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「ミッドサマー」感想: お前をホルガ村に連れて行く

写真: Photo by Mikael Kristenson on Unsplash (https://unsplash.com/photos/yr78PepAxzw)

「ミッドサマー」を見てきたので宿題の感想文です。勧める人を選ぶであろうことを除けばとても良くできた作品でした。

一秒で分かる月島のホルガ村ツアーあらすじ

形容ではなく本当に気分が悪くなってしまって大変でした。前提として以下があります。

- ポップコーンが普段食べない味濃いめの物を選んでいて飲み物もなかった。気持ち悪くなった一因
- グロ描写(人体損壊)はそこそこエグいが気持ち悪くなった主要因ではない
- 気持ち悪くなった要因の残り半分。ストーリーでオエッってさせられるとは思わなかった

TRICKは比較的優しい世界だった

Twitterで話題になっていた「山田上田のいないTRICK」という形容は私の感覚でもある程度正しく、観客はやたらと幸せそうなカルト集団に取り込まれる一般人の姿を直視させられる訳です。

村に到着する時点で何故か音楽を演奏してたり、村のそこかしこで儀式と遊びの中間のような不思議ムーブをしているところまでばっちりTRICKです。これが創作で描かれるカルト集団の収斂進化か…。

弱みを持つ一般人がカルト集団の幸せそうな顔に感化されて取り込まれる…と書くと非常に凡庸ですが、これを徹頭徹尾救われないダニーの乱高下する感情、ヤクブーツの影響で呼吸するように蠢く鮮やかな草花、無印良品みたいなBGMとその場から脱走しないギリギリに下ごしらえされた損壊描写、人がカルトに取り込まれる過程を綺麗に盛り付けしてお出しされたのでベタなホラーとは若干違う系統の恐怖を味わうことになりました。

なるほどあのホルガ村に育つなり取り込まれるなりすれば、「自害せよ」と言われて教義通りの手順でそうするし、人間を猟奇的手順で加工することも精肉作業と同じ調子で行うのでしょう。TRICKでカルト集団がコメディフィルタの向こう側に居るのはある種の優しさとも言えた訳です。

人類への憎悪に定評にある側近Qさん辺りの見解も聞いてみたいところですね。最近ちょっとずつ活動復帰されてるみたいだし。

映像として

サスペンス作品であそこまで色鮮やかな映像を追求しているのは非常に挑戦的と感じました。暗さ、視界の悪さによる怖さを極力廃してあそこまで気持ち悪さと怖さを実現したのは手放しに褒めるべきだと思います。

ただ、作品中で展開される美しい景色=主人公一行が凄惨な結果を迎えるための準備された景色な訳で、「この村全部燃えてくれないかな」という気持ちがくすぶる感じになりました。綺麗なのにストーリー的には全く嬉しくないんですよね。

ダニー、ダニー

ダニーが「メイクイーン」として村に取り込まれた(と思われる)ところでお話は終わりました。無印良品みたいな音楽を流しながら異様な行動とオーガニック薬物濫用を繰り返す殺人カルト集団に一人取り残された訳で、表情が笑顔だったために何か救いがある雰囲気が出てるだけです。彼女普通の状態で生かしておかれるのかわからないですし。

あのお話に「お前らの悪事はまるっとお見通しだ!」は存在しないので、美しいホルガ村の夏至祭(90年区切り以外だと縮小版?)は来年も粛々と執り行われるのでしょう。吐き気を催す最悪さでした。

嫌な気分になる作品もこれはこれで非常に有価値なのですが、いささか重すぎて胃もたれしたので次はもっといい気分で終われる映画が見たいですね…。

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