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私の視野を広げてくれた本 5選

本は色々な場所へ連れていってくれる。
様々な視点や、考え方、そして知識を与えてくれる。
与えてはくれるが、同時にそれは私が掴み取りに行ったものとも言える。

読書とは能動的なものである。
こちらから求めなければ、当然何もくれない。
そしてその主張やメッセージを読み解くのには時間も手間もかかる。
情報を得るという観点においては、はっきり言って効率が悪い。
だが、この効率の悪さこそが読書の良いところだと思う。

インターネットは偉大だ。
今では動画サービスを始め様々なコンテンツで、情報を噛み砕いて与えてくれる。
もちろん何を選ぶか、求めるかはこちら側の能動的なものであるが、基本的には受け身でいい。
そういうサービスを与えているわけだし、そこに需要があるのだから何も問題はない。

読書においても今ではあらすじや要点を分かりやすく、そして手短に説明してくれるサイトが溢れているが、私はそれも素晴らしいサービスだと思っている。

だが、私はこと読書においては余白を楽しみたい人間だ。
解釈や要点も人とズレているかもしれない。行間だ余白だなどと、それっぽいことを言っているが読解力には自信がない(そもそも国語の点数は悪かった)

それでも、私は私の感想を知りたくて本を読んでいる。

そして本には、私が知りたいと思う、求めている箇所がフォーカスされる効果がある。
人生に悩んでいる時は『ハムレット』の台詞ひとつひとつが胸に響いたし、失恋した時は『若きウェルテルの悩み』の主人公に自分を重ねたりした。

そんな私が「私の視野を広げてくれた本」というテーマでこれから何冊か紹介させてもらうが、本音は「今まで私が読んだ本全て」である。
しかしタイトルはキャッチーにしなくてはいけない。極力興味を引くようにしなくてはいけない。

これはインターネットから学んだことだ。



『歴史思考』 深井龍之介



人気のPodcast「コテンラジオ」でお馴染みの深井龍之介氏による本著。
コテンラジオでも取り上げた偉人の紹介をしていますが、そこから現代人は何を学ぶか、価値観は時代によって変わるものだから特定の価値観に依存しなくていい、ということを説いています。

アン・サリヴァン、マハトマ・ガンディーの章が特にお気に入りですが、コテンラジオで好きだった高杉晋作が掲載されなかったのが個人的には少し残念でした。

「メタ認知」という言葉と共に、歴史には因果関係があるとしながらも、短いスパンで物事を考えなくていい、ある人の存在が将来どういう意味を持つかは誰にも分からないと投げかけます。

現代人に多い悩みを、歴史を知ることで楽にしようという本書のコンセプト通り、読んだ私も生きることが少し楽になった本です。


『多様性の科学』 マシュー・サイド



「なぜCIAは同時多発テロを予測できなかったのか」という1章を皮切りに、多様性についての考察本。

「多様性は大切」などと、今では目を瞑ってでも誰もが言える言説を、「なぜならこういう事例があるからね」と話を進めるのが本書の特徴。

3章の登山家と機長の例によるヒエラルキーの考察、5章のエコーチェンバー現象、6章のパイロットを例にした平均値の落とし穴、この辺りが興味深かった。

組織論として語られがちな多様性だが、実生活に落とし込む視点を得られた意味で、私の視野が広がった一冊と言える。


『センス・オブ・ワンダー』 レイチェル・カーソン



話題のSF小説『三体』にも登場する『沈黙の春』
その作者であるレイチェル・カーソンの遺作。
回りくどい紹介になってしまったが、美しく、優しい一冊だ。

「神秘さや不思議さに目をみはる感性」を子どもたちに授けて欲しい。
未完の60ページという短さの中にも、自然への畏敬の念と共に、その美しさを愛する彼女からのメッセージでこの本は溢れている。

「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。
と、綴る一節は、頭でっかちで生きる私がふと忘れてしまう金言です。

時々、思い出したように手に取ってしまう、そんな本です。


『独学の地図』 荒木博行



学びとは何か。
それは表面的な感想ではなく、経験の前後を削り出す差分だと説く。
「それっぽい一般論は、本来の学びに蓋をする」と冒頭からぶった切る作者にいきなり脱帽です。

教育のパラドクスに「教える側がわかりやすく教えれば教えるほど、受け手は考えなくなる」という矛盾があります。
ゆえに能動的に自分から「問い」を立てろという熱いメッセージに溢れています。

「こう進むべき」という体系的なメッセージには、受け取る側は「こなす」という意識が出てくる。
学びは作業ではない、あなたはどんな独学の地図を作りますか?と締める本書に私の地図作りは始まった気がします。


『夜と霧』 ヴィクトル・E・フランクル



ナチスドイツ、アウシュビッツの強制収容所に囚われ、そこから生還した著者が人間の尊厳を余すことなく描いた歴史的名著。

ホロコーストの記録という意味でも必読である。
読むだけでも寒気がするような悲惨で残酷な事実をつづりながら、その中にも残る人間の精神の高さ、善意、不思議な明るさがある。

人は強制収容所で人間をぶちこんですべてを奪うことができるが、たったひとつ、あたえられた環境でいかにふるまうかという、人間としての最後の自由だけは奪えない、実際にそのような例はあったということを証明するには充分だ。

「夜と霧」p.97


人は、どのような環境に置かれても自分の態度を決めることができる。
どんな状況でも希望はもてる。

私はこの本以上に説得力のあるメッセージを他に知らない。


おわりに


いかがでしたか。
冒頭でも書きましたが、視野を広げてくれたという観点でいえば「私が出会った本すべて」になるのですが頑張って選んでみました。

そして世の中にはまだまだ私の知らない本が山のように眠っています。
それを紐解くには時間も手間もかかります。
そして、私の時間にも限りがあります。

次はどんな本を手に取るのか、その時の私は何を求めているのか。
自分のことでありながら、そんな自分が楽しみでもあるのです。

ではでは。






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