


(背景)
サンタが不法侵入で逮捕されたために、遠い親戚である明智佐太助黒太秦(あけちさんたのすけくろうす)がサンタに代わって子供らにプレゼントを配ることを決意。警官隊は黒太秦が黒幕と勘違い。追われる身となった黒太秦はトナカイと共に凍った湖を渡り、プレゼントを配ろうとしたのだが、サンタが無事釈放されたことを知り、自分はもう用済みとトナカイとの別れを惜しみつつ、袋に詰めた分だけでもと配り家路についたのでした。

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