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育成の中に隠されたもの

前書き

育成機関に目を向けた5年として活動してきた日々の振り返りと新型コロナウイルスによって求められる変革やスポーツシーンを見据えた先にあるものを少しまとめます。

私個人的な意見になりますのでご了承下さい。
私が経営をしてきたクラブ、ペンギンズバスケットボールクラブから世の中を見ていきたいと思います。

2015年ペンギンズバスケットボールクラブ設立
2016年U12/U15設立
2018年法人化
2020年U18設立/U22設立準備中/U15調布チーム設立準備中

ペンギンズバスケットボールクラブが何をしてきたのか、これから何をしようとしているのかと言う部分にも触れていきたいと思います。


クラブを構成しているもの・現状


1.アメリカの話

ペンギンズの遺伝子はアメリカにあります。
私、代表の谷村はアメリカで揉まれたキャリアがあります。アメリカで体感した育成環境の素晴らしさに惹かれ、日本でも同じことをしたいと強く思ったことが全ての活動の始まりです。

アメリカ、ウィスコンシン州のミルウォーキー。
田舎の都市として(出身の人がいたらすみません・・・)栄えているその町のバスケットボール界の基本構造は、大学バスケや高校バスケなどの学校チームを基本に育成の枝葉が分かれている構造でした。
育成と研究と言う観点からウィスコンシン州立大学は膨大なお金を使ってバスケットボールを支えています。
州立大マディソン校はアメリカ全土でも屈指の実力校で、その名も知れ渡っています。

地域の最終ゴールとしてミルウォーキーバックスが存在しています。
アメリカは文化として、自分が育った地域を大切にします。ドウェイン・ウェイドやタイラー・ヒーローなど多くのスター選手を排出している州で、バスケットに対する注目度は非常に高い地域で私は活動しました。

大学を中心とした育成システムは完璧でした。
もちろんその育成システムを支えているのはボランティア団体であったり、民間企業のチームです。
この構造自体は日本と大差はありません。

大きな差は年代を超えた活動が大切にされていることと将来有望な選手の育成と排出に全てをかけていると言うことです。
育成年代においてチーム評価と言うものはそこまで強くない印象で、大会で目立つ選手がいれば多くのコーチやスカウトマンがより優秀な育成機関へとプッシュする・・・そういった『発掘環境』が整っているのです。

私はつい最近までこの一連のシステムを全て育成と捉えていました。
そこが大きな盲点でした。


2.尊敬する青学大駅伝部

五年間のクラブ活動で大切にしてきたことは多様性と自主性です。
選手は選手の中で上達をしていくことが大切で、外部との様々な関わりや内部での交流が選手を成長させます。

多様性という部分はハード面の仕組み必要で、クラブ作りが重要になります。当初から私は全年代で活動することが必要と考えて、カテゴリーや年代にとらわれることのないチーム作りを懸命に行ってきました。

さて、自主性です。
自主性を重んじる活動には様々な落とし穴が存在します。数々の落とし泡に直面しては、考え、工夫をし、学んできた五年間です。
そして、私が尊敬する青山学院大学駅伝部の監督である原晋氏から多くのヒントを受け、ここまでやってきました。
原監督が掲げている指導は、

・マネジメント
・デュアル形成

この2本柱が基本になります。アスリートとして着実な毎日を送ることと成果へとフォーカスをしていくことが大切っであると説いていて、そのための仕組みや工夫など多くのメディアで発信されています。
さらにデュアル形成というのは、人間が最終的に成長をしていかなければならない能力(ここでは社会人教育という言葉で表します)を伸ばしていく作業になります。

社会で生きていくために必要な能力は、競技にも反映されるというのが原監督の考えであり、元人事部という監督のキャリアを生かした指導です。人を伸ばすことに年代やステップなどを最重要視するのではなく、まず人間としてきちんと育んでいくというのが青学のスローガンとも言えます。
私もこのお考えに深く賛同をし、目指していくことになるのですが・・・
ここではあえて成功ではなかったとしておきます。


3.尊敬する某サッカークラブ社長

私がクラブを立ち上げ、経営をしていくところで多くを参考にしているのが日本サッカー界です。
単純にバスケットボールより先進的である指導、指導体制、業界自体の体制があります。日本バスケの1年先、2年先、5年先と見据えた時にモデルになるのがサッカー界だと考えています。

特に私がインスピレーションを受けているのが某サッカークラブの社長です。彼自身がメッセージを体現しているその姿に私は心打たれています。
「世界に通用する選手の排出」とまさにその言葉を実現するその実現力は本当に尊敬します。

私の考えも同じく、日本ではなく世界で通用する選手を育むことは日本バスケ 界としても目標とされています。私も地域クラブからいつかNBAに通用する選手を排出したい・・・と夢を描いています。
夢を描くだけでなく、どのような環境をつくれば、指導をすれば、選手と出会えば・・・そう世界基準で環境を作っていくことはクラブとしても非常に大切です。
また、そうしたモデルが身近にいることが何より幸せな環境です。


4.目の前のこと〜ペンギンズバスケットボールクラブと関係団体〜

このようにクラブが持つ遺伝子やインスピレーションは、このクラブがどこを目指して活動をしているかなど多くの情報として皆様に伝えることができると思います。しかし、重要なことはこれらを掲げていても実際に目標を達成するところやプロセスには重大な障害が立ちはだかってくるものです。
この「目の前のこと」はまさに問題提起なのです。

問題は誰もが成功を目指しているところに潜んでいます。
これは当然と言えば当然で、全員が成功を目指していくと限りある「ゴール」にたどり着くことができないひが出ているということです。これはバスケットボールに限ることではありませんが、競争というレースの中で勝利を掴み取ることができない選手は基本的に成功へとたどり着くことはできません。

どの関係団体を見ても同じことです。
上手な選手がいれば下手な選手ももちろんいるのがスポーツです。
ただし、バスケットボールは団体スポーツなので『勝利の化学反応』を起こすことができれば弱い選手が集まっていても勝利を手にすることができます。(これは誇張して言っています)

育成!育成!!と声を大にして取り組んできた我々ですが、どこか外れていってしまっている感覚が私にはありました。
技術を身につけていく、頑張って一生懸命に取り組んだ先にある未来を「人間力の向上」「デュアル形成」という言葉で片付けていいのでしょうか。


部活動支援として携わっている学校では、部活動で一番大切なことは選手のキャリア形成です。教育という言葉を使いますが、目的は学生がのびのびと成長できる環境を作り、好きなことから社会に出た時に必要な能力を身につけていくこと。学校教育へのモチベーションをあげるためにある教育活動とされていますよね。
私も大賛成です。部活動がなければ学校に価値を見出すことができなかった人間ですし、部活動を通じて多くのキャリアアップをすることができた人間なのでその恩恵や存在意義は強く感じています。

さて、この教育目標はクラブのゴールとして目指すべきものなのでしょうか。


成長を見つめた先〜社会の構造〜


1.アスリート社会は日本社会そのもの

アスリートの世界は広く、厳しいものです。
以前クラブでお話をさせていただいたのですが、競技人口に対してどのくらいタイトルが重いものなのかを考えると、子どもたちが戦う世界の過酷さがよくわかります。

高校の部活動だけでも、

全国優勝をするためには「15人(登録ベンチメンバー)/競技人口8万人」

という数字が出てきます。これは単純に高校生で協会に登録している人数なので、全世界にいる日本人高校生であったり部活動に所属していないけどプレーをしている選手なんかを含めると数字はかなり大きくなりますよね。
これほど厳しい世界で戦っていうことは社会において特別なことではなく、日常にありふれている事です。
社会という組織の中でも当然に競争が生まれています。その競争に参加するもしないも個人の自由ですし、「金を稼ぐ」というところにおいてはさらに競争が激しいです。
国全体で決まった量のお金をみんなで分けていますから、当然です。
もう少し細かく見ると、競合他社がいたり、外資の会社が攻めてきていたり、法律でなんとかなっていたりとそれはもう過酷な世界が繰り広げられていますよね。

アスリートの世界も例外ではありません。
生き残るためには戦わなければいけない世界です。
そして学生であれば戦っている学歴社会というものも同じように過酷な世界ですね。



2.デュアル形成

そこで注目しようというのが、アスリートの資質(人間の部分)を高める指導や教育という目の向け方をします。

ただし、単純に全ての選手にこの指導をするというのがそもそも構造上間違いなのです。
私が5年間行ってきたこの人間の資質を育むアプローチで圧倒的に間違っていたことは、「その指導を受け取るべき人間に行うべきことを、全員に行っていたこと」です。

これは多くの教育期機関で見つめられてきた教育です。
ですが、成功者と失敗者と位置付けるならば、失敗者はその失敗から次のチェンジを見つけなければいけません。

まずは成功者を見つめること

私は青学の駅伝部の組織力、影響力、指導力、徹底力、彼らが持つ力の全てに着目しました。そして気がついたことがあります。
まず、監督が常に拘ったことは「大学の名(チームの名)を轟かせる」ことです。おそらく全ての育成年代コーチが一度は意識したことだと思います。そこから、部は結果をあげ、注目を集め、ブランドへと成長していきます。
青学が変わったのはそこからです。
素晴らしい力を持った選手が集まるようになったのです。そして、質の高い選手へ質の高い教育をしました。その教育がさらに注目を集めているわけです。その成功の礎を築いた世代は、綺麗事なんかでは無く血反吐を吐くような苦しい思いをし、耐え忍び、成功を掴んでいったのです。

ここで気づかなければいけないことは、高度な教育を始めるには、その教育についてこれる質の高い選手、つまりすでに育成を終えている選手がいなければいけません。すると育成機関が意識することは変わってきます。ブランディングをするという視点を持ちながら育成をしていくことで、成果をあげたときに確固たるポジションを市場の中に構築することができます。ただし、日の目を浴びない選手が排出されてしまうという、ブランド力を追求したときの弊害が引き起こる危険性があります。
青学の選手も、世間から脚光を浴びるまで非常に苦しい状況が続いていたと監督は語っています。その期間に作りあげられた育成メソッドこそ、その後の財産となったことでしょう。

別の視点から育成年代を見つめたとき

では、地域のクラブチームにおいて埋もれてしまう選手をどのように『発掘』できるかということがポイントになるということに気付きます。もちろんクラブチームとして世間から脚光を浴びるブランドへと成長をしなければいけないわけですが、クラブで育成を行いながらそうした選手の発掘、育成を行うことも非常に大切であるということがわかります。

ペンギンズバスケットボールクラブに着目してみます。
U12年代は完全なる育成機関として活動をしています。それは、まだ発掘という環境を必要としていない選手(この年代で得る結果は次のカテゴリーに対して大きな影響がないため)が多いです。
Bリーグ傘下のチームに入りたい!としても全国大会に出ていようが選手の能力や伸び代、スキルを重視したセレクションが行われているはずです。
では、U15はどうでしょうか。
U15は育成だけでなく、発掘にも注力しなければいけない現状が引き起こっています。競技人口ピラミッドでいうのであれば、U12の一段上、つまり選手の選別が始まります。そこでは、選手が身を置く環境というものが選手のキャリアにおいて大切になり始めます。U18、U22とカテゴリーが上がるにつれてその競争は厳しいものへと変わります。
さらには、U15年代からチーム内における競争も始まります。U12年代で育成が不十分であった選手はもうこの時から育成対象として外れてしまう可能性が生まれてくるのです。
そうなるといよいよ発掘をしなければ、育成対象としてピラミッドを上がることは難しくなります。

ペンギンズバスケットボールクラブがU15やU18を見つめた時に、部活動でこぼれてしまいそうな選手の育成や発掘を行うことはクラブのブランディングにおいても非常に重要な一面を持っているというのは一目瞭然です。


まとめ:地域スポーツクラブ業界のあるべき形は?


1.目指すべき育成

ペンギンズバスケットボールクラブや他種目の競技に関わらず、学校組織やカテゴリーにとらわれないクラブチームが地域においてできることは非常に多いです。

育成年代に対しては、選手に対して横並びな育成を行わず、選手の発達段階に応じた適切な育成や、育成し切れていない部分に対するアシストやサポートを行うことは必須とされます。
さらには、所属チームから離れた育成環境を適切に斡旋する発掘という視点を育成の中に持ち続けることが、競技力の育成につながっていきます。

また、競技者のキャリアを支えるような成功体験をクラブ内活動で実現し、人格教育や選手の資質を育むような指導が望ましいと考えています。


2.観点を変える「発掘」の重要性

前述の発掘というシーンをさらに掘り下げます。
競技人口のピラミッドをイメージしてください。

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このスポーツパーソンとされてしまう競技者たちの中に実はトップアスリートまで駆け上がることのできるポテンシャルの選手が紛れているということがあります。
『無名高出身選手がプロになる』これは決して美談ではなく、高い意識、高いレベルでの実力が認められるにも関わらず、環境やチームメイトに恵まれないケースが存在しているということです。

このような選手に対して必要なことが『発掘』なのです。
多くの場合は、そういった選手は大学などのトップカテゴリー(もしくは直前)で成果をあげることができる選手であり、そのブランド力(日本では関東大学、関西大学1部リーグ)という脚光を浴びる舞台で発掘をされることが多いと思います。チャレンジの成功例です。

では、この最終カテゴリーでチャレンジが成功しない選手はどうでしょうか。そのままキャリアを終えるしかないのです。
これこそ、クラブチームが取り組むべき課題です。
誰でも入会できるクラブチームだからこそ、ブランド力を持ち、選手を発掘できる環境を整えるべきなのです。
多くのケースでは進学の失敗や進学先でのトラブル、チームメイトの不和、監督とのすれ違いなどの問題によって紛れてしまう成功者や環境設定の失敗からその可能性を生かせない選手が存在します。
これらの選手を救済できるのは、地域のクラブチームのみということになるのです。

青山学院大駅伝部の成功は、ブランド力を構築するまでの血の滲むような努力とその後のリクルート能力にあります。育成という観点は、それらの歴史の中で集まった優秀な選手たちが実現した後付けのようなものです。(育成力は素晴らしいです!)
では、クラブは成功まで地道な育成を続ける他に、埋もれている選手を発掘し、育成をし、そのブランド力を向上させる取り組みが必要なのです。

ペンギンズバスケットボールクラブがこの育成をどう成し遂げるのかというと、初志貫徹、豊富なカテゴリーや多くの選手と多様性を持って育成と発掘を達成していくことです。
世の中には、多くのキャリアを持つ優秀な人材が多くいます。
その力無くしては育成は達成されません。バスケットボールを教えるだけでなく、全員が豊かな活動をできる空間をクラブは作り、選手たちが発想力豊かに活動をしていくことが優秀な人材が能力を発揮する1番の環境設定です。
育成力はいつだって『競技力=育成力』ではありません。
知識、経験、人格、環境、多くの好条件が揃った時に人は化学反応を起こし、素晴らしい成果をあげるのです。

組織において『人こそ宝』なのです。
これからもクラブは多くの選手やスタッフを募集します。
U22の発掘機関として、育成年代の育成機関として、また多くの社会人がそのキャリアを120%発揮できる機関として、止まらずに躍進するだけです。



最後に

ペンギンズバスケットボールクラブは、U18カテゴリーの新設しています。
意義は、育成機関として、発掘機関としてJBAの指針に則って活動をします。
そして新たにU22カテゴリーを設立します。
U22発掘プロジェクトとし、下位リーグに所属する選手や上位リーグのリザーブ選手などが次のキャリアへ繋げる場所として、多くの社会人選手が交流をできる空間を作りながら活動をしていきます。

それに伴い、U22発掘・育成を行いながら実際にプレーもする社会人選手を募集します。意図はこちらの記事にある内容です。ご自身のキャリアを次世代のために活用してくださる選手を募集します。もちろん、皆同じカテゴリーで活動する「選手」ですので一緒に大会などに参加できると嬉しいです。

これからも著者谷村だけでなく、ペンギンズバスケットボールクラブの応援をお願いします。

あなたのサポートでコーチ谷村は今日も活動ができます! ありがとうございます!そして応援よろしくお願いします!!!