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田中晴也(日本文理/新潟)

2022全国高校野球選手権 新潟県大会2回戦「加茂暁星対日本文理」の一戦はネット裏にスカウトがズラリと並んだ。地方大会の2回戦(シード校の日本文理にとっては初戦)としては異例の光景だろう。お目当ては田中晴也(日本文理)。


彼は昨夏の甲子園で2年生ながら147km/hを記録したことで否が応でもこの世代トップクラスの投手と認知された。しかし、個人的には彼の一番の魅力は柔と豪を兼ね備えるスケールが大きく懐が深い打撃ではないかと感じている。


彼の存在を抜きにすれば両校の力はまずまず拮抗している。この初戦で日本文理が敗れるとドラフト前に彼を見る機会はなくなる。そう思って僕は球場に駆けつけたのだが、スカウトも同じ思いだったのだろう。

成長を感じさせる投球

1年ぶりに彼の投球を見た。体つきが少し引き締まって体幹が強くなったように見える。肩甲骨周りの柔軟性は天性のものなのだろうが、昨年は腕が少し横振りでリリースが早く、フワッと抜けるボールやシュート回転で甘く入ってくるボールが多い印象だった。しかし、この日の投球は上半身、下半身ともに鍛えられた証か(肘の位置が高くなったようには見えないのだが、)腕が縦に振れてリリースポイントが打者よりになったように見え、まだ少しバラつきはあるもののリリースでしっかりボールを切って縦回転のスピンが効いたボールを投げていた。


昨夏から変わらぬ田中-竹野のバッテリーは、昨年は右打者には外角一辺倒の配給だったが、真っ直ぐに自信が出てきたのだろう、内角に質の高いボールをしっかりとコントロールしていた。これでスライダーやフォーク(スプリット)、チェンジアップも一層効果的になり、投球の幅も広がった。左打者にはツーシームも投げていた。成長の跡を窺わせる投球だった。

高校生離れした打撃

だが、(繰り返しになるが)それでも彼の打者としてのポテンシャルに投手として以上の魅力を感じてしまう。
かれこれ50年近く新潟の高校野球を見てきたが、新潟の高校野球史上随一ではないか? とまで個人的には思っている。


この日も逆方向にコールド勝ちを決めるサヨナラ満塁本塁打を放った。僕が見た彼の本塁打はこれが3本目だが、いずれも質が高い。打球の速さは高校生としては群れを抜く。外角球も軽々とオーバーフェンスする。高いレベルの内角速球にいかに対応できるか注目して追いかけたい。

好感の持てる取組姿勢

試合中の彼の所作・言動にも注視したのだが、メンタル面もなかなかのもの。1回表が始まる前にマウンドで投球練習を開始するやいなや「マウンドの踏み出し足の地面が柔らかい」と審判に土の入れ替えを要求。こんなシーンは初めて見た。常に味方野手の守備位置にも気を配り修正の指示も出していた。味方の攻撃時には、打席の選手に「(必死に応援してくれている)スタンドを見ろ、みんなのために打て!」と大声で檄を飛ばす。洞察力、統率力に秀でており、日々の練習でも率先垂範してるであろう野球に対する取組姿勢が垣間見えた。選抜で準優勝した近江の主将でエースで四番の大黒柱 山田に重なって見えた。3年前にヤクルトに指名された150km/h腕の鈴木裕太(日本文理出)にはない資質だ。

僕は打者 田中晴也に可能性を感じるが、二刀流を推す声も勿論ある。本人の意向はどうなのだろう? そしてNPBのスカウトや所属することになる球団はこの若い逸材をどのように評価し、導いて下さるのでしょうか。


〈試合結果〉
加茂暁星0-7x日本文理(7回コールド)
7回表までは0-1と互角の展開。
7回裏 田中のサヨナラ満塁弾で決着。
田中は投げては7回3安打無失点


〈本投稿における写真は以下のサイトより引用させていただきました〉

https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2022/07/13/gazo/20220713s00001002267000p.html

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