80年代屈指のバイクレース:平忠彦さん、WGP500初優勝の瞬間

大学在学中に一度、クラスメイトに誘われて、宮城県にある菅生サーキットでGP500のバイクレースを見に行ったことがある。

世界チャンピオンのエディ・ローソン選手、そしてランディ・マモラ選手、平忠彦選手の三つ巴から、最後はエディ・ローソン選手と平忠彦選手の一騎打ちになった。

私と友人は、コース後半の最後のシケインというヘアピンカーブのところで観戦していた。

競り合う二人は、このシケインのとば口を利用して互いにインから抜いたりアウトから抜いたりを繰り返していた。マシンの性能は互角で、ストレートで雌雄を決するのはほぼ不可能。仕掛ける唯一のタイミングは、このシケインと目されていた。

レース後半、平選手は執拗にシケイン入口のアウトからエディ・ローソン選手をかわして先頭に立つ。しかし次のラップでは同じシケインでエディ・ローソンに抜かれるという競り合いを繰り返した。

そして運命の最終ラップが訪れる。

エディ・ローソン選手1位、平忠彦選手2位の順位のまま、シケインに飛び込んで来た二人。首位のローソン選手が、平選手のアウトからのアタックを防ぐためにわずかに外に膨らんだその瞬間、インに生じた間隙に平選手がすーと忍び込んで先頭に踊りだすと、「馬の背」と呼ばれる斜度10度の直線めがけて一気に加速した!

不意を突かれたエディ・ローソン選手は慌てて猛追する。二人はそのまま馬の背の頂上をめがけて小さくなり、そして見えなくなった・・・。

数秒後、ゴールの方から爆音のような歓声が轟いてシケインで観戦していた私と友人は、平忠彦選手の勝利を確信した!

その時のレースがコレ↓
https://www.youtube.com/watch?v=2CA2-kYdcXo

平忠彦選手、World Grand Prix 初優勝の瞬間。その場に立ち会うことのできた僥倖に感謝したい。