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沖縄県産ブランド「MAJUN」が描くかりゆしウェアの未来


株式会社日進商会代表取締役社長 大城直也氏


沖縄を代表するかりゆしウェアブランドのひとつ「MAJUN」を運営する日進商会は、2022年に経営理念を刷新しました。

新しい理念は「快適な価値ある商品とホスピタリティを創造し、地域社会に貢献する総合繊維産業」

制服などの製造卸売業から始まった同社の事業は、2000年のかりゆしウェア市場参入に伴って小売業に拡大。現在では沖縄内に3店の実店舗を構え、オンラインショップも積極的に展開しています。

生活者との間に直接的な接点を増やし続ける狙いとは?「店舗に来たお客様にホスピタリティを感じてもらえるような会社にしたい」と語る大城社長に、かりゆしウェアの価値や強み、ブランド経営やサスティナブルシフトへの取り組みを教えていただきました。

沖縄県糸満市西崎町の本社にて(聞き手 : BagasseUPCYCLE代表小渡晋治)

「安ければ安いほどいい」という考えは、持続可能ではない

2018年から代表に就任した大城さんは、それまで卸売中心だった業態から小売業に力点を置く改革に注力しました。その理由を次のように語ります。

「卸売の方が、一度の納品で大きな売上が立つので効率的に感じます。ですが、その先にいらっしゃるお客様と直接つながらないとブランド育成のイニシアチブが取れません。ブランドの価値が上がれば、卸売業の取引先である小売業者様にとっても値引き合戦にならずにすむため、巡り巡ってみんなにとってメリットになる。反対に、『メーカーはつくればいい』『小売は安く売ればいい』という考えは持続可能ではありません

「このことに、多くの方がたが気づいてきている」と話す大城さんが考えるブランドとは、ものづくりの品質やスピードに加え、背景にある目には見えないストーリーを伝えたり、お客様の「ありがとう」が従業員をうれしくさせる「ホスピタリティ」が備わった存在です。

「ホスピタリティを創り出す対象は、お客様だけではなく、仕入れ先や従業員同士も含めたすべての関係者です。これは理想論ではなく、『このブランドいいね』『この会社いいね』『うちの仲間っていいね』という魅力を生み出せないと、企業として生き残れないと考えています」

ホスピタリティでモノにとどまらないブランド価値を創造

ホスピタリティを存在意義に置いたブランド育成は、すでに多くのエンドユーザーとの間に強い絆を生み出しています。

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「実店舗では『店舗スタッフとの関わりで元気がもらえた』とか、『ここで買い物をしてよかった』というありがたいお言葉をいただいています。また、オンラインショップでも、誰もやっていない頃から送料無料サービスを導入し、さらには返品交換OK、そのための送料も負担するなど徹底してきました。『ここまでやってくれるんだ』という感動を生み出す心構えで取り組んだところ、ショップの売上は倍増。コロナ禍になっても売上が落ちず、レビューやメールにも熱いメッセージを寄せていただいています」

かりゆしウェアを通して思いや価値を繋ぎ、沖縄に循環させたい

売る側と買う側の垣根を越えて、人間同士の関係性をより良く結ぶことで創造される目に見えない絆が、商品やブランドの魅力を高めているMAJUN。ブランドに愛着を持つ顧客の中には、Majunで買い物をするためだけに県外から日帰りで来沖するリピーターや、「コロナ禍で次にいつ来られるかわからないから」と1度に20着購入したファンもいるそうです。

県内ではフォーマルウェアとして定着しているかりゆしウェアですが、県外の顧客はどのようなシーンで着ているのでしょうか?

「晴れ着や遊び着としてご着用いただいていて、着るとテンションが上がり、周りの人もテンションが上がる。盛り上がって楽しくなって、周りの方も買ってくださるという連鎖が起きているようです。」

オンラインショップの売上の65%を占める関東圏ではまだまだ「かりゆしウェア」の知名度が低く珍しいため、「どこで買ったの?」と会話が生まれ、コミュニケーションツールにもなっているそう。

こうしたポジティブな愛され反応は、「沖縄のオリジナルだから」という側面が大きいと大城さんは捉えています。

「かりゆしウェアから『沖縄産』が抜けたら、珍しいシャツという以上の価値や事業の成長はなかったのではないと思います。それでも、まだまだ知られていない。ファッション業界を中心に商談に行っても、誰1人としてご存知ありません。県外のポップアップショップや物産展でも、100人に1人くらいの割合でものすごく気に入ってくださる方がいるのですが、『今まで知らなかった。もっと早く教えてくれないと』とお叱りを受けたこともあります」

観光振興の一手として誕生し、沖縄サミットで各国首脳が着用したことやクールビズキャンペーンがきっかけとなりビジネスフォーマルや冠婚葬祭へと着用シーンを拡大してきたかりゆしウェアですが、まだまだ掘り起こしきれていない潜在市場があるようです。大城さんは、こうしたかりゆしウェアのポテンシャルを、できるだけ沖縄で循環させたいと願っているそう。

「今は、沖縄の魅力がかりゆしウェアを引き立ててくれていますが、逆にかりゆしウェアが沖縄の魅力を引き立て、来訪する動機のひとつに数えられるようになれることを目指しています」

そのためにも、布地もできることなら県産素材を使い、沖縄らしい背景のあるものづくりをしていきたいと考えているそう。

サステナブルシフトは、できることからシンプルに

また、「シンプルに、もったいないことをしない」工夫を重ねることで、環境負荷への低減にも努めています。

かりゆしウェアの古着3枚を割引券と交換しています。かりゆしウェアのファンを大切にしたいので、Majunの品でなくてもかりゆしウェアならOK。集まった古着は資源化して再び繊維にしていきます。また、植物由来で土に還る素材の導入も検討中です。一着のかりゆしウェアは、農業に始まりたくさんの人の手間や資源が投入されてできあがります。その背景を伝えていくことで、大事に思ってもらえる気持ちを育て、長く着ていただけるようにすることも大切にしていきたいと考えています」


大切なお客様との接点を強化するべくアプリ開発にも着手し、台湾・香港・中国・ハワイを中心に海外展開も進めるなど、日々かりゆしウェアのファンを増やし続ける日進商会。かりゆしウェアを通して人と人をつなぎ、沖縄らしさを未来へとつないでいます。

BagasseUPCYCLEが展開する琉球紅型デザインのかりゆしウェアをご着用いただきました。「イジュの花」(大城社長)と「青海波」(小渡)

取材 : 2023年6月

バガスアップサイクルは、沖縄の地場産業である製糖業の過程で発生するサトウキビの搾りかす「バガス」の繊維を活用したかりゆしウェアのシェアリングサービスを展開しています。詳しくは、コーポレートサイトをご覧ください。デザイン一覧および那覇市内各所でのレンタルサービスについてはこちらでご案内しております。