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2023.01.08 春の高校バレー 感想(男子)

 2023年1月8日 春の高校バレー 男子決勝
駿台学園 VS 鎮西 @東京体育館
大好きなバレーボールの春の高校バレー決勝を見てきました。
まずは、決勝を見た純粋な感想をつらつらと・・・男子から。

試合の結果

       23 ー 25
       22 ー 25
駿台学園 3 25 ー 21 2 鎮西
       25 ー 17
       15 ー 12
チームのコンセプトは全く違うものの、1年生からチームを引っ張る大エース佐藤遥斗(駿台学園)、舛本颯真(鎮西)がおり、ブロック・レシーブの質共に高校生トップクラスのチーム。

鎮西舛本選手の底力

 今大会最多のフルセット3試合を勝ち抜き、膝の怪我も心配される満身創痍の鎮西のエース舛本。とはいえ組み立ての中心はエース舛本。東山戦で決定率の高かったミドルブロッカー荒谷が序盤で捕まったこともあり、サイドの3人特に舛本中心にボールを集める組み立てとなった。

 サーブレシーブも狙われる対象となるが、しっかりと決め切り追いすがる駿台学園を追い付かせない。東山戦に比べると井坂が捕まり気味ではあったが、オポジット平田が少ない打数をしっかり決め切り、1セット目を先取した。

つかみ切ることのできない駿台学園

 駿台学園といえば試合中での対応力が高いチーム。相手に走られても梅川監督のタイムアウトでの指示を機に、ジリジリと追い上げ終盤でしっかりと捉える。走れるセットはしっかり走り、選手交代も効果的に使っていく。

 2016年度王者の時のキャプテン土岐太陽(駿台学園→中央大)もコーチとして加わり、タイムアウトの際だけではなく、細かいフロアディフエンスの位置取りの修正をしっかり対応する。

 だが、1・2セット目はその対応力の高さは影を潜めた。エース佐藤のサーブも走らず、逆に鎮西のサーブが走り持ち味のコンビも発揮できない。
タイム明けに思う通りにいかなかったのか、梅川監督が何度か首を傾げるシーンが印象的であった。それほど舛本を中心とした、鎮西のサイドアタッカー陣がハイレベルだったのだろう。

変化を見せる両チーム

 1・2セットを先取されてそのままの勢いで、優勝へ突っ走る姿勢を見せる鎮西。舛本のバックアタックもセンターからだけでなく、ライト側に回ってのパターンも見せていく。シンプルな攻撃の中にも、変化を見せて畳み掛けをかける。

 変化を見せるのは駿台学園も同様。サウスポー三宅を下げて川野を投入。
ここからセッター吉田のトスワークが冴え渡る。レフトからの攻撃に加えて、ライト側の高速攻撃が効果的に決まり始める。

 対する鎮西は井坂の決定率が上がってこない。必然的に舛本にボールが集まるものの、準決勝から両チーム最多の151本のスパイクを打つ舛本にも疲労の色は隠せない。鎮西の攻撃を嵌めて3セットを取り切る。

完璧に「嵌める」駿台学園

 4セット目は一方的な展開で駿台学園ペース。ただ鎮西もサーブで大きく崩されて、やりたい攻撃ができなかったわけではない。リベロ布台を中心に完璧に鎮西の攻撃を嵌め切る。

 そうなると多彩な攻撃パターンを持つ駿台学園が一気にペースを握る。
両サイド、センター線と吉田が攻撃のタクトを振り、この試合初めてのツーアタック等付け入る隙を与えない。

鎮西は舛本へのトスを減らし、井坂/平田の攻撃を増やし、フルセットへの戦いにも備えているように見えた。そしてこのセットはこれまでの展開からは想像もつかない、25ー17の大差で駿台学園が奪取し2年連続のフルセットへ。

「全部舛本」と「駿台のバレー」

 5セット目は4セット目に敷いた布石通り、鎮西は舛本にトスを集める。会場の誰もがわかっている。サーブレシーブをしても、ディグをしても平川は舛本にボールを集め、それを舛本はしっかり決め切る。

 ただ2日連続のフルセットの舛本のスパイクは、いくら4セット目休んだとはいえキレは戻ってこない。そうなると5セット目も引き続き駿台のバレーボールのペースとなる。

 ただ鎮西も黙ってはいない。舛本と同じく3年生の平田がビハインドの場面でノータッチエースを決め、会場の空気を鎮西に三度と引き戻す。
タイムアウトを駿台学園が取るも、会場は騒然としたまま平田のサーブが続く。そのサイドアウトをしっかり駿台学園が取り切りマッチポイント。

 ここでサーブが巡ってきたのは、キャプテンでエースの佐藤遥斗。ここまで4本のサーブミスで、準決勝からは大きく効果率を落としているが、この場面で最高のサーブを打ち切る。鎮西小手川のレシーブを崩し、最後はミスを誘い駿台学園が優勝を決めた。

駿台学園ペースに持ち込んだ布台

 この試合の流れを駿台学園に持ち込んだのは、間違いなくリベロの布台であった。途中出場の川野や、吉田の効果的なトス配分も要因だとは思うが、会場の雰囲気を完全に駿台学園のものにした。完璧な位置取り、大きく弾かれたワンタッチボールの処理、鎮西がブレイクを取った、と会場の誰もが思った攻撃をことごとく駿台の攻撃に繋げた。

 前日の準決勝では、東山監督の松永理生か、駿台学園の布台か、というくらい声が体育館に響いていた。味方へのサーブカットの指示、ブロックの枚数、ブロックの位置取り、コンビがはまった時のチームを鼓舞する声。レシーブ能力だけでない、点を取るための基本を怠らなかった。

 メンバー紹介では全校応援の駿台学園生徒からも、大きな声援があったことから、学校でも人気者であることが推測できた。明るいキャラクターでチームをとことん盛り上げた個人的にはこの試合のMVPだ。

エースが封じられた時のオプション

 対する鎮西は前述の通り、エース舛本が封じられて、井坂・平田も駿台学園の厳しいマークにあった結果最終的にはなす術なしといった印象であった。

 そんな中大車輪の活躍をした舛本は流石としか言えないが、東山戦効果的だった荒谷を1本目にシャットアウトされ、それ以降使いづらくなってしまったのかもしれない。事実3セット目は荒谷を1回も使うことはなかった。

 セッター平川もこれまでやってきたバレーを信じて、トスを上げ続けただろうが、3セットで決めきれなかったツケが最後回ってきた。ただ、充分に持ち味を出し切った鎮西バレーには胸を打たれた。

過密日程と選手層

 以前春高バレーの過密日程についての記事を書いた。鎮西はやはりその日程に苦しめられた、と言っても過言ではない。対戦カードが優勝候補続きで、抜ける試合が無かったのも勿論影響しているが、休養日1日でもあればコンディションは変わったであろう。

 鎮西も例年と違い、大エース舛本に次ぐ井坂、平田というハイレベルな選手を揃えてはいたが、その2選手にも疲労の色は隠せなかった。公式練習を見ていてもお世辞にもその3人の代わりが務まる選手がいたとは言えない。

 一方で駿台学園は選手交代をしながら、打数も分散させながら誰が出ても質を落とさなかった。セッター吉田、エース佐藤、ミドル秋本を中心とした、選手層の厚さで勝ち上がったとも見えた。それまでこなしたセット数の差はあれど、これまで続けてきた駿台学園のバレーボールの集大成が結果として表れた。

 最後にこの春の高校バレーから日本代表へ、と願いがあるのであれば、やはりこの過密日程は避けるべきである。高校生の未来を、選択肢を狭めることない大会へ進化することを期待する。

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