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都市対抗野球2021観戦記vol.1 三菱自動車倉敷オーシャンズ1−2三菱重工West


はじめに

コロナ禍の影響により11月28日からの開催となったおかげで、この時期には仕事の繁忙期を脱した僕は久しぶりに都市対抗野球(社会人野球)を観戦することができた。そうは言っても、仕事の合間を縫っての観戦であり、我が広島カープが2021年のドラフトで指名した4選手と筑波大の後輩選手絡みのカード5試合を"厳選"して初冬の東京ドーム ネット裏に足を運んだ。余計なお世話だが、それぞれの試合の感想をnoteに書き残す。

観戦した5試合は以下の通り。
・三菱自動車倉敷オーシャンズvs三菱重工West(1回戦)
・伏木海運陸送vs大阪ガス(1回戦)
・NTT東日本vsトヨタ自走車(1回戦)
・東邦ガスvs日立製作所(2回戦)
・ENEOSvs日本通運(2回戦)
上記5試合を4〜5回に分けてレポートしたい。途中でくじけるかもしれないこと、そして独断と偏見ゆえ、カープ絡みの部分とそうでない部分の記述に濃淡があることをご容赦願いたい。

145km/hがもはや平均レベルの衝撃

わずか5試合だけしか観戦できなかったが、改めて社会人野球の高いレベルの野球に痺れた。特にこの舞台に登場する投手のレベルが押し並べて非常に高いことに驚き、さらに投手に限らずその中からNPBで即戦力となり得る選手を指名するスカウトの慧眼には驚かされた。ちなみに、「プロアマ野球研究所」西尾氏の記事によると、32チームが出場したこの大会で153km/hを筆頭に150km/h以上を計測した投手が12人、145km/h以上となると82人にもなる。この球速の投球に打者は木製バットで相対するのだからアマチュアといえどもいかにレベルが高いかを窺い知ることができる。

三菱自動車倉敷オーシャンズ1−2三菱重工West(1回戦)

野球ファンならばこの試合は外せない。なぜなら2021年のドラフトで1位入札の可能性を囁かれた社会人選手は以下の3選手(結果的には1位指名はなかったが)。そのうちの二人が登板する可能性が高いのだから。
・廣畑敦也(三菱自動車倉敷オーシャンズ、投手→ロッテ3位)
・森翔平(三菱重工West、投手→広島2位)
・山田龍聖(JR東日本、投手→巨人2位)

〈森翔平 三菱重工West 広島2位指名〉

広島ファンにとっては開幕ローテーション入りが期待される森翔平に最注目。彼の投球は2019年の明治神宮大会決勝(慶大vs関西大)でじっくりと観たことがあるが、その当時の投球と比べて2段階くらいレベルが上がった印象を持った。従って現時点で最高点近くまで到達している印象なので、今後の伸びしろは限られるかもしれないが完成度はかなり高い。完投ペースでの速球の球速は140km/h前後だが、この日ギアを上げた時のMaxは148km/h。以下はこの日の投球(先発で8回、被安打3、自責点0、奪三振8)を観ての感想。

軸足にしっかりと体重を乗せてタメを作って始動するバランスの良い投球フォーム。一連の動作はリラックスしているが、リリースでのスナップに力が集中していて球速以上に低めの速球が打者の手元でピュッと伸びてくる感じ。下半身が鍛えられている証左。腕の振りはコンパクトで打者からはボールの出どころが見えにくくて打ちにくいのではないかとも思われる。

左腕で、そこそこの球威があり、ひととおり球種も持ち合わせており、緩急が使えてウイニングショット(チェンジアップ)もある。適度に荒れても四球は最小に抑える制球力とまとまりがあり先発でゲームを作れる安定感が彼の最大の魅力。

球速はプロのレベルでは特別速いわけではない。それでもそのストレートを速く見せる術は心得ている。欲を言えばさらに球威を磨けばウイニングショットのチェンジアップがより生きるだろう。何か一つ頭抜けたセールスポイントがあるわけではないが、投手として必要な要素は全て持ち合わせており、しかもそれぞれが合格点(満点ではないが)。総合力と安定度が高い投手。先発で使えば毎試合、高い確率でクオリティスタートを期待できるのではないか。近年の広島のドラフト2位指名の大学・社会人投手(森浦、島内、横山弘樹、藪田、九里、中村恭平)と比較しても1年目からの活躍を最も期待できる投手と言えよう。

【参考】〈黒原拓未 関西学院大 広島1位指名〉

(都市対抗野球から脱線するが、)ちなみに広島 ドラフト1位の左腕 黒原(関学大)は森と比較すると上背はないが瞬発力があり、ボールの威力そのものは黒原が森を上回るだろう。しっかりと胸を張り腕の振りが大きい投球フォーム。年齢的に成長余力もあるかもしれない。黒原の強みもストレートとカットボール、チェンジアップの緩急。まずは短いイニングや第二先発で試してみたい。勿論、チーム状況やオープン戦での結果によっては先発デビューも否定しない。

森と違って少し上体が反って顎が上がり体の軸ぶれるのでやや荒れ気味。ひと昔前の本格サウスポータイプ。荒れ気味の高めの速球を有効に使えれば打者は的を絞りにくく面白い。大学選手権1回戦では150km/h前後の高めの速球と右打者の膝元のカットボール、外角のチェンジアップのコンビネーションでどのボールでも面白いように空振りを奪った。次戦の慶應大戦でも先発したが、この試合ではボールも走らず本調子ではなく捕まった。

広島ではコントロール重視の指導で小さくまとまってしまわないことを祈る。マウンドで腕がよく振れて躍動し、小さな黒原が大きく見える時が彼の好調の証だ。(2021年大学選手権準々決勝 関西学院大vs慶應大戦での投球を観戦して)

〈廣畑敦也 三菱自動車倉敷オーシャンズ ロッテ3位指名〉

この試合、通路を挟んで隣の席にスーツを着込んで真剣な表情のロッテ 井口監督の姿が。それもそのはず、お目当ては2022年シーズンの新戦力として期待する廣畑、八木の2投手。2021年のロッテのドラフト1位・2位は捕手・内野手。即戦力の先発投手の獲得もなし。即戦力投手を廣畑と八木の2人のリリーバータイプに絞って指名するあたり、昨年のCSで圧倒的な投球を見せた佐々木朗希を中心に先発ローテーションは現有戦力で十分との自信の表れであり、2022年にかけるロッテの本気度が垣間見える。井口監督自身はホワイトソックスで同じ釜の飯を食った高津ヤクルト監督の日本一にも刺激を受けていることだろう。

さて、まず廣畑。この日のMaxは152km/hで評判通りのパワーピッチング。プロで成功するとすれば同じくパワーピッチャーの沢村(巨人→ロッテ→レッドソックス)のようなイメージか。気になったのは、スライダー系の変化球を投ずる時のフォームが緩むことと空振りを取れる落ちるボールが見られなかったこと。かといって150km/h超のストレートでも空振りを奪うシーンは見られず、このあたりが3巡目まで指名を見送られたプロ側の評価なのか? 起用法がリリーフにせよ先発にせよ可能ならばスプリット、フォーク系かチェンジアップなどウイニングショットの変化球の会得は必須。先発であればさらにもう1種類カウント球の変化球も磨く必要があると思う。マウンドで気迫を前面に出すタイプでもあり、現時点では使える球種も限られそうなので適性はリリーバーか。

〈八木彬 三菱重工West ロッテ5位指名〉

一方、指名順位は下位(5位)だが、むしろセットアッパーや益田の後継のストッパーとして早くから頭角を現しそうなのは八木の方かもしれない。この日の1イニングはストレートは149km/h~151km/h。本格的なオーバースローで投球に角度があり、ウイニングショットのフォークも落差があって非常に有効。5位指名で獲得できたのだから”掘り出し物”かもしれない。典型的なショートイニングのリリーバータイプ。きっちりと仕事をしてくれそうな雰囲気十分だった。

*リンクの毎日新聞のダイジェスト動画では、森のチェンジアップや八木のフォークボールの映像含まれておらず、読者に観てもらえないのが残念。

後輩の活躍にも期待

この試合を観戦したかった個人的なもう一つの理由は、独立リーグのアルビレックス新潟BC→オセアン滋賀ブラックスで現役選手を続けている後輩の楠本歩選手が2022シーズンから三菱重工Westでお世話になると聞いていたので。どんなチームなのかな? レギュラーになれそうかな? …なんて余計なお世話で。
ちなみに対する三菱自動車倉敷オーシャンズの3番平井選手も後輩、注目の廣畑投手(玉野光南出身)も後輩の教え子とのこと。

森、廣畑、八木のドラフト指名組に注目が集まったが、三菱倉敷オーシャンズの先発 彦坂投手のベテランらしい粘りの投球(6回1/3を無四球、2失点)も見事。
アマチュアトップクラスの投手戦が繰り広げられた期待に違わぬナイスゲームだった。18時開始の試合で試合終了まで見届けて自宅(新潟)に帰宅したのが23時。いかにテンポの良い締まった好ゲームであったかを物語る。

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