ソニー・グレイを例にフロントドア・シンカーの有効性を考える
右投手のシンカーは左打者に不利
全体的な傾向で言うと、右投手のシンカー(ツーシーム・シュート)は右打者には有効であるが左打者では有効ではない。
上記の表はMLB2017-2021の右投手を対象に打者の利き手別に各球種のRV/100(100球あたり得点価値、低いほど投手優位)をとったものだ。各球種のRV/100の差をとり並べ替えると以下のような関係になる。
チェンジアップ、カーブは対左で有効な球種だが、シンカーは対左での有効性が低い。基本的に右投手(左投手の場合は右打者と読み替えられる、以下右投手で統一)は左打者にシンカーを投げるべきではないようだ。左打者対策にはカットボール、カーブ、チェンジアップが基本となる。
左打者に2ストライクからシンカーを投げるソニー・グレイ
ソニー・グレイの球種構成は対左に有利なチェンジアップやカットボールの投球割合が低く、一見、対左打者に弱いようにみえる。しかし、グレイの2022年の左右別の成績を見ると対左の方が三振率が高いなど大きくリードしている。
グレイが対左で最も三振を多く奪っている球種はシンカーだ。しかも総投球数が81球に対し、2ストライク時投球数が74なことから明確に決め球として使っている。グレイは本来、不利なはずのシンカーを使い、対左で好成績を残している。
2ストライクからのフロントドアを有効に使う
Drivelineのピッチングコーディネーター、Chris Langinは右投手vs左打者のシンカーについて以下のようにツイートしている。
MLB2017-2021のデータで確認してみる。
数字に少しズレがあるが右投手対左打者のシンカーのゾーンスイング率は83%程度となっている。
続いてストライクゾーンの横位置別スイング率とPutAway%(2ストライクからの三振率)を見る。
Langinの指摘どおり、真ん中より外角は90%のスイング率だが、内角ストライクは60%近くに大きく下落する。打者がスイングしないこともあって内角のPut Away%は35.1%と非常に高い。
このように右投手対左打者の組み合わせでは、2ストライク時に打者の身体近くを通ってから内角ストライクに決まるフロントドア・シンカーは、見逃し三振をとるうえで非常に強力なようだ。そして、グレイはこのボールを非常に上手く活用している。
グレイの2ストライク時のシンカーの投球コースを見るとその多くが内角ストライクに集中している。2ストライクからシンカーで多くの三振を取れるのは優れたコマンドと戦略によるものだ。
まとめ
・基本的に右投手の対左打者シンカーは投手不利。
・左打者を相手に2ストライク時に真ん中より外角にシンカーを投げると90%以上の確率でスイングされる。しかし、内角に投げることができれば打者は60%しかスイングしない。
・右投手対左打者では2ストライクからフロントドア・シンカーを使えば多くの見逃し三振を狙える。
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