慣れない守備位置は打撃成績に影響を与えるか

「守備位置を固定すれば打撃に集中できる?」

岡田監督は就任直後、大山の一塁、佐藤輝の三塁固定を明言。これはデイリースポーツ評論家時代から提言していたもので、2022年4月22日付けのコラムで「まず一塁は大山、三塁は佐藤輝で固定するべきだろう。2人は今後も中軸を打たないといけない打者だ。守備位置を固定して、打撃に集中できる環境を作ってやることが、成長への後押しにもなると思っている」と指摘していた。

岡田阪神の際立った守備力 就任前から語っていたポジション固定&役割分担 ハマスタの連敗を止める要因に
https://www.daily.co.jp/opinion-d/2023/08/05/0016665065.shtml

今年の岡田阪神に代表されるように「ポジションを固定することは打撃に良い影響をもたらす」といったことはよく聞かれます。

しかし、実際そのような傾向はあるのでしょうか。

検証(メインとサブ、どちらが成績が良い?)

1.02 Essence of Baseballには「各守備位置に就いたときの打撃成績」のデータがあります。

これを用いて以下の処理を行います。

1.各年度、各選手の守備位置別打席数を調べ最も出場した守備位置を「メイン守備位置」とし、それ以外を「サブ守備位置」とタグ付けする。
2.サブ守備位置で一定の打席数(後述)を経験した選手について、メイン守備位置とサブ守備位置のwOBA(打席あたりの得点創出)を比較する。

ちょっと簡単な方法ですがこれでいきましょう。
もしサブ守備位置が負担ならメイン守備位置を守った時に比べサブ守備位置では打撃成績が低下するはず、という仮説です。

まずサブ守備位置の打席数の合計が100以上の組み合わせの場合。

結果を見るとメイン守備位置で出場したときの方が148例中85例(57%)、打撃成績が良い傾向にあります。

100打席では足りない気もするので200打席では?と思いましたが200打席だと24例しかサンプルがなくなるので150打席でも比較します。

こちらでも58例中31例(53%)でメイン守備位置のが打撃成績が良い傾向にあります。

検証(メインとサブでどの程度打撃成績が変わる?)

カウント数の比較だとわずかにメインのがサブを上回ります。ただ、カウント数で比較するのではなくどの程度打撃成績が変わるかという比較ではどうでしょうか?

例えば先程の散布図の比較だと、他守備位置で打撃成績が上の場合はその差はわずかな選手が多いですが、メイン守備位置で打撃成績が上の場合その差は大きい、という例が多そうに見えます。

そこで対象の選手のうちサブ守備位置の打席数の多さによって加重平均をとります。
例としては

A選手
メイン
打席数 350 wOBA .320
サブ
打席数 300 wOBA. 310

B選手
メイン
打席数 300 wOBA .350
サブ
打席数 150 wOBA.250

このようなデータセットがあった場合、
((.320-.310)*300+(.340-.250)*150))/(300+150)
と計算します。

これは打席数が多い信頼の置けるA選手の影響を大きめに取り込み、打席数が少ない信頼のやや低いB選手の影響を小さめに取り込むためです。

ではサブ守備位置の最小打席数が100打席の場合です。

wOBAの差は-9ポイントとなりました。これはつまり、メイン守備位置と比べサブ守備位置で比較すると平均でwOBAが9ポイント低下することを意味します。

ではサブ守備位置の最小打席数が150の場合はどうでしょう。

wOBAの差は-13ポイントと先程より広がりました。

wOBAで9ポイントというと年間600打席で4点程度、13ポイントだと6点程度です。貯金1を作るの約5点必要と考えると少なくない差かもしれません。

バイアスを取り入れてる可能性?

結果としてはメイン守備位置で出場したときの方がサブ守備位置で出場したときよりも良い打撃成績を残せる傾向があるようです。

ただ、この結果だけで複数守備位置を守ることが負担とは言えないかもしれません。

それはバイアスを取り込んでいる可能性があるからです。例えば普段は遊撃手を守ってる選手がコンディションが良くないため三塁で出場している場合なども、三塁出場時はサブ守備位置での出場としてカウントされますがその比較はフェアとは言えないかもしれません。

ここらへんも解決した集計などできればいいと思いますがさすがにコンディションの情報を網羅はできないので難しいところです。

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