前田健太の不調の原因を探る
前田健太は昨季をサイヤング賞の投票で2位を獲得するなど飛躍の年にしたが今季はここまで(2019/5/19現在)、37.2回でFIP 5.09と苦しんでいる。昨季と今季のスタッツを比較することで不調の原因を探りたい。
対右打者
前田は毎年対右打者で大きなアドバンテージを持っている投手で去年は特に顕著だった。しかし今季は得意なはずの右打者でも苦戦している。SwStr%(空振り/投球)は6%以上低下するなど空振りが取れていないことが大きな要因となっていそうだ。
スライダー(対右打者)
ここからは球種別の成績について見ていく。ただしサンプルサイズ確保のため両方の年度で100球以上投球した球種に限定する。xwOBA(打球結果については打球の速度と角度から推定した得点価値を、非打球結果については実際の打席結果を使ったwOBA)は81ポイント低下するなどスライダーの質が大きく低下していることがわかる。球質の変化を見るとわずかに横変化が大きくなり縦変化が小さく(沈む軌道)になっているものの推定xwOBA(同じ球質のグループでのMLB平均xwOBA、そのボールの平均的な球威を表す指標※1)は変わっておらず指標悪化の原因は球質以外にありそうだ。
※1 推定xwOBAの算出方法
同じ利き腕同士、異なる利き腕同士に分けて球速を5kmh/ずつ、変化量を縦横7.5cmずつ刻みxwOBAの平均を取る。
上記の画像はスライダーの投球コース別のRV/100を表している。RV/100を見るとゾーン中心は得点価値が高く(失点のリスクが高く)、ストライクとボールの境目、特に外角の境目は失点のリスクが低いことがわかる。前田はこれらの投球コースにボールを投げ込めているのだろうか。
StatcastにはAttack Zoneと呼ばれるゾーン区分がある。ゾーン中心のHeart、ゾーンの境目のShadow、やや外れたChase、大きく外れたWasteといった具合だ。上記のスライダーのコース別RV/100を見るとShadowに投球すると失点を防ぐ上で効果がありそうだ。これらのコースの前田のスライダーの投球割合を見ていきたい。
前田のAttack Zone別のスライダー投球割合を見ると2021年はHeartとShadowの投球割合が減少しChaseとWasteの投球割合が上昇している。ゾーン中心であるHeartの投球割合が減少したことは良いがChaseやWasteといったボールゾーンへの投球割合が上昇したことがスライダーのxwOBA上昇につながったようだ。前田のスライダーが威力を取り戻すには制球の改善が求められるだろう。
対左打者
昨季の前田は苦手だった左打者を克服することで好成績を残したが今季は数字が悪化している。
スプリット(対左打者)
スプリットのSwStr%は10%以上低下するなどかなり空振りが取れなくなっている。ただし球質自体に大きな変化はない。
オフスピードボールの投球コース別RV/100を見るとスプリットもスライダーと同様にHeartを避けShadowへの投球割合を増やすことが失点抑止に繋がりそうだ。
前田のスプリットのAttack Zoneの投球割合を見るとHeartへの投球割合が増えてShadowへの投球割合が減少していてこれがスプリットの失点リスクの増加につながっていると見られる。対右のスライダー同様、対左のスプリットも制球の改善を求められそうだ。
スライダー(対左打者)
スライダーはむしろxwOBA、推定xwOBA共に改善している。成績悪化の原因はスライダー以外にありそうだ。
まとめ
前田の成績悪化の要因は対右はスライダー、対左はスプリットの投球コースによるものだと言えそうだ。球質自体は昨季から大きく悪化していないためボールをいかに自在に操れるかが活躍の鍵になりそうだ。
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