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日記(「陸上防衛隊まおちゃん」、社会と萌えミリタリの変化、KOTOKO)

2021年2月22日、それなりに加筆修正。

noteに書くようなことをツイートしてしまった。

 「陸上防衛隊まおちゃん」とは2002年に作られた赤松健原案のアニメです。名前から察しがつく通り自衛隊に所属する幼女が侵略者と戦う、というまあくだらない作品ですね。
 美少女とメカみたいなものは80年代から数ありますが、現代日本が舞台なことや、主人公たちが乗る兵器がティーガー、ハリアーといった実在兵器にそっくりな点がやや先駆的かもって思います(まあ前例はいろいろ浮かびますが)。

 「終わりなき日常を生きろ」とは、イケイケだった時代の宮台真司によるオウム真理教についてのエッセイで、「大きな物語(歴史変革、社会変動)」を持てなくなった現代人についての論考です。
 宮台は終わりなき日常の表現として援助交際とともに「うる星やつら2ビューティフルドリーマー」を挙げていて、萌えアニメは不変な永劫をもとめているという現在では定番となった認識を作りました。

 現在、『艦これ』や『ガルパン』、あるいは『ストパン』といった萌えミリタリは、ミリタリ趣味との接続点は持っていても、物語のありかたとしては一つのファンタジーとして消費されていて、日常モノの変わり種的に消費されています。そこに関してたまに左翼的な視点からの批判と、オタクからの自己反省的な言及が起こることがしばしばあります。
 美少女たちの日常モノという幻想に、フェチとしてのミリタリーという幻想を足しているのですから、そこに耽溺するヤバさが大きいのはたしかに否定しきれない事実です。

 さて記念すべき21世紀最初期の萌えミリタリ作品が、萌え文化、ひいてはそれを産み出す現代社会対してにメタ的な視点をもって主題歌をつくっていたとしたら、なかなか面白いと思ったのです。まあ主題歌といってもそこまで内容とリンクしてないからなんとも言えないのです。単純に堀江由衣が終わらない日常って歌い出すのが面白い。

まおちゃんの”戦争”と現代の萌えミリタリ

 しかし本作はこの手の作品の現在(ストパン、艦これ、ガルパン、アズレン)や、祖先たるマクロスシリーズに比べて戦いが圧倒的に戯画的に、ふざけたものとして描いている点はちょっと考えるべき点ですね。社会へのメタ視点をもとに作っていたかは歌詞同様にわからないのですが、最近の萌えミリタリとはあきらかに空気感が違う。

 軍事モチーフみたいなのをだいぶ白けたものとして描く時代だったのでしょう。萌え要素を回収しながら軍事組織に自分を投影したりするのは深夜アニメレベルでもなかったのではないか。そういうのはかわぐちかいじ作品みたいなものの領分だったんじゃないか。まあ根拠は薄弱ですが。

 しかし、時代の変化というのは97年生まれの自分としても実感できるところはあります。まおちゃんの翌年の2003年開始されたイラク戦争に自衛隊が派遣され、2007年には北朝鮮との軋轢の中で防衛省が設置された(この年ストパン)。法律も改定されて補給活動や、より危険な土地でのPKO活動が承認されて、ついに専守防衛の前提すら形骸化してきた。ここ十数年で日本はまちがいなく軍拡したのは間違いない。それをどう評価するかはよくわかんないけど、そうした流れが民衆の軍事に対する抵抗感を減らしたことは事実でしょう(国民レベルではたびかさなる震災で自衛隊への信頼感が増したのも大きい)。
 そしてそれをアニメや漫画の制作者たちは敏感に感じ取って新たな萌えミリタリーを作ったのだろう。

 そう考えていくと「まおちゃん」は911とイラク開戦の間の、まだ平和だった時代の偉大な凡作と言えようか。

 萌えミリタリに関してちょっと自分の経験を語ります。私は『ストパン(ストライクウィッチーズ)』は宇宙人との戦いをわざわざ「戦争」と呼び、現実の歴史における戦争とダブらせる演出が戦争肯定くさくて嫌だったので見なかったのですが、『ガルパン(ガールズundパンツァー)』はあくまで部活ものとしてやっているのが好きで普通にはまった。
 だがそのあと『ガルパン』と同じメンツで制作された「荒野のコトブキ飛行隊」で主人公機が一式戦隼で、「特攻機を使ってこんなオタクの妄想異世界ストーリーをやるのってふつうに狂ってるんじゃないか」とドン引きしてみなくなった。でも特攻じゃなくても本質的には同じなんだよな……。
 『陸上防衛隊まおちゃん』のまおちゃんやガルパンの西住まほが乗るティーガーはドイツのユダヤ人虐殺する戦時体制の上に誕生したものだし、艦これやアズレンで描かれる少女たちの戦いの"原作"はただ凄惨な帝国主義に利用された庶民たちの殺しあいなわけだし、どこまで無毒化しても、その造形は現実に起こった暴力なのは間違いない。
 まあここらへんの「どこまでの悪趣味が許容されるか」みたいな話は終わらないのでここでやめときます。まあ表現としては全部許されていいと思うけど、受け手としてどこまで笑っていいのか、毎度考えておく必要はある。

 さて、最も重要なことはただ明快で、今起きている現実とフィクションに明確な区別をつけることだろう。海自が艦これとコラボしたりしているのはマジで最悪だと思うし、ガルパンのイベントに10式戦車呼んだりしているのもありえないことだと思う。ファンとしてはその喜びもわかるんだけど、そこは線引きするのが「アニメという盛大な嘘」を愛する人間のなすべきことなのではないか。

 この国がどうなるかわからないけど右傾化が進んだ先の未来として「萌えキャラの登場する軍国プロパガンダ」はだいぶ実現可能性の高いビジョンだと思う。


ほかの日記

 いや陸上防衛隊まおちゃんで書きすぎだろ。

 みこみこナースとかmosaic.wavとか電波ソングが好きなんですが、有名どころだと『さくらんぼキッス 〜爆発だも〜ん〜』だけはあんまり良さがわからない。中学生のころ「世のオタクはこんな大塚愛をさらにキツくしたようなのをどんな気持ちで聴いているんだ?!」とカルチャーショックを受けた記憶がある。周りのKOTOKO好きな人は女性に多い印象があって、なんというかそれは納得できるが、エロゲやるようなオタクがどんな気持ちで聴いていたのかいまだに想像つかないし、俺はどんな顔して聴けばいいんだ?きゅんきゅんっ!

 とか思いながら聞いたことなかったKOTOKOの曲聞いたらとても良かった。あの何とも言えない声域が刺さるとき刺さる。プリンセスブライドが好みですね。

 今日も漫画が描けなかったのであきらめてゲーム制作準備をした。とはいえ手ぶらで行くのは忍びないので二日で12ページくらいのものをでっちあげていきます。本当に大丈夫か?



にょ