『Apocrypha of Atelier』について
ここまで長かった。
いろんな考えから、ゲーム紹介文は仕様や事実を箇条書きにするだけに留めておこうと思ったのですが、こんなに像を結ばない列挙を見てピンときてほしいというのも無理がありますし、やはり丁寧な紹介はあるに越したことはありません。
というわけで少しゲームの紹介をします。宣伝です。
1. ストーリーについて
剣と魔法の世界を舞台に、「アトモス」と呼ばれるエネルギーの利用権をめぐって複数の国家や種族がワイワイガヤガヤやります。
アトモスというのは、魔法を使うために必要となる気体です。魔力の源みたいなやつです。
それで、この魔法詠唱に必要だっただけの媒体が、あるとき技術革命によってめっちゃエネルギー効率の良い資源にもなっちゃいます。魔法自体は資質があったり訓練を受けたりした一部の人にしか使えなくて、その点に変化はないものの、この技術革命で、変換装置さえあれば誰でもアトモスの恩恵にあずかることができるようになるわけです。
そうしてエネルギー事情が一変すると、世界全体の勢力図や均衡関係も様変わりします。大国間がピリピリして、いつ戦争とか起きてもおかしくない緊張が生まれます。そこにどこからともなく魔族がいきなり現れて「おい人間! 専有やめろ!」と利権を主張し始め、人間同士で戦争が勃発する前に、人間と魔族で戦闘状態になってしまった――というのが物語の発端です。
こういう始まり方をする物語なんですが、最終局面を迎えるころには当初の雰囲気や展開から受ける印象とはまた違ったイメージを持つことになると思います。エンディングは好き嫌いが分かれるかもしれません。
1.1. 何をするストーリーなのか
アトモスは微量ながらも空気中に含まれていて、一定以上の濃度になると青い霧のような感じになります。
こういう感じにアトモスがぶわーっと溢れて上昇気流を形成している「ストリームスポット」と呼ばれる地点が世界に8つあります。端折って言えば、そこを全部先に押さえるために冒険をします。
もちろん「どうしてそんなことするの?」って感じだと思いますが、中盤ぐらいで明かされます。衒学的な理論説明シーンが好きな人はぜひ期待してください。
1.2. キャラ
ネームドキャラクターはだいたい20人超えるぐらいです。いま数えたら男女比は半々ぐらいで男性のほうがちょっと多かったです。
こんな感じで人物や用語をメニュー画面からいつでも確認できます。物語が進めば適宜更新されます。
他にも主人公に対して少し異常な執念を向ける女、昔の想い人のことが忘れられない性格のキツい王女、暗い過去を背負った顔のいい男、謎のおっさん、暗い過去を背負った鬼畜メガネ、ちょっと慇懃無礼な第一印象を与えるヴァルキュリア、暗い過去を背負った情緒不安定な少年、やたらと難しい言い回しを好むツインテール、女性魔王などが登場します。
1.3. 早い話、どれぐらい進めたら面白くなるのか
物語はTaleという単位で細かく区切られていて、Tale21まであります。おそらくTale5ぐらいから面白くなってきます。Tale9で急展開を迎えます。
ちなみにあらすじ閲覧機能もあります。
2. ゲームデザインについて(主にバトル設計)
改訂にあたって大きく変えた点のひとつです。
AoAはRPGですが、初版では(普通はRPGにとって欠かせない)リソース管理や育成・成長といった部分についてはかなり意図的に弱くして、バトルの戦略性を追求するようなデザインにしていました。言い換えれば、戦闘をあくまでプレイヤーの腕試しの場にしようと、勝つためにレベルやリソースのことはあまり考慮しなくて済む設計にしていました。しかし初版では結局そのコンセプトはうまく実現できていなかったなあと感じていたので、改訂版ではもういちど自分が何をやりたかったのかを考え直し、バトル部分を再設計することにしました。
結果、改訂版のAoAでは「総力戦」と「シミュレーション」を強く打ち出すようなかたちになったと思います。
2.1. 総力戦とシミュレーション
「総力戦」というのは、要はとにかく強い技をぶつける楽しさです。ターン制のバトルとかで、全員が最大の火力でうまく攻撃できたらそれだけでけっこう楽しかったりするじゃないですか。AoAはターン制ではないですが、改訂にあたってああいうのを意識したデザインにしてみようと思いました。
とはいえどんなRPGでもバトルに勝つためには強い技を使っていくのがいちばん手っ取り早いものです。総力戦を全面的に押し出すと今度はゲーム自体が単調になります。言い換えれば、「その強い技をどうやって安定して使うか」が調整上の問題になります。
そこで今度は「シミュレーション」が重要になります。事前にイメージしたバトルの進行を実現させていく楽しさです。「この敵にはこの属性や状態異常が有効らしい」→「だとすれば、このキャラを主軸に据えるのが良いだろう」→「このキャラが最大のパフォーマンスを発揮するにはどうするのがいいだろうか」とプランを立てて、実際にバトルしながら試行錯誤していくことになります。
こんな感じで装備を整えたり、
戦闘時に使用するスキルをセットしたりします。
このあたり、初版は曖昧に高難易度を志向してかなり運ゲーだったんじゃないかと感じています。なので今回の改訂では、自分の思い通りにバトルを進めて、無双したり完封したりする爽快感を意識して設計したつもりです。(うまくやるとボスキャラとか一撃で倒せちゃったりします。)
ここがどのぐらい成功できたかはけっこう気になっているので、ご感想いただけると嬉しいです。
2.2. やり込み要素と寄り道
「やり込み要素は少なめ」って紹介文に書きましたし、敵図鑑とアイテム図鑑ぐらいしかないのでそれは事実なんですが、寄り道はちょっとだけ仕込みました。ラストダンジョンに突入しちゃうと戻れなくなるので、興味のある人はその前の局面でちょっと寄り道してみてほしいです。
寄り道ボスは何体か用意しましたが、うち三体はラスボスよりも(体感として)強いかもしれません。気長に撃破報告を待ちます。
隠しボスのうち推しはコイツです。
3. 音楽
最近の作品をプレイしていると、素材屋さん事情がだいぶと変わったのを強く感じます。
たとえばいちばん顕著なのはMIDIを使っているかどうかでしょうか。MIDIは当然ながら再生環境が重要になってくるので、ツクール2000ぐらいのころは、せっかくの名曲が「なんかこれドラムしか聞こえないけど?」みたいな感じになっちゃったりすることも珍しくありませんでした。それで確かVX以降だったと思うんですが、とにかくいつからかツクール側がMIDI音源を提供してくれるようになったわけです。
先述したように素材屋さん事情は相当変わりましたし、改訂版でもそれに合わせようかどうかけっこう悩みました。他方でVXAceはおそらくMIDIが使える最後のツクールです。そしてわたし自身もおそらくVXAceを使って作品を作ることはもうないと思います。
そうして悩んだ挙句、自分の思い入れ深い素材曲を中心に、なるべくそのままにしておこうと決めました。初版でちょっと選曲が気に入っていなかったシーンなど、変えた箇所も少なくないですが、その場合でもあえて昔の素材屋さんから、自分が好きな曲を選ぶようにしました。
少し自分の話をします。
AoAの改訂版を8年越しにリリースした理由や動機はいろいろあります。なかでも「自分が過去に作ったものを、ちゃんとしたかたちで公開しておきたいから」というのはけっこう大きな位置を占めています。初版は三年ほどVectorで公開していましたが、正直なところ、到底「プレイしてみてください」と言えるような代物ではありませんでした。バグだらけで調整もずいぶんと不十分で、一年かけてこんなものしか作れなかったのだから、これを最後にフリーゲームを作るのはやめようと思っていました。自分にとっては、黒歴史とかではなく、もっと冷たく「忘れたい作品」という括りでしたし、現に公開して一年後には忘れていました。(それでも予想に反してご感想等をもらえたのは本当にうれしかったです。)
あれから紆余曲折を経て、自分の考えも少し変わって、もういちど作品を手がけてみたいなと思えるようになりました。そのときこのAoAのことも思い出して、これをそのまま放置して次の作品を作るのがどうしても許せませんでした。
改訂作業は予想外に時間がかかってしまいましたし、これだけ間が空くならもっと徹底的にリメイクしたほうが良かったのでしょうが、しかしあまりにも原型を留めていないリメイクを発表することも本意ではありませんでした。ゲームを公開するわけなので、遊んでもらうことを第一に考えるべきですし、もちろんそれを考えて改訂しましたが、また一方で、自分にとっての保存という意味合いが大きかったのも事実です。(フリーウェアでなければ、そういう動機での改訂は決して許されなかったでしょう。)
このゲームに起用している曲はどれも思い入れがあります。初版作成時、聴きながらイベントを作ったりしましたし、曲に合わせて拙いながらも演出を考えたりもしました。どの曲も、作品を彩る素材という以上に、まずもって自分にインスピレーションとエネルギーを与えてくれた曲です。だから変えることはあまりしませんでしたし、変えるにしてもなるべく、たとえば自分が他のフリーゲームで聴いて好きだった曲から選ぶようにしました。
付け加えて言えば、BGMにかぎらず、他のフリゲへのリスペクトも初版と比べて少し増やしたつもりです。たとえば……
これとか。
全体的に2019年に出すにはアナクロな作品になってしまったのは否めませんが、昔のフリゲが好きな方、良かったらぜひプレイしてみてください。
それと改訂版AoAはなんと新規に作ってもらった曲がひとつあります!
とあるボス戦で流れます。めっちゃ気に入ってます。改訂作業中のBGMにしていたこともしばしば。すごく真摯に作ってくださって嬉しかったです。この場を借りてあらためてお礼申し上げます。ほんとにありがとうございました。
4. おしまいに
長くなりました。ここまで読んでくださってありがとうございます。
クリアしたらご感想等いただけると本当にうれしいです!
すでに初版をプレイしてくださった方も、そのままにした部分も少なくないんですが、再プレイの価値があるようちゃんと作ったつもりなので、よかったらぜひ。
ではではまた。
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