より詳しくは__twitte__さんnoteにて
解説
堀口英利さんは2020/4/14に潰瘍性大腸炎の診断を受け、治療を開始した。2週間後にペンタサによるアレルギーのため、レクタブル(ブテゾニド注入フォーム)が処方されたと書いてある。ガイドラインを見てみると、レクタブルはS状結腸までの到達であり、これを使うのは、直腸炎型か左側大腸炎型である。また、左側大腸炎型・全大腸炎型の中等症では内服ステロイドが用いられることが推奨されているため、この初回治療のペンタサ→レクタブルという変更は、直腸炎型または左側大腸炎型の軽症の治療であることが推察される。
レクタブルは内服ステロイドと比べ、生体利用率が低い(血液濃度が上がりにくい)ことがメリットであり、DIでもプレドニゾロンと比べて副作用の欄はとても少ない。「頭痛」「不眠」は1%未満だが、堀口英利さんは運悪く両方とも起きてしまったようだ。中でも「頭痛」の副作用はとても重く、5/1に徹夜をした後の5/2は病院を受診しようとおもった程である。
そのような副作用に悩まされたものの、症状が嘘のようによくなったと5/13に記しており、レクタブルが著効したということはやはり病変はS状結腸より肛門側であろうことが推測される。ちなみに同日に述べている「ざ瘡」は1%未満、「多汗」は頻度不明の副作用であり、堀口英利さんは非常に運が悪いのかもしれない。
その後寛解維持療法のためのアサコールは不耐症のため、アザチオプリンで維持療法となっている。
堀口英利さんは、2022年7月25日付の臨床個人調査票を公開しており、その記載では「全大腸炎型」「中等症」となっている。潰瘍性大腸炎は、連続的に口側に広がっていく病気であり、本当に急激に悪化してしまったのであろう。重症度の記載は6ヶ月以内で最も重症なものを記載する事になっており、この症状が重い時期にガイドラインに準じてプレドニゾロン内服を行っていたのかもしれない。公開した際に、生物学的製剤の導入を検討するにあたってと述べているが、なぜか「難治」ではなかったようである。
堀口英利さんは2024年3月4日に、2023年8月時のリンヴォック、ベピオの処方箋、診断書、領収書などを公開している。
ガイドライン上はリンヴォックの寛解導入の期間は8週間以上となっているが、診断書では8月に悪化し、9月中旬までの加療を要すると記載されている。一般的には悪化すれば治療を変える必要があると思うが、もしかすると悪化することを予見してあらかじめリンヴォックを使っていたのかもしれない。
幸い、リンヴォックは効いたようで9/10には潰瘍性大腸炎は乗り切れそうとコメントしているし、同時期に食べたものをみても寛解していると思える。
(医療費負担の事については、twitteさんnoteで。)
※ガイドラインはあくまで一般的な治療であり、実験の治療の内容は現場の判断によります。
2020/3/11 実はここ2ヶ月弱ほど、下痢と血便に悩まされています。
2020/4/2 大腸内視鏡検査
2020/4/14 潰瘍性大腸炎の診断
2020/4/27 「ペンタサ」にアレルギー症状が起きている可能性が高いとのことで、 直腸から投入するフォーム剤「レクタブル」を処方されることに
2020/4/28 レクタブルでも副作用を起こしているのだろうか。。。
2020/5/2 副作用が頻発するので慶應義塾大学病院を受診しようと思い
2020/5/13 今までの重篤な症状(尻からの血や膿、刺されるような腹痛など)が嘘のように落ち着きます。
2020/6/9 「アサコール」を少量ずつ、アレルギー反応の有無を見ながら使い始めることになりました。
2020/6/14 やはり症状が重篤化
2020/6/22 新たにアザニンを服用開始
2020/6/25 「健康」の重要性が身に沁みます。
2020/6/27 あまり潰瘍性大腸炎にはよろしくありませんが、どうしても食べたかったので仕方ありません。
2020/6/29 嘘のように体調が落ち着いています。
2020/10/21 ここ数日ほど潰瘍性大腸炎の症状が悪化
2022/3/7 解熱鎮痛薬の副作用で潰瘍性大腸炎の症状を悪化させてしまい
2022/7/9 先月、潰瘍性大腸炎に家族の理解を得られず苦しんでいた
2022/7/17 実はしばらく潰瘍性大腸炎の症状が悪化
2022/10/23 頻繁に低血糖症状に襲われるようになってしまいました。
2023/9/10 リンヴォックで潰瘍性大腸炎は乗り切れそうだけど
https://megalodon.jp/2023-0910-1832-03/https://twitter.com:443/Hidetoshi_H_/status/1700735985045442734?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Etweet
2024/3/4 リンヴォック6錠は4,671円/日(3割負担の場合。診療点数: 1,557点)。
2022/7/25の臨床個人調査票
全大腸炎型中等症で、難治性に該当しないとの記入
令和5年度 改訂版 (令和6年3月31日)潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針
http://www.ibdjapan.org/pdf/doc15.pdf
1 寛解導入療法
1–1. 直腸炎型
5-ASA(5-アミノサリチル酸)製剤の経口剤(ペンタサ® 顆粒/錠・サラゾピリン® 錠・アサコール® 錠・リアルダ® 錠)または坐剤(ペンタサ®坐剤・サラゾピリン®坐剤)あるいは注腸剤(ペンタサ®注腸)による治療を行う。 これで改善がなければ、製剤(経口剤、坐剤、注腸剤)の変更や追加、あるいは成分の異なる局所製剤への変更または追加を行う。
局所製剤:5-ASA製剤では、坐剤としてはペンタサ® 坐剤 1日1g、あるいは注腸剤としてはペンタサ® 注腸1日1gを使用する。 ステロイドを含む製剤ではリンデロン®坐剤 1日0.5~2mgまたはステロイド注腸[プレ ドネマ®注腸1日20~40mg、ステロネマ®注 腸1日3~6mg、レクタブル®注腸フォーム 1回1プッシュ(ブデソニドとして2mg)1日 2回]を使用する。注腸剤の到達範囲は概ね S状結腸までである。レクタブル®注腸フォームは軽症から中等症例に使用する。
経口剤:ペンタサ® 顆粒/錠1日1.5~4.0g、サラゾピリン® 錠1日3~4g〈注1〉、アサコール®錠1日 2.4~ 3.6g、リアルダ®錠1日2.4~4.8gいずれかを 使用する。寛解導入療法として5-ASA製剤 は高用量の効果が高いことから最大量での投与が望ましい。小児でも高用量の効果が 高いことが知られている。
上記の治療法が奏効した場合にはリンデロン® 坐剤、 ステロイド注腸、ブデソニド注腸フォーム剤は中止または漸減離脱し、寛解維持療法に移行する。
※ステロイドを含む製剤は、局所製剤であっても長期 投与で副作用の可能性があるので、症状が改善すれば漸減、中止が望ましい。
※以上の治療を最大限行なったにもかかわらず、寛解導入に至らない場合には、1-2. 左側大腸炎・全大腸炎の中等症に準じるが、ステロイドの全身投与(特に大量投与)は安易に行うべきではない。また、軽度の症状が残る場合、追加治療のメリットとデメリットを考慮し、経過観察するという選択肢もある。
※小児では短期間に全大腸炎型に進展しやすい。
1–2. 左側大腸炎型・全大腸炎型
A. 軽症
(1)ペンタサ®顆粒/錠1日1.5~4.0g、サラゾピリン®錠1日 3~4g、アサコール®錠1日2.4~3.6g、リアルダ®錠1日 2.4~4.8gのいずれかを経口投与する。ブデソニド 腸溶性徐放錠(コレチメント®)1日9mgの経口投与 <注2>を行なっても良い。ただし、ブデソニド腸溶性徐放錠は原則として投与後8週を目安に離脱する。ペンタサ®注腸を併用すると効果の増強が期待で きる。ペンタサ® 注腸を併用する場合は、経口5-ASA 製剤を最大用量併用することが望ましい。左側大腸の炎症が強い場合はステロイド注腸やブデソニド注腸フォーム剤の併用が有効な場合がある。
2週間以内に明らかな改善があれば引き続きこの治療を続け、可能ならステロイド注腸やブデソニド注腸フォーム剤は中止または漸減離脱する。寛解導入後は後述の寛解維持療法を行う。
(2)服薬遵守がなされているにもかかわらず、改善がなければ以上に加えてB. 中等症の(1)【プレドニゾロン 経口投与】の治療を行う。プレドニゾロンの代わり に、カロテグラストメチル(カログラ®錠)1回960mg、 1日3回の経口投与〈注3〉を行なっても良い。
(3)ペンタサ® 顆粒/錠、サラゾピリン® 錠、アサコール® 錠、 リアルダ® 錠を開始後早期に(多くは2週間以内)発熱、 腹部症状の悪化などが認められたら、5-ASA製剤による症状の悪化(5-ASA不耐)を考慮し上記製剤の 中止を検討する。 ※左側大腸炎型は罹患範囲が脾彎曲を超えないものと 定義されている。
B. 中等症
(1)基本的には軽症に準じてよいが、5-ASA製剤は高用量を使用することが望ましい(ペンタサ®顆粒/錠1日4.0g、サラゾピリン®錠1日3g以上、アサコール®錠1日 3.6g、リアルダ®錠1日4.8g)。ブデソニド腸溶性徐放錠の経口投与〈注2〉を行なっても良いが、原則として投与後8週をめどに離脱する。
(2)炎症や症状が強い場合は、軽症の治療に加えてプレドニゾロン1日30~40mgの経口投与を初期より行ってもよい。また軽症に準じた治療で2週間以内に 明らかな効果がない場合や途中で増悪する場合も プレドニゾロン1日30~40mgの経口投与を併用する。 これで明らかな効果が得られたら、20mgまで漸次 減量し、以後は2週間毎に5mg程度ずつ減量する。 原則として投与後3ヵ月以内をめどにプレドニゾロンから離脱するようにする。その後は軽症に準じて 治療継続を原則とする。
(3)5-ASA製剤による治療で効果不十分な場合には、 プレドニゾロンの代わりに、カロテグラストメチル (カログラ®錠)〈注2〉を投与してもよい。寛解に至った場合は、その時点で投与を終了する。投与 期間は6ヵ月までと制限されている。8週間投与しても治療効果が得られない場合には、原則としてプレドニゾロンの治療を行う。
(4)プレドニゾロンの減量に伴って増悪または再燃が起こり離脱も困難な場合(ステロイド依存例)は、難治例の(2)の【ステロイド依存例】の治療を行う。
C. 重症
(1)入院のうえ全身状態の改善に対する治療を行う。(略)
D. 劇症型(急性劇症型または再燃劇症型)
劇症型は、急速に悪化し生命予後に影響する危険が あるため(略)
E. 難治例
適正なステロイド使用にもかかわらず、効果が不十分 な場合(ステロイド抵抗例)と、ステロイド投与中は 安定しているがステロイドの減量に伴い再燃増悪する ステロイド依存例等よりなる。難治例の治療に当たって は、これまで投与した薬物による副作用、病態や治療に よる患者QOLの状態などによる手術適応を考慮し、 それぞれのメリット・デメリットなどを患者と相談の 上で治療法を選択する。
(1)ステロイド抵抗例
ステロイドによる適正な治療にもかかわらず、1~2週 間以内に明らかな改善が得られない場合である。(略)
(2)ステロイド依存例
プレドニゾロンの減量に伴って増悪または再燃が 起こり離脱も困難な場合である。通常、チオプリン製剤で あるアザチオプリン50~100mg/日または6-MP(保険 適用外)30~50mg/日を併用する。ただし至適投与量は 患者個々によって異なる。これらの効果発現は比較的 緩徐で、1~3ヶ月を要することがある。初めてチオプ リン製剤の投与を考慮する患者に対しては、治療を 開始する前にNUDT15遺伝子型を確認の上でチオプ リン製剤の適応を判断する(治療指針総論を参照)。
これが有効で副作用がない時は、上記のチオプリン 製剤を開始して1~2か月後に経口プレドニゾロンを 徐々に減量、中止する。寛解導入後は副作用に注意し 適宜血液検査などを行いながら寛解維持療法としての 投与を続ける。 上記で効果不十分あるいはチオプリン製剤不耐例で活動期に対しては、血球成分除去療法〈注5〉、シクロス ポリン持続静注療法〈注6(保険適用外)〉、タクロリムス 経口投与〈注7〉、インフリキシマブ〈注8〉、アダリムマブ 〈注9〉、ゴリムマブ〈注10〉、トファシチニブ〈注11,14〉、 フィルゴチニブ〈注12,14〉、ウパダシチニブ〈注13,14〉、 ベドリズマブ〈注15〉、ウステキヌマブ点滴静注(初回のみ2回目以降は皮下注射)〈注16〉、ミリキズマブ点滴静 注(3回目投与まで静注、4回目以降は皮下注射)〈注17〉 も考慮する。またNUDT15遺伝子多型がCys/Cysであ る場合や活動性が強い場合には当初より上記治療法を 考慮する(フローチャート潰瘍性大腸炎難治例の治療 を参照)なおトファシチニブ・ウパダシチニブを選択 した場合はチオプリン製剤を併用しないこと。
(3)なおステロイド以外の厳密な内科的治療下にあり ながら頻回に再燃を繰り返す、あるいは慢性持続型 を呈する難治例については、過去にステロイドを 使用したことがない例では、中等症のプレドニゾ ロンもしくは重症例のステロイド大量静注療法に 準じた治療を行う。過去にステロイド使用歴がある 症例ではステロイド依存例に準じた治療を行う。
(4)これらの治療で効果が不十分、あるいはQOL(生活 の質)の低下した例では手術を考慮する。
(5)小児では成長障害がみられる例においても手術を 考慮する。
2 寛解維持療法
以下の5-ASA製剤の経口剤投与または局所治療の単独または併用を行う。直腸炎型の寛解維持では局所治療の単独あるいは併用も有用である。
経口剤:ペンタサ®顆粒/錠1日1.5~2.25g、サラゾピリン®錠1日2g〈注1〉、アサコー ル®錠1日 2.4g、リアルダ®錠1日2.4gいずれかを投与する。維持療法としてペンタサ®顆粒/錠 またはアサコール®錠を使用する場合には、 アドヒアランスを改善するために1日1回 投与が望ましい。
局所治療:ペンタサ®注腸1日1gまたはサラゾピリン® 坐剤1日0.5~1gやペンタサ®坐剤1日1gを 使用する。 ペンタサ®顆粒/錠とペンタサ®注腸1日1gの 2~3日に1回の間欠投与や週末2日間の併用投与も有用である。
なお、ステロイド抵抗例や依存例などの難治例では 原則としてアザチオプリンまたは6-MP(保険適用外)による寛解維持治療を行う。初めてチオプリン製剤の 投与を考慮する患者に対しては、チオプリン製剤による 治療を開始する前にNUDT15遺伝子型を確認の上でチオプリン製剤の適応を判断する(治療指針総論を参照)。 タクロリムスやシクロスポリン(保険適用外)で寛解導入された例はチオプリン製剤による維持療法を検討する。それ以外の生物学的製剤・JAK阻害薬で寛解導入された場合、同じ治療法による寛解維持療法が選択可能である。なお、インフリキシマブで寛解維持され ている場合の休薬は再燃のリスクを上げる可能性がある ので慎重に行う必要がある。 また血球成分吸着除去療法のうちアダカラム®による 寛解導入療法で寛解又は有効性が確認され、既存の薬物治療が無効、効果不十分又は適用できない難治例 に対して、寛解維持療法として、原則としてアダカラム® を2週間に1回の頻度で48週間の治療が可能である。
※ステロイドには長期の寛解維持効果が乏しいことが 知られており、寛解維持の目的には使用しない。
〈注14〉
ウパダシチニブは、1回45mgを1日1回8週間 経口投与するが、効果不十分な場合は、さらに 8週間つまり最大16週間まで1回45mgを1日1回投与できる。維持療法は1回15mgを1日1回経口 投与するが、患者の状態に応じて1回30mgを 1日1回投与することができる。高度の腎機能 障害患者や、強いCYP3A4阻害剤と併用する 場合には、導入療法は1回30mgを1日1回投与とし、 維持療法は1回30mgを投与してはならない。 他の生物学的製剤、JAK阻害薬、タクロリムス、 シクロスポリン、アザチオプリン、免疫抑制剤 (局所製剤をのぞく)などとの併用はしてはなら ない。
治療フローチャート