「ミー」から「ウィー」へ、とは?

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『We(ウィ)の市民革命』(佐久間裕美子、朝日出版社、2020年10月)読了。

この本は同著者による『ヒップな生活革命』の続編的な意味ももっている。2014年から早6年が経過。

この本の中で、自分が一番興味があったのは02のインディペンデントのその後についてである。前著ではリーマン・ショック後のポートランドやブルックリン発に代表される、ちょっと緩い(?)もといガツガツした商売っ気でない、モノづくりと直結したような新しい個人商店や生活者の「より小さく」「より丁寧に」「より足元から」というブームメントが紹介されていた。

本書の02によれば、
「イースタン・ディストリクト」(チーズとビールの店)→売却、移住して去る
「パイオニア・ワークス」(創作スペース)→非営利化
「ナショナル・ソーダスト」(ライブハウス)も非営利で運営
「サー・ケンジントン」(ケチャップ)→ユニリーバに買収
「ブルーボトル・コーヒー」→ネスレに買収
など非営利化して生き残りを模索したり、大手の傘下に入ったりと、当時の小川的な現象が大きな河になる流れはできなかった。また「何のために?」と口にして、ひたすら経済が拡大しミドルクラス以下には住みづらくなるNYにとどまることに悩み、街を去っていった友人が何人もいたことを、著者は述べている。

とはいえ、個人商店系の定点観測的な続編は02くらいで、本書の全体を読めば、著者の興味、関心はその枠を越えて、社会全般におよんでいることがわかる。

「Me(ミー)」から「We(ウィ)」へ、とは、個々人の生き方(消費行動を通じて、支持を鮮明にする等)も大切であるが、無意識の連帯を通じた大きな流れを形成したり、あるいはもっと直接に団結しておかしいと思う動きに対して、皆でプロテクトしてこう、していくことが大きな流れになるだろうと示唆していると、わたしは理解した。パイを広げる経済の話より、再分配がテーマになる”政治の季節”が近づいていることをひしひしと感じさせてくれた本である。

目次
はじめに
01:消費はアクティビズムになった
02:インディペンデントは生き残れるのか
03:コロナが前進させた社会のシフト
04:自分ごとのサステイナビリティ
おわりに

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