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セルフアドボカシーを育てる

「セルフアドボカシー」という言葉を調べると、「自己権利擁護」「自分に必要なサポートを、自分で周りの人に説明して、理解してもらう活動」を指すと出てきます。

私は、これを小学生になるまでに以下のようなことができるようになればよいと考えました。
・自分でどの程度聞こえていないかを伝えられる
・聞こえなかった時に相手にもう一度言ってもらうようお願いできる
・マイク(ロジャー)の使用交渉ができる
・自分で補聴器の管理(電池交換、乾燥機にかける)ができる

これらを達成するために必要なこととして、次のポイントが重要だと考えました。
・自分が難聴であることを理解し、伝えられる
・相手に伝わるように説明できる
・相手の意見も尊重できる

息子は難聴の発覚が遅れたため、聞こえを意識すること自体が難しかったです。
幼稚園では、多くの場合、見様見真似で対応していました。先生がサポートしてくれることもありましたが、息子自身はなぜ先生がわざわざ教えにきてくれているのか、聞かなければいけなかった場面であったと理解していませんでした。

補聴器の電池が切れていても気づかない、もしくは気にしないことがしばしばありました。息子の場合、中等度の難聴であり、補聴器を外すと音は聞こえますが、言葉は聞き取れません。そのため、聞こえていないという認識が難しかったのです。

言語聴覚士の先生方からも「中等度の難聴が一番難しい」と言われていましたが、本当にその通りでした。人工内耳の子たちは外すと無音になるため、すぐに聞こえないと認識できますが、息子にはその感覚がありません。

毎日のように「今、お母さんが言ったこと聞こえた?」と確認し、聞き取った内容が間違っていたら正す、の繰り返しでした。

同時に、息子の説明力も鍛える必要がありました。「これこれこうだから、こうしてほしい」と言えるようになるためには、語彙力や言語力をつけることが不可欠でした。

特に難しかったのが、息子自身でマイクの使用交渉の経験を積むことです。

息子が入園した時にはコロナ禍が始まり、外出が制限されていました。
幼稚園では「聞こえなかった」ことを伝える練習はできても、マイクの使用をお願いする場面はほとんどありませんでした。

この状況を解決するために、様々な場所へ行きましたが、最適な練習の場を見つけるのに時間がかかりました。
最終的に、キッザニアが最適な場所だとわかりました。

キッザニアでは、アクティビティが完全に母子分離で行われるため、息子が自ら指示を聞きにいかなければなりません。施設の方針上、マイクの使用を断られることがないため、アクティビティ開始前にスタッフさんへマイク使用の交渉を行いました。最初は私が、次に息子と一緒に、そして徐々に息子一人で交渉するようにしました。

スタッフさんのユニフォームによっては、マイクを襟元につけることが難しいこともあるため、専用のストラップを渡すよう息子に促すこともしました。これにより、聞こえを確保しつつ、使ってくれる人が使いやすいように工夫することができました。

おかげさまで、今では目標にしていた指標をクリアしています。

このように、いろいろな工夫をすることで、セルフアドボカシーを育てることができました。息子が自分の状況を理解し、自らの権利を主張できる力を身につけるまでの道のりは決して簡単ではありませんでしたが、その分得られた成果は大きかったと感じています。


#難聴児 #難聴 #補聴器 #人工内耳 #セルフアドボカシー

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