パリの日本人(朝吹さん)1950ー1989
『私の巴里物語 1950ー1989』(朝吹登水子、文化出版局、1989年)読了
この本の内容は、タイトル通り、1950年から89年(執筆当時)までのパリを軸として生活記録のエッセイ集である。ただ著者は第二次世界大戦前の1935年から1939年にもパリに滞在しており、11年後の再びのパリである。
自分にとっては、この著者である朝吹さんの本を読むのは三冊目になる。(過去二冊は『豊かに生きる』と『私の東京物語』)
あくまで著者の朝吹さんの視点軸でまわっている時空感を回想しているので、いわゆる女性誌などにあるパリ特集、パリ紹介とは全く違う。まだパリ在住の日本人が少なかったため、訪れてきた日本人の案内役をつとめたり、仕事の都合で知り合った著名人も登場するが、特別扱いしているわけでなく、それと同様に接し観察する機会のあった市井のさまざまな階層の人々のことが描かれている。日本もそうだが、グローバル化で地域性が無くなることはないとはいえ、薄くなってきている昨今とは違う、当時まだ濃厚にあったであろうフランス、パリらしいき空気感、人間像を描いていると思う。いい本。
KENZOの高田賢三さんの自伝には出てくる西武百貨店のパリ駐在部長の堤邦子さんの名前はいっさいでてこない。どこかで接点はあったのでは?と思うが、まったくなかったのかもしれない。もしくは、接点あっても相性が合わなかったとか。
■目次
プロローグ
1950年、ルネ・アルコス家
ド・ラ・トゥール・ドーヴェルニュ街34番地TER 1952年
ローラン・ピシャ街8番地 1954年
シュレーヌ街35番地 1957年
フランスと日本のはざまで
フィリップ・ル・ブーシェ通り5番地ヌィイ 1961年
モード、1950年から
1954年のサガンから
ヴェルサイユの家 1974年
火傷
忘れえぬ人たち
エピローグ
あとがき