堤さんと増田さんの共通点と差異

『ユリイカ 2014年2月号 特集:堤清二/辻井喬 ー西武百貨店からセゾングループへ ・・・詩人経営者の戦後史』を一部再読。

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前年の2013年11月に堤さんが逝去(享年86歳)した関係で特集された号。

経営者としての堤清二と文学だけでなく社会批評も含めた物書きとしての辻井喬。単純に線引きできないだけに、追悼本としてビジネス系の話が多い。そんな中でも、出色なのは三浦展さんのインタビュー。

■堤さん(西武百貨店)と増田さん(パルコ)の共通点と差異について、とてもわかりやすく、対比的の述べている。なるほど。

・共通点:ふたりとも「反権力」。60年代前後のカウンターカルチャー好き。


堤さんは昭和2年、増田さんは昭和元年生まれの東京の山の手階級の出身者として戦争が激化する前に少年時代を送っていて、大正教養主義やモダニズムに彼らの精神の原点があるとすれば、既存の古いものを破壊し、否定していくのは当然ですよね。60年代的なものも下手をすると若いひとは高度経済成長的なものと誤解するかもしれませんが、そうではない、全共闘的なものだけでもない、アヴァンギャルド芸術、唐十郎、寺山修司らの演劇に象徴されるような、反近代、反文明、反経済という皮膚感覚が、堤、増田両氏に共通してあった。おそらくそこがふたりが仲よくできた理由なんだろうと思います。(P138〜139)

・差異:堤さんは一流好き。対して増田さんは無名な若手好き。
   :堤さんの理想のまちづくりは、豊かな生態系や自然含む(例:つかしん)
    増田さんの理想は、ガチャガチャした都市的、芝居小屋的な賑わい、雑踏

堤さんと増田さんの違いを言うと堤さんはやっぱり一流が好きでしたね。堤さんは磯崎新や大岡信、武満徹のように一流だけれど、反体制的な文化人と付き合えることを楽しんでいたと思います。増田さんが好きなのは蜷川幸雄に藤原新也だから、当時は一流とは言えない。増田さんは、高校の先生だったこともあるんだけれど、若いやつがワイワイやって石を投げたりデモしたりというのが大好きで、インキュベーション型なんです。(P140)

増田さんがいちばん好きだったのは芝居なんです。言ってみれば芝居をやる金欲しさに商売をしていた面がある。出版やグラフィックも好きなんだけど、なんといっても芝居が好きで、増田通二のパルコの街づくりというのはパルコという舞台づくりなんです。(P141)
(前略)消費と都市(論)が結びついたのは増田さんとしては、消費だけじゃつまらない、消費の”舞台”をつくりたいんだというところから都市に広がっていったんじゃないかな。増田さんは「都市というのはホテルと劇場とバザールである。芝居があって商売があって、そこで飲んで歌って寝泊まりする、それが都市の楽しさを代表する」というようなことをよく言っていました。(P141)

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